私的年金①|FP1級Wiki

公的年金に対して私的年金がある。私的年金という言葉のイメージだと、民間生命保険会社の年金保険にでも加入するようなイメージだが、実際はもっと公的なものに近く、国民年金基金や確定拠出年金、中小企業退職金共済などが私的年金に含まれる。最近よく目にするiDeCoは確定拠出年金に含まれる。公的年金と私的年金との大きな違いは強制か任意かといったところと思う。

私的年金を大きな枠組みで見ると、企業が協力する企業年金系、個人負担で掛けていく個人年金系、企業の福利厚生も兼ねた共済系に分かれる。

また、ここでは年金型に限らず退職金準備制度なども紹介していく。

       

国民年金基金

国民年金基金は、国民年金加入者の2階部分の役割を担う第一号被保険者のための年金制度。
国民年金基金は「全国国民年金基金」と、職種別に設立された「職能型国民年金基金」の2種類がありますが、それぞれの基金が行う事業内容は同じ。
全額所得控除できるのがメリット(民間の個人年金保険とかだと4万円が限度なので)。
将来受け取れる年金額は、加入時点の年齢と給付の型および加入口数によって決まっていて増減はない。

加入条件・資格

  • 「国民年金の第1号被保険者」および「60歳以上65歳未満の方や海外に居住されている方で国民年金の任意加入されている方」が加入できます。
  • 国民年金保険料の一部や全部を免除されている者は加入できない(産前産後免除や法定免除(障害基礎年金受給者等)のぞく)。
  • 第2号被保険者、第3号被保険者、農業者年金被保険者は加入できない。
  • 国民年金基金に加入すると、付加保険料を納めることはできない(国民年金基金の中に付加年金の機能も含まれるような感じ)。
  • 加入は任意だが、任意に脱退はできない。

掛け金

  • 掛金月額6万8,000円以内で選択。
    (ただし、個人型確定拠出年金にも加入している場合は、その掛金と合わせて6万8,000円以内)
  • 確定年金の年金額が終身年金の年金額をこえる選択はできない。
  • 4月から翌年3月までの1年分の掛金を前納した場合、0.1ヵ月分の掛金が割引される。
  • 国民年金を追納した場合、その特定追納期間の間(上限60月)、1月あたり102,000円以下とすることができる。

給付

  • 1口目は、終身年金:A型(15年保証)orB型(保証なし)のいずれかを選択
  • 2口目以降は、終身年金のA型、B型か、受給期間が定まっている確定年金のⅠ型、Ⅱ型、Ⅲ型、Ⅳ型、Ⅴ型から選択
  • A型、Ⅰ型、Ⅱ型、Ⅲ型、Ⅳ型、Ⅴ型は、年金受給前または保証期間中に亡くなられた場合、納付期間に応じた遺族一時金が支給されます。
  • 1口目は原則65歳から支給となり、2口目は型により60歳支給と65歳支給がある。
  • 年金額が12万円未満の方は年1回(2月、4月、6月、8月、10月、12月のいずれかの月)。
  • 年金額が12万円以上の方は年6回(2月、4月、6月、8月、10月、12月)がお受け取り月となる。
  • 老齢年金のほうを繰上げ支給した場合、付加年金相当額部分だけ繰上げ支給される。
       

小規模企業共済

小規模企業共済は独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する事業主のための退職金準備制度。

加入のメリット

  • 確定申告で、全額を課税対象所得から控除できる。(小規模企業共済等掛金控除)
  • 一括受取りの場合は退職所得扱い、分割受取りの場合は、公的年金等の雑所得扱いとなり、税制メリットがある。任意解約の場合は一時所得。
  • 掛金の範囲内で事業資金の貸付制度が利用できる。低金利で、即日貸付けも可能。

加入資格

従業員数が20人以下(卸売業・小売業・サービス業は5人以下)の中小経営者や個人事業主、共同経営者(3人まで)と法人役員も加入できる。

掛け金

掛金月額1,000~70,000円まで500円単位で自由に設定が可能。加入後の金額変更も自由
Wiki技能士

私は、いっせんななまんごひゃく円と覚えています。
こうすると、3つ覚えなくてはならないところが1つで済むからです。
覚えにくかったら忘れてください(笑)

       

共済金の給付

共済契約者の立場や請求事由によって、共済金の種類が、A・B・準・解約手当金など異なります。

個人事業主の場合

共済金等の種類請求事由
共済金A・廃業した場合
・契約者が亡くなった場合
共済金B・老齢給付(65歳以上、180月納付)
準共済金・事業を法人成りした結果、加入資格を失った場合
解約手当金・任意解約
・機構解約(滞納)
・法人成りして加入資格を失わないが解約した場合

法人役員の場合

共済金等の種類請求事由
共済金A・法人が解約した場合
共済金B・病気やけがで65歳以上で役員を退任した場合
・契約者が亡くなった場合
・老齢給付 (65歳以上、180月納付)
準共済金・法人の解散や病気けが以外の理由により
65歳未満で役員を退任した場合
解約手当金・任意解約
・機構解約(滞納)

掛金納付月数が、240か月(20年)未満で任意解約をした場合は、掛金合計額を下回る。
掛金納付月数が6か月未満の場合は、共済金A、共済金Bは受取れない。また、12か月未満の場合は、準共済金、解約手当金は受取れない。
返戻率は12ヵ月以上80%から始まり120%を上限としている。

       

受け取り方法

共済金等の受取方法は、「一括受取り」、「分割受取り」および「一括受取りと分割受取りの併用」の3種類。

「分割受取り」および「一括受取りと分割受取りの併用」を希望する場合は、以下の要件の全てを満たす必要がある。
  • 共済金Aまたは共済金Bであること
  • 請求事由が共済契約者の死亡でないこと
  • 請求事由が発生した日に60歳以上であること
  • 共済金の額が次のとおりであること
    • 分割受取りの場合:300万円以上
    • 一括受取りと分割受取りの併用の場合:330万円以上(一括で支給を受ける額が30万円以上、分割で支給を受ける額が300万円以上)

分割受取による共済金は10年間または15年間にわたって年6回、奇数月に支給される。

共済金の貸付(一般貸付制度)

資金が必要となった場合に貸付限度額の範囲内で貸付を受けることができます。
  • 借入金額は10万円以上2,000万円以内(5万円単位)
  • 借入期間は金額に応じて最大60ヶ月
一般貸付制度の他にも、緊急経営安定貸付傷病災害時貸付福祉対応貸付創業転業時新規事業展開等貸付事業承継貸付廃業準備貸付がある。
       

中小企業退職金共済(中退共)

中退共は、主に中小企業(個人事業含む)の常用労働者を対象とした退職金共済制度で、新規加入や掛金の増額に対して国の助成制度があるのが特徴です。
加入には従業員全員を加入させなければならず、掛金は全額事業主負担。従業員の請求に基づいて中退共から退職金が直接支払われます。

対象となる中小企業

  • 一般業種:従業員数300人以下または資本金3億円以下
  • 卸売業:従業員数100人以下または資本金1億円以下
  • サービス業:従業員数100人以下または資本金5,000万円以下
  • 小売業:従業員数50人以下または資本金5,000万以下
事業拡大で中小企業でなくなった場合は、企業型確定拠出年金や確定給付企業年金、特定退職金共済制度へ資産移換できる。

掛金月額

  • 月々5,000~30,000円で、1万円未満は1,000円単位、1万円以上は2,000円単位で設定。
  • 初めて加入する場合は、4カ月目から1年間、月額の2分の1(上限5,000円)が国から助成される。
  • 18,000円以下の掛金を増額する場合、増額月から1年間、増額分の3分の1が国から助成される。
       

退職金の受け取り

掛金納付月数による違い

  • 11月以下:退職金は支給されない
  • 12月以上23月以下:納付総額を下回る
  • 24月以上42月以下:掛金相当額となる
  • 43月以上の場合:運用利息と付加退職金が加算され長いほど有利になる

そのほかの点

  • 一時金払い、分割払い、その併用の3タイプから選択できる
  • 全額分割払いを選択するには退職日に60歳以上で、①5年払は80万以上、②10年払は150万以上
  • 年4回支給で2月、5月、8月、11月に支給。
  • 一時払いは退職所得、分割払いは雑所得になる。

外部リンク:国民年金基金連合会

       

それでは過去問を解いてみましょう。2019年5月試験 学科 問7

中小企業退職金共済制度(以下、「中退共」という)に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、本問において、事業主には同居の親族のみを使用する事業主等は含まないものとし、従業員には短時間労働者は含まないものとする。

  1. 事業主が新たに中退共に加入する場合、加入月から1年間、掛金月額の2分の1相当額(従業員ごとに5,000円が上限)について国の助成が受けられる。
  2. 既に中退共に加入している事業主が、掛金月額が2万円以下である従業員の掛金を増額する場合、増額月から1年間、増額分の3分の1相当額について国の助成が受けられる。
  3. 退職金の額は、退職者に係る掛金月額、掛金納付月数、退職理由および退職時の年齢に応じて定められている基本退職金に、運用収入の状況等に応じて決定される付加退職金を加えた額となる。
  4. 退職者が退職金について5年間の全額分割払いを選択するためには、退職した日において60歳以上であり、かつ、退職金の額が80万円以上であることが必要である。

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解答

Wiki技能士

4は当テキストの「そのほかの点」に記載があります。
そのほか、
1は加入月からではなく4か月目から。難しい。
2は18,000円以下の掛金を増額する場合。これも難しい。
3は退職理由とか関係ないです。