不動産売買の注意点|FP1級Wiki

不動産売買の項目では、特に手付金による解除の関係が出題される傾向にあります。

契約時の金銭の授受

不動産売買は長期に渡る傾向があるため、契約時に手付金を支払う慣習があり、民法で規定されている。

また引き渡しより前に購入代金の一部を支払うこともあり、これは内金という。内金には法的な性格はなく、一般の不動産売買ではあまり見られない。どちらも売買代金の一部に充当されます。手付金には、契約したことを証明するための「証約手付」、違反があった時に没収されたり倍額返金を要する「違約手付」、任意に契約を解除することができるという手付「解約手付」があり、わが国では民法上は原則解約手付とされている。

売主が宅地建物取引業者である売買契約では、契約内容の如何にかかわらず、手付は必ず「解約手付」の性質を与えられる

手付金の額は原則自由だが、宅地建物取引業者が売主(買主は業者以外で)の場合には、売買代金の2割を超える手付金を受け取ることはできない。

手付金による契約の解除

買主は手付を放棄すればいつでも契約を解除できる。 売主は、手付の倍額を買主に償還することで、いつでも契約を解除できる。

ただし、契約解除はいつまでも可能ではなく、契約の相手方が「履行の着手」を行なった時点からできなくなる。
※履行の着手とは、買主は代金(内金も含む)の支払い、売主は物件の引き渡しや登記等が該当する。

なお、手付解除によって売主の損害が手付を超えても、特約が無い限りは買主は手付を超える損害賠償に応じる義務は生じない。
また、「融資特約あり」で融資が通らなかった場合の契約解除は手付金等が返還されます。

       

不動産の面積

不動産の登記面積と実測面積は必ずしも一致しない。登記面積は壁芯計算(壁の中心線で計測)であるが、マンション等の専有部分の登記面積は内法計算(部屋の壁の内側から計測)したものである。マンションの販売用資料は壁芯で記載されるため、実際より大きく表示される。

公簿売買と実測売買

  • 公簿売買とは、登記簿の表示面積を用いて価額を確定する売買方式をいう。

公簿売買は測量不要で契約を結ぶため、実測面積と差異が生じても取引金額は変更しない旨を契約に定めることが多い。

  • 実測売買とは、実測面積によって確定する売買方式。

登記簿の表示面積で金額を定めて契約し、後から実測面積による金額との差額を精算する方法も、実測売買となる。

危険負担

民法上、売買契約締結後~引渡し前までの間に、自然災害などで売主の責めによらない事由で建物が滅失した場合、買主は売買代金の支払いの履行を拒絶できる。ただし、代金支払債務を消滅させるには契約解除となる。

       

契約不適合責任(瑕疵担保責任)

売買契約において、目的物の種類・品質・数量に関して契約の内容に適合しない場合に、売主が買主に対して負うこととなる責任。
債務不履行により生じる責任のひとつである。なお、買主の善意・無過失は要件ではない。

契約不適合責任において買主が売主に請求することができる権利は次のとおり。

追完請求権買主が売主に対して、目的物の補修、代替物の引渡し又は不足分の引渡しを請求すること。
代金減額請求権まずは履行の追完請求を勧告し、追完されないときに代金の減額を請求すること。
損害賠償請求権債務を履行しないとき、あるいは債務の履行が不能であるときに請求できる。
契約解除相当の猶予期間を定めて履行を催告をしても売主が債務を履行しないとき、または履行不能のときに認められる。
これらは買主が不適合を知った時から1年以内に売主に通知しなければならない。

契約不適合責任の期間等

民法・買主は、契約の不適合を知った時から1年以内に通知しないと、
売主に契約不適合責任を請求できなくなる。
・売主が契約不適合責任を負う期間を定めたり
逆に責任を免除する特約は任意規定として有効である。
宅地建物取引業法・宅建業者が売主(買主は業者以外で)の場合に、売主は「引渡しから2年以上の期間、
契約不適合の通知があれば責任を負う」とする特約は有効だが、
それ以外に民法の規定より買主に不利な特約は無効となる。
住宅品質確保促進法新築住宅の構造耐久力上主要な部分等について、
引き渡し日より10年間(特約により20年間まで伸長できる)、
売主と請負人は瑕疵の修補、損害賠償責任を負う。
特約により期間を短くしたり、契約不適合責任を免除・軽減するなど、
買主に不利な特約は無効となる。
・住宅瑕疵担保履行法により、売主と請負人が10年間の契約不適合責任を
確実に履行するための資力確保措置として、住宅瑕疵担保責任保険(2,000万以上)に加入するか、
法務局に一定の保証金を供託(過去10年の新築供給戸数に応じた額)することが必要となる。
       

取引関係者

未成年者との売買

父母双方が同意するか、父母が代理で売買を行う。父母の同意なしの売買は、未成年者本人または父母が取り消すことができる。
ただし、婚姻している未成年者は同意不要で売買できる。なお、同意なしの売買を親権者が追認した場合は契約日にさかのぼって有効になる。

共有不動産・共有持分

相続などで権利が共有となっている共有不動産の場合、共有者のひとりと契約を結んでも他の共有者の持分は買受けできない
ただし、共有持分の場合でその持分を譲渡する場合は、共有者全員の同意を得なくても単独でその持分を譲渡できる。

代理人との契約

権限を与えられた代理人との取引の効果は、直接本人にまで及ぶ。
代理人と契約する場合は、代理権が確実に与えられているか、代理権の範囲を超えていないかを確認する必要がある。

       

筆界特定精度

筆界特定精度とは、土地の筆界をめぐるトラブルを裁判外で解決する制度。
筆界特定とは、その土地の範囲を区画するものとして定められた筆界を、現地調査等で位置を特定すること。
申請に基づいて筆界特定登記官が特定する。
しかしこれは所有権の範囲を特定するものではない。共有名義の土地でも1人で申請できる。
申請手数料は筆界で隣接する土地の固定資産税評価額の合計をもとに導き出される。
筆界特定後は、管轄する登記所でだれでも筆界特定書の写しの交付を受けられる。
筆界は所有者同士の合意があっても変更することはできない。

外部リンク:国土交通省

       

不動産売買に関する過去問を解いてみましょう。2021年1月試験 学科 問35

不動産の売買取引における手付金に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、本問においては、買主は宅地建物取引業者ではないものとする。

  1. 宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約の締結に際して、買主の承諾を得られれば、宅地建物取引業者は、売買代金の額の2割を超える手付金を受領することができる。
  2. 宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約において、「宅地または建物の引渡しがあるまでは、いつでも、買主は手付金を放棄して、売主は手付金を返還して契約を解除することができる」旨の特約は有効である。
  3. 宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約の締結に際して手付金を受領し、当該契約に交付された手付金を違約手付金とする旨の特約が定められている場合、買主は手付金を放棄することにより契約を解除することはできない。
  4. 宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約の締結に際して解約手付金を受領したときは、買主が契約の履行に着手するまでは、宅地建物取引業者はその倍額を現実に提供して契約を解除することができる。

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解答

Wiki技能士

1は、手付金は2割を超えて受け取ってはいけません。
2は、売主は手付金の2倍を償還ですね。
3は、違約手付(債務不履行対策)の問題なのですが、民法上解約手付と同義とされているので、つまり放棄して契約解除できます。

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