相続税の申告と納付|FP1級Wiki

相続税の申告が必要かどうかという問題が基礎編で多く出ます。

相続税の申告

申告期限:相続を知った日から10カ月以内
納付期限も同様です。

相続中に相続人が亡くなってしまった場合(数字相続という)は、相続人の死亡を知った日から10か月以内に延長される。

相続税の申告が必要なケース

相続税の課税価額が基礎控除を超え、かつ配偶者の税額軽減の規定を適用しないで計算して納付する税額があるときは申告義務がある。

申告することで課税されないケース

以下のケースではたとえ税額がゼロでも申告は必要なのである。←良く問題に出る

  • 小規模宅地の評価減の特例を適用して基礎控除以下となる場合
  • 配偶者に対する相続税額の軽減の適用で納付義務がなくなる場合

相続税の申告が不要なケース

  • 生命保険金の非課税枠を利用して基礎控除以下となる場合
  • 退職手当金等の非課税枠を利用して基礎控除以下となる場合
  • 相続時精算課税制度を適用して贈与を受けた財産を加算した結果、基礎控除以下となる場合

遺産分割協議が成立してない場合の申告および納付

期限までに未分割の場合は、原則として法定相続分に従って取得したものとして計算した相続税を申告期限までに納付する。

申告期限までに「申告期限後3年以内の分割見込書」を納税地の税務署長に提出することで、分割後に修正申告や更生の請求をして小規模宅地の特例や配偶者に対する相続税額の軽減の適用を受けることができる。
民法に規定する法定相続分に従って取得したものとして計算した相続税を納付後、遺産分割協議が成立した場合、相続人ごとに修正申告または更生の請求をしなければならない。そしてその差額の還付を受けるなら成立日の翌日から4カ月以内に更正の請求をする。逆に増加してしまった場合は修正申告をして差額を支払うが、原則、延滞税や過少申告加算税は課されない。

修正申告

申告後、申告漏れや誤りがあって少なく納税した場合、更正の通知があるまでは、修正申告書を提出することができる。

更正

申告後、計算の誤りなどで、多く納税した場合、法定申告期限より5年以内に限り、更正の請求ができる。
遺留分侵害額請求が発生した場合は、支払金額が確定したことを知った日の翌日から4ヵ月以内であれば5年経過後でも請求可能

延納

相続税は期限内に現金で全額が原則。期限までに全額納付できない場合は、原則最長5年、以下の要件を満たせば不動産等の価額が占める割合に応じ、不動産割合75%以上で最長20年とした延納が可能になる。利子税はかかる。

  • 相続税が10万円を超える
  • 期限までに金銭で納付するのが困難
  • 延納額が金銭で納付困難である金額の範囲内であること
  • 担保を提供すること(ただし、延納税額100万円以下で延納期間3年以下なら不要)

担保の種類と担保の見積価額

延納の担保は一定の財産に限られる。担保財産は相続した財産に限らず、ほかの相続人や第三者の財産でも構わない。
担保の見積価額は国債や保証人に保証を受けるケースを除き、時価を基準とする。

物納

納税というのは現金が原則であるため、物納は延納しても現金納付がムリそうな時に適用されるもの。現金一括納付が第一候補、延納が第二候補、物納が第三候補といったところでしょうか。相続税についてのみ物納が存在します。

  • 延納をしても金銭で納付することが困難な場合に、その困難な金額分までを限度とする。
  • 管理処分不適格財産に該当しないこと、物納劣後財産だったなら、他に物納に充てる財産がないこと。
  • 相続税の納期限又は物納申請期限までに、物納申請書に物納手続関係書類を添付して税務署長に提出すること。
  • 物納申請財産は、納付すべき相続税額の課税価格計算の基礎となった相続財産のうち、次に掲げる財産及び順位で、日本にある財産。
順位物納財産の種類
第1順位国債、地方債、不動産、船舶、上場されている株式・社債・
 証券投資信託などの受益証券・投資証券など
・不動産および上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの
第2順位上場されていない株式・社債・証券投資信託の
 受益証券または貸付信託の受益証券
・非上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの
第3順位・動産
相続時精算課税制度による贈与財産は物納することができません

管理処分不適格財産(物納にできない財産)とは

一覧を載せますが、簡単に言うと、担保設定されているもの、権利がはっきりしていないもの、お金にならないもの、他の人の権利も絡んで処分できないもの、正規手続きが取られていないもの、譲渡制限があるものなどが不適格財産となります。

管理処分不適格財産(不動産)

  • 担保権の設定されている不動産
  • 権利の帰属について係争中の不動産(誰のかはっきりしない)
  • 境界が明らかでない土地
  • 隣接する不動産の所有者、その他の者との争訟をしなければ通常の使用ができないと見込まれる不動産
  • まわりを他の土地に囲まれて公道に通じない土地で、さらに通行権の内容が明確でないもの
  • 借地権の土地で、その借地権者が不明であることや、その他これに関係する事情があるもの
  • 他の不動産(他の不動産の上に存する権利も含む)と、常識的に見て一体として利用されている不動産、もしくはそうあるべき不動産、または2以上の者の共有名義の不動産
  • 耐用年数(所得税法の規定で定められている年数)を経過している建物(通常の使用ができるものならオーケー)
  • 敷金の返還に関する債務、その他の債務を国が負担することとなる不動産(申請者が清算できるというならオーケー)
  • その管理や処分を行うためにかかる費用がその収納価額と比べて過大となる不動産
  • 公の秩序や善良の風俗を害する恐れのある目的に使用されている不動産、その他社会通念上適切でない目的に使用されている不動産
  • 引渡しに際して通常必要とされる行為がなされていない不動産
  • 暴力団がその権利を有しているもの

管理処分不適格財産(株式)

  • 譲渡に関して金融商品取引法その他の法令の規定により一定の手続が定められている株式で、その手続がとられていない株式
  • 譲渡制限株式
  • 質に入っているもしくは担保されている株式
  • 権利の帰属について争っている株式
  • 共有で所有する株式(共有者全員が物納の許可を申請する場合を除く)
  • 暴力団がらみの株式

物納劣後財産とは

国に納めても国が処分しづらい財産のこと。他にどうしても財産が無いときに限って認められます。

  • 地上権、永小作権もしくは耕作を目的とする賃借権、地役権又は入会(いりあい)権が設定されている土地(要は他人の権利が邪魔をするような土地)
  • 法令違反をして建築された建物とその敷地
  • 土地区画整理事業等の施行に係る土地につき仮換地または一時利用地の指定がされていない土地(その指定後において使用または収益をすることができない土地を含む)
  • 現に納税義務者の居住の用又は事業の用に供されている建物及びその敷地(納税義務者がその建物及び敷地について物納の許可を申請する場合を除く)
  • 配偶者居住権の目的となっている建物及びその敷地
  • 劇場、工場、浴場その他の維持又は管理に特殊技能を要する建物及びこれらの敷地
  • 接道義務を満たしていない土地
  • 都市計画法の開発許可が下りない土地
  • 都市計画法に規定する市街化区域以外の区域にある土地(宅地として造成することができるものを除く)
  • 農業振興地域整備計画において農用地区域として定められた区域内の土地
  • 森林法の規定で保安林に指定された区域内にある土地
  • 法令の規定で建築をすることができない土地(建物の建築をすることができる面積が極端に狭くなる土地も含む)
  • 過去に生じた事件事故等により、正常な取引が行われないおそれがある不動産およびこれに隣接する不動産
  • 休眠会社(一時的な休業などは含まない)の株式

物納の収納価額

物納財産を国が収納するときの価額は、原則は相続税計算の基礎となった価格(相続税評価額)になるが、小規模宅地の評価減の適用を受けた財産なら特例適用後の価額になる。収めた相続税額を物納財産が超えた場合(超過物納)は差額が金銭で還付される。差額は譲渡所得として課税される。

納付方法の変更(特定物納制度)

通常、相続税の納付は①期限内現金納付②延納③物納の順に優先される。

ただし、延納中の者が資力の変化で延納が困難となった場合は申告期限の翌日から10年以内であれば物納へ変更することができる。
この際に物納に切り替えができる税額は延納税額総額から、すでに納付期限が到来した分納額を控除した残りの金額のみとなる。

なお、この時の物納財産の収納価額はその物納に係る物納申請時の相続税評価額となる。

そのため、小規模宅地の特例を受けて相続している財産は計算しようがないため対象外になります。

外部リンク:国税庁

相続税の申告のオリジナル問題にチャレンジしてみましょう

Q.さて、次の場合で相続税を申告する必要があるケースはいくつあるでしょうか?

記載した内容以外の事は考慮せず気楽に回答してください。

  1. 相続人が配偶者と子ども2人の場合で、相続財産は4,000万円だった。それとは別に相続人が契約者で被相続人が被保険者の生命保険金の死亡保険金が1,000万円あった。
  2. 相続人が配偶者のみで相続財産は9,000万円だった。配偶者が財産をすべて取得した。配偶者に対する相続税の軽減の適用を受けることにより納付するべき相続税が算出されることはなかった。
  3. 相続人が配偶者と子ども1人の場合で、相続財産は3,000万円だったが、6年前に相続時精算課税制度を利用して受け取った財産が1,000万円ある場合。
  4. 相続人が配偶者と子ども2人の場合で、相続財産が5,000万円だったが、「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」の適用を受けて、相続財産の課税価格が4,200万円になる場合。

いくつあるか考えてみましょう。
相続税の課税価額が計算上ゼロになっても制度により申告が必要なものがありましたね。
そこも注意して考えてみましょう。

答えは

3つです。

相続税の計算では、大前提として「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」までは基礎控除として非課税となります。この部分についてはそもそも申告不要です。それを踏まえて各問を見てみましょう。

1.生命保険金の非課税制度に対する質問です。生命保険の非課税は「500万円×法定相続人の数」となります。よって申告すべき税額はなくなります。生命保険の非課税は申告不要です。

2.配偶者の相続税額の軽減に対する問題です。9,000万円の相続財産なので、基礎控除額から大幅にオーバーしていますが、配偶者の相続税額の軽減を利用することで最大1億6,000万円まで相続税が掛からなくなります。相続税はゼロになりますが、この制度は申告が必要です。

3.相続時精算課税制度の問題です。相続時精算課税制度は簡単に言うと相続発生時まで納税を先延ばしにする制度でしたね。今回の相続で受ける財産だけでは基礎控除内ですが、相続時精算課税制度の贈与を加算すると基礎控除をオーバーします。申告税額が発生するので申告が必要です。

4.小規模宅地の軽減の特例の問題です。相続の課税価格は基礎控除額を超えていますが、小規模宅地の軽減の特例を適用することで基礎控除内に収まるケースです。小規模宅地の軽減の特例を受けるためには申告が必要です。

Wiki技能士

オリジナル問題はいかがでしたでしょうか?
お粗末でしたが参考になればうれしいです。

相続税の申告と納付