投資用不動産の評価方法|FP1級Wiki

不動産の評価額には「積算価格」「収益価格」がある。
積算価格は、たとえば銀行融資で担保にした場合にいくら貸せるかの基準にするようなもので、建物と土地の価格を求めた者を合算し、要は差し押さえた場合にいくらで売れるかを判定するものになる。
それに対し、収益価格というのは、その不動産を運用(賃貸アパートしたりテナント貸ししたり)した場合にいくら稼げるかで判断して、その不動産価格を求める手法。そのため投資用不動産の評価に役立てられています。その収益価格を求める方法を収益還元法と言います。ここではこの収益還元法を基本に、投資用不動産の評価について学んでいきましょう。

       

収益還元法

収益還元法とは、対象の不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の現在価値の総和を求めることにより収益価格を求める方法である。
収益還元法には、直接還元法DCF(ディスカウントキャッシュフロー)法がある。

直接還元法

その不動産でいくら稼げるかといったところから不動産価格を求める。
家賃などで得られる一定期間の純収益(総収入-経費)を還元利回り(期待収益率)で割って収益価格を求める。
期待収益率というのは、この物件だったらこのぐらいの利回りは欲しいよねって数値です。
投資家の期待に対し、収益が充分でないと不動産価格が下がるという仕組みです。

求める不動産の収益価格=一定期間の純収益÷還元利回り(期待収益率)

たとえば、初年度の純収益が1,000万円で還元利回りが5%の場合、収益価格は2億円(1,000万÷0.05)となる。
直接還元法は、DCF法に比べて簡便であるが、単純計算であるため精度は劣るとされている。

       

DCF法

将来その不動産で得られるキャッシュフロー(収入)を現在価値に割り引いて評価する方法。これは不動産に限らず企業評価などでも利用されます。 そもそも、なぜ現在価値に割り引いて評価するのか。現在価値に割り引くとは何か?ここを理解しないと話がまったく頭に入りません。

現在価値に割り引くとは、例えば10年後にもらえる10万円と、今すぐもらえる10万円。同じ価値ですか?というようなお話。
将来その不動産で得られるキャッシュフローはその時間経過分の価値を割り引かないといけませんよね?
それを導き出すのがDCF法(NPV法やIRR法)ということです。

例えば10万円があります。ひとつは今10万円もらえる。もうひとつは10年後に10万円もらえる。どちらがうれしいですか?
ほとんどの人は早くもらえるほうがうれしいのではないでしょうか。それは何故か。早く使えるからです。
ゲームを買ったり、大型テレビを買ってみたり、すぐに役立てられますよね。これは金融商品にも同じことが言えます。
それは待っている間の10年間で10万円に利息をつけて増やすことができるかもしれないからです。
リスクのある株式投資などに限らず、例えば貯金や国債など、無リスク資産と呼ばれるような安全な方法でも増やすことができます。

例えば国債で100万円分購入すると10年後に安全に110万円で返ってくる商品があるとします。だとすれば10年後の110万円というのは今日手にしている100万円と、本質的な価値は同じだよね?ってことが言えます。10年後の110万円を現在価値に割り引いて100万円としている。これが「現在価値に割り引く」という考え方なのです。それを踏まえて考えると、その世界では10年後に100万円が105万円になるよーって不動産があったとしたら、これは5万円増えているわけですが、DCF法では、その不動産は100万円の価値はないということになるのです(他に安全に100万円を増やす方法があるから)。これが現在価値と将来価値の差。タイムイズマネーということ。これがDCF法です。

不動産から継続的に発生する各期の純収益と保有期間終了後の復帰価格(転売予測価格-売却費用)を求め、それぞれ発生時期に応じて割引率(期待収益率)により現在価値に割り引いて各期ごとの収益価格をすべて合計して求める。

※計算式については複雑な計算の部分は表で与えられます。

計算例

毎年100万円の純収益があるマンションの場合で、3年後に1,000万円で売却した場合、DCF法での収益価格はいくらか。複利原価率は6%とする。

[年6%の場合]1年2年3年
複利原価率0.9430.8900.840
       

(100万円×0.943)+(100万円×0.890)+(100万円×0.840)+(1,000万円×0.840)=1,107万円

実際のお金は100万円を3回もらえてその後1,000万円で手放しているから1,300万円なのですが、手にするまでに3年の時を要してますので、実質価値はDCF法だと1,107万円だということですね。タイムイズマネーということが良く分かります。

DCF法の考え方により、投資家が対象不動産に投資するかどうかを判断する基準が2つある。

それがNPV法IRR法です。

NPV法(正味現在価値法)

DCF法の中のひとつ。各期の賃貸純収益と復帰価格(入ってくる予定金額)の現在価値の合計額(収益価格)から投資予定額(支払う金額)を差し引く。 割引率が確定している状況で、投資予定金額が割高かお得かで判断する手法。
結果がゼロやプラスなら投資価値あり、マイナスなら投資価値なしということになる。

IRR法(内部収益率法)

DCF法の中のひとつ。各期の賃貸純収益の現在価値と保有期間終了後の復帰価格の現在価値の合計金額が、投資予定額と同じになる割引率(実際の収益率)を求める
※実際の収益率=内部収益率

内部収益率(実際の収益率) ≧ 期待収益率(本来欲しい利率) → 投資価値あり
内部収益率(実際の収益率) < 期待収益率(本来欲しい利率) → 投資価値なし

投資予定金額が確定していて、その金額で投資して導き出す割引率が高いか低いかにより判断する手法。

       

DSCR(借入金償還余裕率)

数値が大きくなるほど借入金返済に余裕があり、1より小さい場合は、毎期の純収益で借入金を返済できないことになる。
金融機関が融資をする際に使用する。
例えば200万円のキャッシュフローに対して、元金+利息で100万円を返済をした場合はDSCRは2.0倍ということになる。
数値が大きいほど返済の余裕がある。

DSCR=年間純収益(賃貸収入-運営費用)÷年間借入金元利返済額(元金+利息)

不動産投資の利回り

不動産投資の評価尺度

不動産投資の採算性を評価するための尺度として次のような各種の利回りが用いられる。

       

総収入利回り(単純利回り)

年間賃料総収入÷総投資額

最も簡便な収益率。粗利回りや表面利回りなどともいわれる。諸経費や税効果などは一切無視している。

純収入利回り

(年間賃料総収入-諸経費)÷総投資額

諸経費を計算に含めることで総収入利回りよりは実際の利回りに近い。不動産事業の利益性を評価するのに基本となる収益率。

投下資本収支利回り

(年間賃料総収入-諸経費+税効果)÷総投資額

純収入利回りに税効果をプラスした収益率。
減価償却の税効果を加算して計算することから、会計上の営業利益率に対応した指標となる。

       

レバレッジ効果

レバレッジ効果とはテコの原理のこと。不動産投資で言うなら小さい資金で大きい投資効果を上げるということです。具体的には自己資金と借入金を併用して収益性を高めます。
例えば1,000万円の自己資金で年間収益100万円の投資用不動産を購入するよりも、1,000万円を頭金にして、購入価格3,000万円の年間収益300万円の物件を購入したほうが、利回りが同じく10%だったとしても、元手1,000万円で得られる収益は跳ね上がります。これが「レバレッジ効果」といわれるもので、より積極的な不動産投資の考え方です。

外部リンク:国土交通省

       

それでは過去問を解いてみましょう。2019年5月試験 学科 問41

不動産の投資判断手法に関する次の記述のうち、適切なものはいくつあるか。

  1. DCF法は、連続する複数の期間に発生する純収益および復帰価格を、その発生時期に応じて現在価値に割り引き、それぞれを合計して対象不動産の収益価格を求める手法である。
  2. NPV法による投資判断においては、対象不動産に対する投資額が現在価値に換算した対象不動産の収益価格を上回っている場合、その投資は有利であると判定することができる。
  3. IRR法による投資判断においては、対象不動産の内部収益率が対象不動産に対する投資家の期待収益率を上回っている場合、その投資は有利であると判定することができる。
  1. 1つ
  2. 2つ
  3. 3つ
  4. 0(なし)

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解答

Wiki技能士

1は適切です。現在価値に割り引いて計算するのがDCF法です。
2は不適切です。投資額が上回っちゃったらダメですよね。
3は適切です。IRRは内部収益率で判断します。

正解は2つです。

投資用不動産の評価方法