私的年金②|FP1級Wiki
さまざまな私的年金等①からの続き。確定拠出年金、確定給付企業年金について紹介していく。
確定拠出年金(DC)
確定拠出年金(DC)とは、掛金を拠出し、掛金と運用収益の合計額をもとに将来の年金給付額が確定する年金制度で、掛金を会社側(事業主)で拠出してくれる企業型年金と、加入者自身で拠出する個人型年金(iDeCo)がある。個人型年金は国民年金基金連合会が実施している。
いずれにおいても個々の加入者がそれぞれ自己責任で運用するというのが確定拠出年金の一番の特徴である。
ちなみにテキストによく出てくる「DC」というのは、英語表記「Defined Contribution(確定拠出)」の略で「確定拠出年金」のこと。さらにiDeCoは 「individual-type Defined Contribution pension plan(個人型確定拠出年金制度)」の略。
そのため、企業型年金は企業型DCと表記することがあり、個人型年金は個人型DCやiDeCoと表記することがある。
確定給付企業年金はDB(Defined Benefit Plan(確定給付制度)の略)という。
試験的には大変やりにくい。英語で混乱しますよね(。-`ω-)
拠出額
企業型年金の拠出限度額
年間拠出限度額(月額) | |
---|---|
①ほかの確定給付型※の年金を実施していない場合 | 66万円(55,000円) |
②確定給付型※の年金を実施している場合 | 33万円(27,500円) |
※2024.12.1から他の制度の掛金を引いた額が拠出限度額となる。
※事業主の拠出に自身で上乗せするマッチング拠出がある。マッチング拠出は事業主拠出額を超えない範囲、かつ、合計額は拠出限度額内であること。
個人型年金の拠出限度額
国民年金の第1号被保険者 | 年間拠出限度額(月額) |
---|---|
自営業者等 | 81万6,000円(68,000円)※ |
国民年金の第2号被保険者 (厚生年金保険の被保険者) | 年間拠出限度額(月額) |
---|---|
企業型確定拠出年金がなく、企業年金もない場合 | 27万6,000円(23,000円) |
企業型確定拠出年金加入者※¹で他の企業年金がない場合 | 24万円(20,000円) |
・企業型確定拠出年金加入者※²で他の企業年金がある場合 ・企業型確定拠出年金以外の企業年金の加入者の場合 ・公務員等 | 14万4,000円(12,000円) R6.12.1から24万円(20,000円) |
※マッチング拠出(企業の掛金に加入者が上乗せする)を実施していないこと(ただし※¹は月額5.5万円、※²は月額2.75万円からそれぞれ企業型を引いた残りが拠出上限という制限がある。)
国民年金の第3号被保険者 | |
---|---|
専業主婦(主夫)などの被扶養配偶者 | 27万6,000円(23,000円) |
給付について
企業型年金、個人型年金ともに給付にはいくつかの種類がある。 また、原則60歳までは引き出しできない事にも注意が必要である。
老齢給付金
5年以上の有期または終身年金(規約により一時金の選択可能) 原則60歳に到達した場合に受給することができる (60歳時点で確定拠出年金への加入期間が10年未満なら、支給開始年齢が段階的に先延ばしになる)
10年以上 →60歳
8年以上10年未満→61歳
6年以上8年未満 →62歳
4年以上6年未満 →63歳
2年以上4年未満 →64歳
1月以上2年未満 →65歳
年金受取期間は5年以上20年以下、年金給付額は資産額の20分の1以上2分の1以下で受給者自身が決定する。
※なお、75歳が受給開始時期の上限であり、75歳になった場合は運営管理機関等の裁定で支給が開始する。
障害給付金
5年以上の有期または終身年金(規約により一時金の選択可能) 75歳になる前に、一定の障害状態になった加入者等が給付を受けることができる。
死亡一時金
一時金で支給。 加入者が死亡した時に遺族が資産残高を受給する。
脱退一時金
一時金で支給。 脱退一時金の支給には、以下2つのケースがある。 ただし条件が厳しい(詳しくは省略します)ので、基本現役世代は引き出せないと思ったほうがいい。
- 離職などで企業型年金の資格を喪失して、企業型記録関連運営管理機関に請求するケース
- 国民年金保険料免除者などになり、個人型記録関連運営管理機関または国民年金基金連合会に請求するケース
税制上の措置
確定拠出年金は企業も個人も税制面でメリットがある。
拠出時
- 企業型年金で事業主が拠出した分は、全額損金算入できる
- 加入者が拠出した分は全額が小規模企業共済等掛金控除の対象
給付時
- 年金とした場合は公的年金等控除の対象
- 一時金とした場合は退職所得控除の対象
(結構、引退時に一時金で受け取ると退職所得に含まれるものが多いですね)
確定拠出年金の種類
個人型年金(iDeCo)
個人型年金は、掛け金を自分で掛けて自分自身で運用を行う制度。
第1号被保険者、第3号被保険者の場合は20歳以上65歳未満、第2号被保険者は65歳未満の方が加入できる。
(加入現在、国民年金保険料の免除などを受けている方、農業者年金の被保険者の方を除きます)
また、企業型確定拠出年金とiDeCoの併用が可能。
以前は確定拠出年金と言えば月額管理だったのだが、掛金の拠出は1年単位で考えるように変更になった。
これにより、加入者が年に1回以上で任意に決めた月にまとめて拠出する年払いや半年払いのような拠出方法も可能になった。
(これのせいで拠出限度額に関する問題を、以前は月額68,000円!というのから年額816,000円!みたいな覚えなおしが必要になった。現状FP試験においては両方乱れているところがあり、余計にタチが悪い)
年払い・半年払いのルール
- 拠出期間は12月分から翌年11月分までの掛金の拠出期間(実際の納付月は1月~12月の部分)を1年として考える。
- 拠出区分の月数に1カ月あたりの限度額を乗じた額が当該拠出区分の限度額となる(多く払うことはできないということ)。
- 拠出区分の掛金額は「5,000円×拠出区分の月数」以上とすること(1,000円単位で)
- 1年の中で1回だけ金額や拠出区分の変更ができる。
企業型年金(企業型DC)
企業型確定拠出年金とは、企業が掛金を拠出し、加入者が自ら年金資産の運用を行う制度です。
- 対象者は厚生年金保険の第1号と第4号被保険者(厚生年金の1号とか4号ってなんだっけ?!て人は「07公的年金の全体像」を読んでください)。
- 対象年齢は原則65歳未満だが、規約に定めることで70歳未満にできる。
- 企業型年金では、事業主の拠出に加えて加入者も拠出することができる(マッチング拠出)。ただし、事業主の拠出額を超えない範囲に限られ、合計拠出額も元々の限度額を超えることはできない。
- 加入者に一定の条件をつけることが可能(全員加入させなくても良い)
簡易企業型年金(簡易型DC)
中小企業を対象に、企業型DCの設立条件や必要な手続きを簡素化し、少ない事務負担で導入することができる企業年金制度。
- 厚生年金適用事業所の事業主であって、第1号厚生年金被保険者が300人以下の企業
- 加入資格に条件をつけられないので、全従業員が加入する
- 企業としては各種事務負担が企業型DCよりも簡素化されるメリットがある
中小事業主掛金納付制度(iDeCo+)
企業年金を実施していない中小企業が、iDeCoに加入している従業員の加入者掛金に追加して、事業主が掛金を拠出することができる制度。
中小企業は以下の条件をすべて満たす必要がある。
- 企業年金(企業型DC・確定給付企業年金(DB)・厚生年金基金)を実施していないこと。
- 従業員数(第1号厚生年金被保険者数)が300人以下であること。
ただし、事業主が複数の事業所を経営している場合は全事業所の従業員の合計が300人以下であること。
- 労使の合意
そのほかの事項
- iDeCoに加入していない従業員に事業主掛金を拠出することはできない。
- 加入者掛金額と事業主掛金額の合計額は、月額5,000円以上23,000円以下(加入者が年拠出中の場合は「5,000円×拠出区分の月数」の金額以上、当該拠出区分の拠出限度額以下)で、それぞれ1,000円単位。もともとの限度額を超えてしまうときは加入者掛金のほうを自動的に引き下げる。
- 加入者分と事業主分は、事業主が取りまとめて納付する。納付時期は加入者分に合わせなければならない。
- 事業主掛金は、法人なら損金算入できる。
- 加入資格に一定の条件を付けることができるが、不当に差別的なものは認められない。
拠出資金の運用について
- 加入者が運用方法を決める。
- 運営管理機関が提示してくる運用商品は、35種類を上限として、特性の異なる3つ以上の商品を提供する義務がある(簡易型DCは2つ以上)。
- 運用商品は企業型、個人型に関係なく「元本確保型」と「元本変動型」の二種類がある。
- 元本確保型は預貯金や保険などで、元本変動型とは言ってみれば投資信託である。元本確保型提供義務は現在廃止されているので無い事業所もある。
- 運用商品を選択しない加入者にはあらかじめ定めたデフォルト商品が自動選択される。
- 運用商品の配分変更や預替えは、少なくとも3か月に1回行うことができる。
- 加入者に対する投資教育を継続することが事業主の努力義務としてある。
確定給付企業年金(DB)
給付額があらかじめ約束されている企業年金制度で、自己責任で運用する確定拠出年金とは大きく異なる。
事業主が運用の責任を負うため、運用結果が悪ければ、事業主が不足分を穴埋めする。
DBとも呼ばれ、現在、最も普及している制度。 厚生年金基金もDBのひとつであるが、今現在は新設が認められていない。
厚生年金適用事業所の被保険者が対象で、不当に差別的な規約でなければ加入者資格を定めることもできる。
種類
確定給付企業年金(DB)は規約型DBと基金型DBがあります。
規約型DB
労使合意した規約に基づき、企業が生命保険会社もしくは信託銀行等と契約をして掛金を拠出し、そこが年金資産を管理・運用して年金給付を行う制度。
基金型DB
企業が法人格を持った企業年金基金を設立し、基金が管理・運用・給付を行う企業年金制度。
掛金について
事業主が掛金を拠出する。ただし、規約で定めた上、加入者同意があれば本人拠出も可能。
運用について
資産運用は企業年金側で行われ、規約型DBでは事業主が、基金型DBでは企業年金基金が運用の方針を決定し、運用の委託を行う。
事業主は掛金の納付状況、資産運用状況、財務状況について加入者等への情報開示を行わなければならない。
給付について
老齢給付を基本として障害給付や遺族給付がある。
老齢給付金
- 給付期間は最低5年以上であること
- 受給資格期間は20年を超えてはならない
- 支給開始年齢は原則60歳以上70歳未満の範囲で定める。
- 選択により一時金支給もできる(選択一時金)。
障害給付金・遺族給付金
規約に定めることで加入者が死亡や高度障害になった場合に障害給付や遺族給付を行うことができる。
脱退一時金(退職一時金)
加入期間が3年以上で退職したが、勤続年数が足らず老齢給付が受けられない場合、また、個人資産が15,000円以下で一定の条件を満たした場合にも支給される。
税制上の措置
拠出時
- 事業主拠出は全額損金算入
- 本人拠出をした場合は生命保険料控除の対象になる
老齢給付時
- 年金とした場合は公的年金等控除の対象
- 一時金とした場合は退職所得控除の対象(脱退一時金も含む)
私的年金:各制度間の移換(ポータビリティ)について
加入者が転職などすると、転職先に年金資産を移管できるポータビリティがある。
これについては、DCとDB、中退共にも若干の互換性がある。
移管先→ ↓移換前 | DB | 企業DC | 個人DC | 中退共 |
---|---|---|---|---|
DB | 〇※1 | 〇※1 | 〇※1 | △※3 |
企業DC | 〇(要規約) | 〇 | 〇 | △※3 |
個人DC | 〇 | 〇 | / | × |
中退共 | △ ※2、3 | △ ※2、3 | × | 〇 |
※1 DBからDB、企業、個人型DCへは、脱退一時金相当額を移換可能
※2 中退共に加入している企業が中小企業じゃなくなった場合に移換可能
また、2022.5以降終了したDBから個人型DCへの移管も可能。
※3 合併等の場合に限った措置で移換可能
企業型DCの加入者が退職後6カ月以内に移換の手続きをとらないと、国民年金基金連合会に自動移換される。
自動移換されると運用指図ができなくなるなどデメリットがある。
自動移換後に企業DCや個人型DCの加入資格を取得した場合、一定の条件のもと、本人の申出なしでそれぞれの確定拠出年金制度へ個人型管理資産を移管する。
外部リンク:厚生労働省
私的年金に関する過去問を解いてみましょう。2021年1月試験 学科 問6
確定拠出年金の個人型年金に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 厚生年金保険の被保険者のうち、20歳未満である者は、個人型年金に加入することができない。
- 国民年金の第3号被保険者が個人型年金に加入する場合、掛金の拠出限度額は年額27万6,000円である。
- 事業主は、使用する従業員の数が100人以下である場合に限り、個人型年金加入者である従業員の加入者掛金に上乗せして中小事業主掛金を拠出することができる。
- 個人型年金加入者は、運用関連運営管理機関が提示した運用商品のなかから、3つ以上の運用商品を選択し、それぞれに充てる額を指図しなければならない。
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解答
2
2番は設問のとおりです。
1は20歳未満て書いてありますが、2号さんは下の年齢は制限が特に設けられていません。でもこの知識、FPでどのくらい必要・・・?
3は300人以下になったのでもっとたくさんの企業が参加できますね。
4は特に3つ以上選ばなきゃってことはありません。もっと自由です。逆に提示する商品はたくさん出さないといけませんけど。