中小企業の資金調達|FP1級Wiki

中小企業が資金を調達するには、金融機関からの借入のほか、さまざまな保証制度もある。

金融機関からの借入

企業が資金調達する代表的なものが金融機関からの借入である。ちなみに金融機関からお金を借りることを間接金融という。株を発行して資産家から直接お金を融資してもらうことを直接金融という。中小企業の場合、非上場株だと親類や知り合いのツテを頼らねばならず、また、株式上場するのも難しいため、間接金融で銀行からお金を借りるわけである。なぜ間接金融というか。銀行利用者が預けた預金を間接的に借りることになるからである。ちなみにこれは全く試験には出ない。

金融機関からの借入には主に以下の方法がある。

証書貸付

借入内容、条件を記載した借用証書(金銭消費貸借契約証書)により資金調達する。長期の担保付貸付などの場合に行われる。担保物件は通常不動産になる。

       

手形貸付

金融機関へ向けて金銭消費貸借契約証書の代りに約束手形を振り出し、これを金融機関に差し入れて資金を調達する。金融機関は満期までの利息分を差し引いて貸付する。

代理貸付

金融機関(受託金融機関)が政府系金融機関等(委託金融機関)からの委託を受けて融資業務を代行する。債権者はあくまでも委託金融機関であり、受託金融機関は融資の実行、担保の取得、資金管理等の業務を代行する。日本政策金融公庫などの政府系金融機関は身近に窓口があるわけではないのでこの制度がある。

ABL(動産・債権担保融資)

企業の保有する売掛債権や在庫、機械設備等の動産を担保して資金調達する。過度に不動産担保に依存しない融資手法。

       

信用保証協会保証付融資(マル保融資)

信用保証協会の保証がついた融資の事を言う。信用力の弱い中小企業が無担保、無保証人でも融資を受けられ資金調達がしやすくなる。反面、金融機関側が安易に貸し付けやすいとも言えるので返済計画には注意が必要である。ただ、金融機関側とすれば貸倒リスクが少ないため金利が安い傾向がある。

マル保融資を受けるためには事業規模、業種などにいくつかの条件が定められており、農林漁業、宗教法人、非営利団体等、一部の業種は対象外である。また、信用保証協会には保証料を支払う必要がある。

中小企業の要件

業種資本金従業員
製造業、建設業等(一部をのぞく)3億円以下300人以下
卸売業1億円以下100人以下
サービス業(一部をのぞく)5,000万円以下100人以下
サービス業(ソフトウェア業等)3億円以下300人以下
小売業・飲食業5,000万円以下50人以下

一般保証限度額

最大2億8,000万円(普通保証2億円以内。無担保保証は8,000万円以内、無担保無保証人は特別小口2,000万円以内)

       

セーフティネット保証制度(経営安定関連保証)

マル保融資において、取引先の再生手続等の申請や事業活動の制限、災害、取引金融機関の破綻、大規模な経済危機等により経営の安定に支障が生じている中小企業について、信用保証協会が保障限度額の別枠化を行う制度。前項の一般保証限度額に、次項の別枠保証限度額が加算される制度。
セーフティネット保証制度には1~8号まで存在し、市町村長や特別区長の認定を受けて利用する。代表的な4号(突発的災害)、5号(経済悪化)を例にすると、4号なら指定地域で1年以上継続して事業を行った上で下記の両方を満たすこと。5号ならば下記のいずれかを満たすことが加算条件となる。

  1. 指定業種※に属する事業を行っており、直近3か月間の売上高等が前年同期比で5%以上減少していること
  2. 指定業種※に属する事業を行っており、製品等原価のうち20%以上を占める原油等の仕入価格が20%以上上昇しているにもかかわらず、製品等価格に転嫁できていない方

※指定業種は中小企業庁が定めている。

セーフティネット保証制度の別枠保証限度額

最大2億8,000万円(普通保証2億円以内※無担保保証は8,000万円以内、無担保無保証人は特別小口2,000万円以内)

※経営安定関連保証6号(金融機関の破綻)の場合の普通保証の別枠保証限度額は3億円以内

危機関連保証とセーフティネット保証を併用する場合、それぞれに対して別枠保証限度額が付与される。これにより一般保証、セーフティネット保証、危機関連保証の3階建てとなる。

       

危機関連保証

危機関連保証とは、 リーマンショック、東日本大震災、新型コロナウイルス級の大規模な経済危機、災害等により影響を受ける中小企業を支援するこれまた別枠の保証制度。同じく信用保証協会が行う。

  • 市場に対する影響が大きいため、実施は原則1年間(経済産業大臣が認める場合のみ1年間の延長ができる)
  • 原則として法人代表者以外の連帯保証人は不要
  • 指定期間内に貸付を実行する必要あり
  • 取扱金融機関は当該貸付の完済までモニタリングを行い、信用保証協会に報告する(経済産業大臣が指定する期間内においては不要)

危機関連保証の別枠保証限度額

最大2億8,000万円※(普通保証2億円以内無担保保証は8,000万円以内、無担保無保証人は特別小口2,000万円以内)

※セーフティネット保証、災害関係保証(東日本大震災及び危機関連保証の対象となった災害に限る)、東日本大震災復興緊急保証と合わせて5.6億円

マル保融資各制度の併用について

一般保証、セーフティネット保証、危機関連保証は完全併用が可能で、それぞれに対して別枠で保証限度額が付与される。これにより一般保証、セーフティネット保証、危機関連保証の最大3階建てとなる(合計8億4,000万円)。

       

中小企業倒産防止共済制度(経営セーフティ共済)

中小企業倒産防止共済制度は、取引先事業者が倒産した際に中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度。独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が行う。

掛金について

掛金月額は、5,000円から20万円までの範囲(5,000 円単位)で自由に選択できる。掛金は掛金総額が800万円に達するまで積み立てられる。

借入について

無担保・無保証人で掛金の最高10倍(上限8,000万円)まで借入れでき、掛金は損金または必要経費に算入できる。
借入には取引先の倒産が条件になるが、夜逃げについては対象外となるので注意が必要。

解約手当金について

解約した場合は、解約手当金を受け取れる。自己都合解約でも、支払期間12か月以上で掛金総額の8割以上が戻り、40か月以上で掛金全額が戻る。ただし、12か月未満は掛け捨てとなる。

外部リンク:中小企業庁

       

それでは過去問を解いてみましょう。2019年1月試験 学科 問8

信用保証協会のセーフティネット保証制度に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

  1. セーフティネット保証を利用するためには、原則として、事業所の所在地の市町村または特別区に申請し、中小企業信用保険法に基づく認定を受ける必要がある。
  2. セーフティネット保証5号の対象は、指定業種に属する事業を行っており、最近3カ月間の売上高等が前年同期比10%以上減少している中小企業者とされている。
  3. 経営安定関連保証と危機関連保証を併用する場合、それぞれに対して、一般保証とは別枠の保証限度額が付与される。
  4. 無担保かつ無保証人の保証限度額は、2018年4月1日貸付実行分から、一般保証と別枠保証のいずれも2,000万円とされている。

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解答

Wiki技能士

すごいマニアックな出題。
2は5%以上減少していれば対象になります。
1はその通り。市町村に認定を受けますね。
3もそうで、それぞれ別枠を持ってます。
4は無担保無保証人。これまたマニアックですが2,000万円で合ってますね。