その他の不動産の譲渡の特例|FP1級Wiki
固定資産の交換の特例と立体買換えの特例、収用に関する特例の解説です。
固定資産の交換の特例はFP1級応用編の計算問題で出題されますので、詳細を覚えましょう。
固定資産の交換の特例
特例の効果(100%課税繰延)
固定資産を同じ種類の資産と交換し、その資産を同じ用途に使用した場合は、交換で譲渡した資産について譲渡がなかったものとして100%課税繰り延べになる。
譲渡資産 ≦ 取得資産 | 譲渡資産 > 取得資産 |
---|---|
譲渡が無かったものとされる。 | 差額部分(交換差金)についてのみ 譲渡があったものとされる。 |
適用要件
- 譲渡資産は1年以上所有していた固定資産(借地権も含む)であること。
- 取得資産は相手が1年以上所有していた固定資産であること。かつ交換目的で取得していない事(販売用はダメ)。
- 取得資産と譲渡資産が同じ種類(土地と土地、建物と建物)の固定資産で、交換後も同一の用途にすること(居住→事業は不可)。しかし、いつでも宅地として供用可能な状況にあれば宅地とされる。よって青空駐車場や空閑地は宅地として考えることもできる。店舗併用住宅は事業用と居住用どちらにも対応できるなど、柔軟になっている。
- 相手が取引後にすぐ売却しても、自己が要件を満たしていれば適用される。
- 譲渡資産と取得資産の時価の差額が高いほうの20%以内であること。
- 1つの資産の一部を交換し、ほかの部分は売買としたなら、その売買代金は交換差金となる。
- 土地の共有持分についても適用できる。
特例の計算(100%課税繰延)
①収入金額=交換差金等=交換譲渡資産の時価-交換取得資産の時価
②取得費+譲渡費用=(交換譲渡資産の取得費+譲渡費用)×(収入金額(①の答え)÷交換譲渡資産の時価)
③譲渡益=①-②
既成市街地等内の中高層耐火建築物のための買換えの特例(立体買換えの特例)
等価交換方式※で、個人地主が土地をデベロッパー(開発業者)に土地を譲渡し立体買換えの特例を適用した場合、
譲渡益に対する課税を100%繰り延べることができる。
※等価交換方式とは開発者が建物を建築するのに必要な費用分の土地を、土地所有者が売却する方式です。詳しくはこちら
- 適用対象者は個人のみ
- 所有期間に制限なし
- 既成市街地等内またはこれに準ずる区域内※、中心市街地共同住宅供給事業の区域
- 土地(借地権、遊休地含む)、建物、構築物であれば良く、従前の用途は問わない。
- 買換資産は地上3階以上の耐火建築物(敷地含む)、建築物の床面積の2分の1以上がもっぱら居住用の建物であること。
- 買換資産の取得部分は、譲渡した年またはその翌年に取得し、取得の日から1年以内にその個人または生計親族の事業の用または居住の用に供すること(事業に至らない貸付も含む)。
※既成市街地等とは首都圏、近畿圏、中部圏にある一定の区域をいいます。
立体買換えの特例のメリット
- 譲渡益に対する課税を100%繰り延べられる
- 予算の準備なく事業を始められる
- 予算が要らないということは借入しなくていいので余計な金利がかからない
- 事業の準備をデベロッパー任せにできてラクチン
立体買換えの特例のデメリット
- 取得する建物の価額が、対応する土地の価額になるため、本来の建物の相場よりも低く見積もられやすい。そのため翌年度からの事業所得を控除する際の減価償却資産としての価値が低くなるため、翌年度からの税金が高くなる可能性がある。
- どの部分の土地を売却し、どの部分の建物を取得するか。単価はいくらで売買するか。交渉に時間がかかるため、事業開始まで時間が掛かる場合が多い
収用等による資産の譲渡に関する特例
公共事業の施行で伴う土地等の収用により、所有する土地建物を譲渡して補償金を取得した場合には、
「5,000万円の特別控除」または、
「代替資産を取得した場合の特例」
のいずれかを適用できる。
11.土地区画整理法・土地収用法で一部解説済みのものをなぞります。
5,000万円の特別控除
収用等で譲渡した資産の譲渡益から5,000万円までを控除できる。
- 売った土地建物は固定資産であること。
- その年に公共事業のために売った資産の全部について収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例を受けていないこと。
- 最初に買取り等の申出があった日から6か月以内に土地建物を売っていること。
- 公共事業の施行者から最初に買取り等の申し出を受けた者(その者の死亡に伴い相続又は遺贈により当該資産を取得した者を含みます。)が譲渡していること。
居住用財産を収容された場合、居住用の軽減税率の特例と併用できる。
代替資産を取得した場合の特例(100%課税繰延)
収用等により取得した補償金等で代替資産を取得した場合、譲渡した資産は譲渡がなかったものとされ課税繰延される。
補償金 ≦ 取得価額 → 譲渡が無かったものとされる。
補償金 > 取得価額 → 差額部分にのみ譲渡があったとされる。
適用要件
原則として収用等による対価補償金であるが、一定の要件を満たせば収益補償金(対価補償金がその建物の再取得価額に満たないとき)、経費補償金(そのまま廃業する場合の機材の処分など)等でも対価補償金とすることができる。
収用があった年の12月31日までに譲渡した資産と同種の資産を取得するか、または譲渡の日から2年以内に代替資産を取得する見込みでなくてはならない。 事業認定または買取りの申出後であれば、前年中に取得することもできる。
※事業認定とは都道府県知事が事業の公益性について判断すること
特例の計算
- 収入金額=対価補償金-譲渡費用-代替資産の取得価額
- 取得費=収用等による譲渡資産の取得費×(収入金額(①の答え)÷(対価補償金-譲渡費用))
- 譲渡益=①-②
優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例
売却した年の1月1日において、所有期間が5年を超える土地等を優良住宅地の造成等のために譲渡した場合には、分離課税の長期譲渡所得に対する税率が軽減されます。下記のとおり2段階で計算します。
⑴ 課税長期譲渡所得金額が2,000万円以下の部分
課税長期譲渡所得金額に対し、所得税10.21%(復興特別所得税2.1%含む)、住民税4%
⑵ 課税長期譲渡所得金額が2,000万円を超える部分
(課税長期譲渡所得金額-2,000万円)に対し、所得税15.315%(復興特別所得税2.1%含む)、住民税5%
土地の造成や開発等のために手放してあげた時に適用できる特例ですが、基本、他の特例との併用はできませんので注意です。
低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除
個人が低未利用土地を500万円以下(市街化区域・区域区分に関する都市計画が定められていない都市計画区域等は800万円以下)で売った場合に100万円控除することができる。売った年の1月1日で所有期間を5年越えていること、生計を一にする親族、内縁、特殊関係法人など特別な関係じゃないこと、売った土地について他の特例の適用を受けない事、前年、前々年に同じ特例を受けていない事、その後利用される事(コインパーク不可)などが条件となる。
それでは過去問を解いてみましょう。2021年9月試験 学科 問39
「固定資産の交換の場合の譲渡所得の特例」(以下、「本特例」という)の適用に関する次の記述のうち、適切なものはいくつあるか。なお、各ケースにおいて、ほかに必要とされる要件等はすべて満たしているものとする。また、AさんとBさんとは親族等の特殊な関係にないものとする。
- Aさんが、所有する建物(時価200万円)とその敷地たるX土地(時価1,800万円)を、Bさん所有のY土地(時価2,000万円)と交換した場合、AさんとBさんはいずれも土地の部分については本特例の適用が受けられ、建物の部分(時価200万円)については交換差金となり、Aさんは建物を200万円で譲渡し、BさんはY土地のうち200万円相当額を譲渡したとして、それぞれ譲渡所得の課税対象となる。
- Aさんが、X土地(Aさんの持分3分の1、Bさんの持分3分の2)のうちのAさんの持分3分の1(時価1,000万円)を、Bさん所有のY土地(時価1,000万円)と交換して、X土地をBさんの単独所有、Y土地をAさんの単独所有とした場合、AさんとBさんはいずれも本特例の適用が受けられる。
- Aさん所有の土地(時価2,000万円)とBさん所有の土地(時価2,000万円)を交換した場合において、Aさんが、交換により取得した土地を取得後、同一の用途に供することなく、直ちに売却したときは、AさんとBさんの双方が本特例の適用を受けることができなくなる。
- 1つ
- 2つ
- 3つ
- 0(なし)
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解答
2
1は、土地と土地ということで1,800万円と2,000万円が対象になります。差は高いほうから見て20%までOKなので可能です。適切。
2は、土地の共通持分についても可です。そして金額もOKなので適切です。
3は、Aさんが直ちに売却してます。するとAさんだけは適用を受けられなくなります。不適切。
よって正解は2つ。
その他の不動産の譲渡