相続事業承継対策|FP1級Wiki

中小企業の事業承継がFP1級試験で出てきます。基礎編、応用編ともに相続税贈与税の納税猶予が頻出問題です。また、金庫株や譲渡の税務、評価引き下げ対策を加えた総合的な内容が実技試験で役立ちます。かなりのボリュームですがしっかり覚えましょう。
相続事業承継対策は、自社株の評価を下げることでのコスト削減、納税のための資金の確保。スムーズな引き継ぎ。このあたりが重視されます。

自社株対策

事業承継時における自社株対策は、株数対策と株価対策がある。さらに事業承継対策特有の納税対策がある。自社株の相続税評価額の総額は、1株あたりの評価額と所有株式数の掛け算で算定する。つまり相続税評価額を引き下げるには、1株あたりの評価額を引き下げるか、所有株式数を減らすかということになる。株価対策は、自社株の評価を引き下げることで後継者への引き継ぎコストを抑え、引継ぎを円滑に行うためである。株数対策は経営権を維持しながらオーナー経営者の所有する自社株式を移転させる対策です。

株式の評価方法

相続・贈与時の株式の評価

相続・贈与時の株式の評価額の計算は、類似業種比準方式、純資産価額方式、その併用方式、もしくは配当還元方式で行う。

譲渡時の株式の評価

①個人間の売買の場合

個人同士の売買での適正な譲渡価額は時価になる。この場合の時価は相続税評価額による。
買い取る者が同族株主であれば原則的評価方式、それ以外の株主や特定の株主であれば特例的評価方式となる。
評価方式についてはこちらのリンク

②売主が個人で買主が法人の場合

法人が個人から買い取る場合も適正な価額は時価となる。
ただし、この場合の時価は相続税評価額を準用しながら、次の3つの条件を加味して評価する。

  • 売主が中心的な同族株主に該当する場合は、会社規模は常に小会社(0.5)として評価する。
  • 株式の発行会社が土地等又は上場有価証券は、譲渡時の時価で評価する(路線価の相続税評価額は使えない)
  • 純資産価額方式による評価計算においては、評価差額に対する法人税額等相当額(いわゆる37%控除)は控除しない

株価対策

会社規模の調整

原則的評価方式を行う場合、会社の規模によって併用方式による類似業種比準方式と純資産価額方式の割合を決めるLが異なってくる。会社規模を大きくすることで評価が高くなりやすい純資産価額方式の割合を下げられるので、会社規模を調整して評価引き下げを狙う。

会社規模の拡大

ルール上は従業員数の増加、売上高の増加、総資産価額の増加などがあるが、ただし規模が大きくなることで類似業種比準価額の斟酌率も増大するため注意しながら対策する必要がある。合併や借入金による資産購入なども効果的な場合がある。

会社規模の縮小

先に示したとおり、会社規模の拡大は必ずしも株価が下がるわけではない。たとえば大会社で土地保有割合が80%では土地保有会社として純資産価額評価になってしまう。この場合、中会社に抑えることができれば土地保有会社から外れるので併用方式で評価できる余地が生まれる。会社の状況によっては拡大と縮小を良く勘案する必要があるといえる。

類似業種比準方式の引下げ

類似業種比準価額の算定要素に着目して評価引き下げを狙う。類似業種比準方式は直前期のデータを基に計算するため、対策効果は翌期以降に現れるので注意。

①類似業種株価の引下げ
  • 株価の低い類似業種を狙って業務転換する。
  • 株式相場が下落している時期を狙って行動に移す(株式を移転する)。
②1株当たりの配当金額の引下げ
  • 直前期と直前々期の平均が元なので、2期続けて配当を抑制する。ただし配当をゼロにしてしまって特定の評価会社にならないように注意。
  • 継続的でない配当は評価に含まれないので、記念配当や特別配当を利用する手もある。ただしあくまでも非経常的であること。
③1株当たりの利益金額の引下げ
  • 損金計上を多くできれば当然利益を減少できる。実際の支出を伴わない方法として引当金や減価償却費の計上がある。
  • 高収益部門を分離して会社分割するのも方法のひとつ。建物を別会社に賃貸する形にすれば貸家評価に出来る。土地も貸家建付地として評価できる。分離した別会社のオーナーは後継者にすればよい。
④1株当たりの純資産額の引下げ
  • 1株当たりの利益金額の引下げで純資産価額を下げる。
  • 社外流出として役員に賞与や配当を配る。損金にはならないが純粋に会社の資産は減るため純資産価額は下がる。ただし、配当に頼ると、配当比準の要素は引きあがってしまう。

純資産価額の引下げ

純資産価額方式による株価は、含み益の37%を差し引いて算出されるので純資産価額を抑えれば株価が引き下げられる。

①時価と相続税評価額に差がある資産の取得
  • 一般の相続対策と同様に、時価と評価に差がある資産(不動産、ゴルフ会員権、一般動産(耐用年数が短い物))を購入すれば相続税評価額を抑えられる。土地の有効活用という方法もあるが不動産取得後3年間は取引価額により評価するため大きな効果が表れるのは取得後3年経過後となってくる。
②損失の計上
  • 役員への生前退職金の支給。これは支給時期を任意に決定できるので便利。また、役員が完全に会社から引退しなくても、条件を満たせば退職金として損金に算入できる。
  • 高額な減価償却資産の取得や多額の消耗品の購入
  • 役員に対する賞与や配当の支払い。ただし配当の支払いは類似業種比準方式の株価を引き上げることになってしまう。

株数対策

生前贈与

税負担のみを考えると得策ではないのだが、自社株は経営権につながってくるため、スムーズな事業承継という意味では存命中に進められるという点で利点がある。相続時精算課税制度を利用する方法もある。

株式譲渡

こちらは「あげる」のではなくて「売る」ということになるため、後継者は買取資金の準備が必要となる。また、譲渡株式は普通株式ではなく種類株式に転換してから譲渡する方法もある。たとえば後継者に譲渡するなら拒否権付株式(黄金株)とし、従業員持株会や取引先の場合は議決権制限株式が考えられる。株式転換は定款変更が必要で、特別決議が必要。
※拒否権付株式:1株でも持っていれば議案を拒否できる強い種類株式
※議決権制限株式:議決の一部や全部に議決権を行使できない弱い種類株式

従業員持株会の活用

従業員持株会にオーナー経営者の保有株式を譲渡する。配当還元価額で評価する。
会員資格を従業員に限定できるため、社外流出を持株会規約によって防止できる。

中小企業投資育成株式会社の活用

中小企業投資育成会社は、中小企業を資本面から支援する政策実施期間である。
同社の出資を受け入れる結果、持株比率の低い後継者も経営しやすくなる。

納税資金対策

相続税納付は現金が原則であるため、非上場企業の自社株は現金化が難しく、納税資金の確保が大きな問題となる。
課税関係についても理解しておきましょう。

役員退職金の活用

死亡退職金や弔慰金を納税資金にする方法。あらかじめ規程を整備しておいて、日頃から退職金の支払い財源を準備しておくと良い。

死亡退職金の適正額=最終報酬月額×在任年数×功績倍率

適正額は株主総会で承認を得なければ損金にならない。
死亡退職金は法定相続人1人あたり500万円が相続税の非課税財産となる。

役員保険の活用

会社が保険契約者&保険金受取人で役員を被保険者にする保険。死亡退職金の原資となる。

自社株の現金化

①自社で買い取る(自己株式の取得)

会社法に規定する要件を満たすことで、株を所有する役員などから自社が買い取ることができる(金庫株という)。

(1)売却した個人に対する原則的な課税関係(超過累進税率による総合課税)

配当所得(みなし配当)=譲渡価額-譲渡した株式の資本金の額 ※想定より高く売るとその分が配当とみなされるというわけです。

(2)個人が譲渡した場合の原則的な課税関係(所得税15.315%、住民税5%の申告分離課税)

株式の譲渡損益=譲渡した株式の資本金等の額-取得価額

<相続により取得した非上場株式を発行会社に譲渡した場合の課税の特例>

相続で非上場株式を取得して、相続の日の翌日から申告期限の翌日以後3年を経過するまでにその株を会社に譲渡した場合、資本金の額を超えてもみなし配当にはならず、すべて譲渡所得として課税される。

株式の譲渡損益=譲渡価額-取得価額

②ほかの購入者を探す

経営権を維持しながら探す場合、適している相手先は関係会社や取引先に限られる。
経営権にこだわらないならM&A(企業提携、企業買収などを指す)という方法になる。企業買収というと以前は大企業のイメージが強かったが、後継者不足や従業員の生活を守るために最近では中小企業の事案も増えている。

③株式公開

株式公開をして広く購入者を求める方法。当然メリット&デメリットを深く検討する必要がある。

各種納税猶予の特例の活用

納税資金対策として、非上場会社にとって納税猶予制度は非常に有効である。近年適用要件も大幅に拡大されている。出題率も高いのでこちらのリンクで再度復習しておいてください。

外部リンク:国税庁

この項目に過去問チャレンジはありません。

Wiki技能士

相続事業承継対策はきんざい実技試験のpart1でもテーマになる事が多いです。
しっかりおさえておきましょう。