不動産の取得と保有にかかる税金|FP1級Wiki
不動産取得税と登録免許税の税率などが重要です。各種税額軽減も覚えましょう。
不動産取得税
登記の有無を問わず、現実に土地や建物を取得した者に対し、都道府県が課税する。
公共的、公益的な目的の不動産の取得や、相続や法人の合併などのような形式的な移転の場合は非課税とされる。ただし、特定遺贈(相続人以外の者に財産を指定して残す)や死因贈与(死因贈与契約を結ぶ)は課税される。ちなみに借地権には課税されない。
不動産取得税額=固定資産税評価額※1×税率(土地3%、住宅用建物3%、非住宅用建物4%)※2
- ※1:居住用超高層建築物(高さ60m超で複数の階に住戸がある建築物)の専有部分の取得については専有部分の床面積を階層別専有床面積補正率により補正して全体の評価額を按分する。
- ※2:標準税率は原則4%だが、特例措置により土地と住宅は3%となる。
宅地および宅地比準土地(市街化区域内の農地、雑種地等で、宅地に類似する土地)について、特例措置期間中は取得した価格の2分の1が課税標準となる。
宅地評価土地を取得した場合の不動産取得税額=固定資産税評価額×2分の1×3%
住宅に関する特例
住宅(居住用やセカンドハウス用)を取得する場合、以下の通り固定資産税評価額から一定額控除した額を課税標準※にできる。
※税額を計算するときに、税率をかける対象金額のこと(例:税額=課税標準×税率)
新築住宅(自己居住用・貸家)の場合
床面積50㎡(戸建て以外の貸家は40㎡)~240㎡以下の新築、または未使用を取得した場合、固定資産税評価額から1,200万円※控除できる。
新築または未使用の不動産取得税額=(固定資産税評価額ー1,200万円※)×3%
※認定長期優良住宅は1,300万円になる。
中古住宅(自己居住用のみ)の場合
床面積50㎡~240㎡以下で、昭和57年1月1日以後に新築したもの、または新耐震基準等適合するもの※(建築年数問わず)のいずれかに該当すれば建築時期ごとに異なる控除額(100~1200万円)で固定資産税評価額を控除できる。
既存住宅の不動産取得税額=(固定資産税評価額-100万~1,200万円)×3%
※宅建業者が中古住宅を取得し基準を満たす一定の増改築をして取得から2年以内に個人(自宅用)に販売した場合も適用される。
住宅用地の税額軽減の特例
上記「住宅に関する特例」適用対象の住宅の敷地を以下の通りに取得した場合は、不動産取得税が減額される。
- 土地と特例適用住宅を取得した場合
- 土地を取得後3年以内に特例適用住宅を新築
- 特例適用住宅を新築または取得後1年以内にその土地を取得した場合
住宅用地を取得した場合の不動産取得税の税額=固定資産税評価額×2分の1×3%-軽減額
軽減額は、45,000円もしくは「1㎡当たりの評価額×2分の1×(延べ面積×2)※×3%」のいずれか大きいほう
※(延べ面積×2)は200㎡が限度
登録免許税
不動産を登記するときには国が課税する。表題部※の登記や国や地方公共団体が登記をする場合は非課税である。
※土地・建物に関する物理的状況を表示した表示登記が記載されている部分のこと。
登記権利者(買い主)と登記義務者(売り主)が共同で登記をする場合には連帯して納税の義務を負う。
※主にその登記で利益を受ける者(不動産を得る者)を登記権利者といい、不利益を受ける者(不動産を手放す者)を登記義務者という。ローンの完済時の抵当権抹消登記の場合は、不利益を受ける者は金融機関となるので登記義務者は金融機関となる。
登録免許税額=固定資産税評価額(抵当権設定登記は債権金額)×税率
各税率
1.土地の売買による所有権移転登記の税率の軽減
登記の種類 | 本則 | 軽減措置 |
---|---|---|
所有権移転の登記 | 2.0% | 1.5% |
2.住宅用家屋の所有権保存登記の税率の軽減
登記の種類 | 本則 | 軽減措置 |
---|---|---|
所有権保存の登記 | 0.4% | 0.15%※ |
3.住宅用家屋の所有権移転登記の税率の軽減
登記の種類 | 本則 | 軽減措置 |
---|---|---|
所有権移転の登記 | 2.0% | 0.3%(売買か競売に限る)※ |
4.住宅取得資金の貸付け等による抵当権設定登記の税率の軽減
登記の種類 | 本則 | 軽減措置 |
---|---|---|
抵当権設定の登記 | 0.4% | 0.1% |
※上記2~4までの軽減措置を受ける場合は①自己居住用②床面積50㎡以上③住宅取得後1年以内の登記が必要となります。中古住宅は新耐震基準適合に限る。
※個人が宅建業者により特定の増改築等が行われた一定の住宅用家屋を取得する場合、所有権の移転登記の税率が0.1%となる。
※土地を相続した者が所有権の移転登記を受けないまま死亡し、その者の相続人等が、2018年4月1日から2025年3月31日までの間に、その死亡した者を登記名義人とするための所有権移転登記は登録免許税は免税となる。
※個人が2025年3月31日までの間に、法務大臣が指定する市街化区域外の土地(100万円以下)について受ける相続による所有権移転登記は免税となる。
消費税
課税対象取引のうち、課税の対象としてなじみにくいものや、社会政策的配慮により課税することが適当でないものについては非課税としている。
譲渡・貸付 | 例外 | |
---|---|---|
土地 (借地権を含む) | 原則:非課税 (権利金収入も含む) | 駐車場施設(青空ではない) の賃貸収入は課税 |
建物 | 原則:課税 | 住宅の賃貸収入 は非課税 |
土地の譲渡は資本の移転に過ぎないという理由から非課税。建物の譲渡は消費税の対象だが、個人が自己の居住用建物を譲渡した場合には事業ではないため消費税の対象にならない。
印紙税
不動産売買契約書・建設工事請負契約書・金銭消費貸借契約書・領収書など、課税文書に対して国が課税するもの。
作成した書類のすべてに貼付して消印することで納付する(電磁的方法には不要)。
印紙を貼らなかったときや金額不足があったときは、納付しなかった分の印紙税と、その2倍相当額の合計3倍の過怠税が課される。また、貼ってあるが消印が無いという場合には貼付した印紙とは別に同額(1倍)の過怠税が課される。
固定資産税・都市計画税
不動産の所有者に対して市町村(23区は都)が課税する。
実は年度の途中で売却しても1年分の納税義務がある。しかし一般には売買取引慣行上、売主と買主が所有日数で日割りする契約が多い。ちなみに借地権者の場合、建物は自分のものなので当然課税されますが、土地には課税されません。また、公共の用に供している私道は原則、非課税となる。
固定資産税 | 都市計画税 | |
---|---|---|
課税対象 | 毎年1月1日現在、固定資産課税台帳に 登録されている土地・建物(未登記も含む)、 償却資産(棚卸資産となる土地、建物も課税対象) | 先のうち、原則 市街化区域内に ある土地・建物 |
納税義務者 | 毎年1月1日現在、 固定資産課税台帳に 所有者として登録 されている者。 | 左記と同じ |
税額 | 固定資産税評価額×1.4% (標準税率) | 固定資産税評価額×0.3% (制限税率) |
標準税率とは、通常はその税率にすべきとして定められている税率。しかし財政上の理由があるときは変更ができる。
制限税率とは、各市町村において税率を条例で定めているが、課税する場合にこれを超えてはいけないと定めた税率のこと。
課税標準(税率を乗じる対象となる価額)について、地目の変換、家屋の改築または損壊等の事情で金額が不適当と市町村長が認める場合には、類似した土地の価格に比準する。
課税標準の特例と税額軽減
住宅用地や新築住宅には軽減措置がある。
住宅用地の課税標準の軽減
居住用であればいいので自宅じゃなくてもOKです。賃貸アパートとか併用住宅も可能。
要件 | 軽減内容 |
---|---|
小規模住宅地※ (200㎡以下の部分) | 課税標準が6分の1になる (都市計画税は3分の1) |
一般住宅地※ (200㎡超の部分) | 課税標準が3分の1になる (都市計画税は3分の2) |
住宅用地として認められる範囲
専用住宅
居住部分の割合 | 住宅用地率 |
---|---|
全部 | 100% |
下記以外の下記以外の併用住宅
居住部分の割合 | 住宅用地率 |
---|---|
4分の1以上 2分の1未満 | 50% |
2分の1以上 | 100% |
地上5階建以上の耐火建築物である併用住宅
居住部分の割合 | 住宅用地率 |
---|---|
4分の1以上 2分の1未満 | 50% |
2分の1以上 4分の3未満 | 75% |
4分の3以上 | 100% |
新築住宅を建築した場合の固定資産税の軽減
新築住宅は、一定期間、固定資産税が軽減される。都市計画税は軽減されない。
- 住宅全体の床面積が50㎡(賃貸住宅は40㎡)以上280㎡以下であること。
- 床面積120㎡以下の部分の税額が2分の1に軽減される。
<減税期間>
通常 | 認定長期 優良住宅 | |
---|---|---|
新築の 一般住宅 | 翌年度から 3年度分 | 翌年度から 5年度分 |
新築の 中高層耐火住宅 (地上階数3以上) | 翌年度から 5年度分 | 翌年度から 7年度分 |
既存住宅の耐震改修に対する減額
1982年1月1日以前から存在していた住宅を、2022年3月31日までの間に、現行の耐震基準に適合した改修工事(国、地公体からの補助金を除く自己負担50万超)を施したものは、翌年度についてのみ1戸当たり120㎡相当分の固定資産税が2分の1(長期優良住宅は3分の2)減額される。
既存住宅のバリアフリー工事に対する減額
新築から10年が経過した住宅(50㎡以上280㎡以下、賃貸除く)で、①65歳以上、②介護保険の要介護認定を受けている者、③障害者である者、いずれかが居住する場合、2022年3月31日までにバリアフリー工事(国、地公体からの補助金を除く自己負担50万超)をすると、翌年度についてのみ100㎡相当分の固定資産税が3分の1減額される。
既存住宅の省エネ改修工事に対する減額
2008年1月1日以前から存在していた住宅を(50㎡以上、賃貸除く)、2022年3月31日までの間に一定の省エネ改修工事(国、地公体からの補助金を除く自己負担50万超)を施したものについては、工事完了の翌年度分に限り120㎡相当分の固定資産税が3分の1(長期優良住宅は3分の2)減額される。
外部:国土交通省
それでは過去問を解いてみましょう。2020年9月試験 学科 問38
5年前に父からの相続により借地権(定期借地権等ではない)と借地上の自宅家屋を取得したAさんは、2021年8月、借地権設定者から、その借地権の目的となっている宅地(底地)を買い取った。下記の〈条件〉に基づき、Aさんが買い取った宅地に係る不動産取得税の税額として、次のうち最も適切なものはどれか。なお、記載のない事項については考慮しないものとする。
〈条件〉
- 買い取った宅地(底地)の取得価額は、6,000万円である。
- 買い取った宅地の固定資産税評価額は、8,000万円である。
- 相続により取得した借地権の価額の評価上、借地権割合は70%である。
- 不動産取得税の税率は、標準税率とする。
- 27万円
- 36万円
- 90万円
- 120万円
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解答
4
まず、計算の基礎となるのは取得額ではなく固定資産税評価額。
土地の取得は宅地なら固定資産税評価額は2分の1評価となり、税率は土地3%。
8,000万円÷2×3%=120万円
正解は4番となります。
ちなみに借地権についてなんですが、今回どうして絡んでこないかと言うと、借地権と言うのは土地の取得ではないんですね。
「土地の上に住まう権利」なので、この方は借地権は持ってますが、当然借地権を手にした段階では土地に対して不動産取得税は発生してないんですよ。
で、今回ついに土地のすべてを取得したわけなんで、土地全体の不動産取得税を支払う訳です。