土地の有効活用手法|FP1級Wiki

土地の運用方法については手段がたくさんあるため非常に苦しみますが、その後の実技試験でも必要な知識となってきますので、将来を見通す気持ちをもって頑張って学習していきましょう。等価交換方式は特に重要になってくると思います。基礎編での出題は最近少ないです。

       

自己建設方式

自己建設方式は、調査・企画から資金調達、建築設計の発注、建物の管理運営などすべての作業と事務を自分で行う賃貸事業運営の方式のこと。

利益はすべて自分のものになるが、業務負担が大きい。
自己の力量でコントロールできる範囲で運用する必要があるので、テナント募集の仲介業務や点検清掃などのメンテナンス業務は外注を検討するほうが良いかもしれない。

自己建設方式のメリット

  • 収益のすべてが享受できる
  • 借入金を導入した場合、自身が相続になった場合、遺産総額から債務控除できる
  • 借入金の利子は賃貸事業において経費にできる
  • 等価交換方式と違い、建物部分を減価償却費で経費にできる
  • 相続発生時に土地を貸家建付地にでき、自用地に比べ20%前後引き下げることができる
  • 小規模宅地の評価減を使って200㎡までの相続税評価額を50%にできる
  • 賃貸の建物は相続税評価上、貸家にでき、借家権割合30%を控除できる
  • 土地信託方式のように土地建物名義を受託者名義に移す必要がない
       

事業受託方式

事業受託方式は、調査・企画、建設計画、資金計画までいっさいの業務をデベロッパー(開発業者)が請け負い、さらに所有者の希望によってはデベロッパーが完成後の建物の管理運営を行う。
土地の所有者が、事業受託者に一括賃貸し、事業受託者は転貸という形でテナントに貸す。それにより地主としては、管理運営の面倒がなくなる。
ただし資金調達は土地所有者が行うため、返済義務は当然土地所有者となる。

事業受託方式のメリット

  • 借入金を導入した場合、自身が相続になった場合、遺産総額から債務控除できる
  • 借入金の利子は賃貸事業において経費にできる
  • 等価交換方式と違い、建物部分を減価償却費で経費にできる
  • 相続発生時に土地を貸家建付地にでき、自用地に比べ20%前後引き下げることができる
  • 小規模宅地の評価減を使って200㎡までの相続税評価額を50%にできる
  • 賃貸の建物は相続税評価上、貸家にでき、借家権割合30%を控除できる
  • 土地信託方式のように土地建物名義を受託者名義に移す必要がない

上記の項目は自己資金方式と重なる部分のメリットとなる。
そのほか、事業受託者が一括借り上げし、テナントへ転貸するので収益を安定化させる効果が見込める。

       

土地信託方式

信託法に定められた信託制度を利用して、信託銀行等の受託者が土地所有者に代わって土地を有効利用するのが土地信託方式です。
受託者が資金調達から建築、テナント募集、維持管理、分譲などを行い、運用成果を信託配当として土地所有者に交付するというものです。
受託者は直接損失補填や利益の補足をすることは禁じられているので、信託配当はあくまでも運用実績による。
賃貸型と分譲型とがあり、賃貸型の配当は不動産所得となる。

土地信託方式のメリット

信託契約期間中は、信託銀行等の受託者名義で行われるが、信託期間が終了すると土地建物の名義は土地所有者に戻る。また、税務上も信託財産は受益者が保有するものとし、その財産に帰す収益や費用も受益者のものとみなされるので、実質的には土地保有型の有効活用方式となっている。

等価交換方式

等価交換方式とは、土地所有者等(借地権者も)とデベロッパー(事業者)が共同して、マンションやビル等を建設する方式。内容としては土地の評価額と建設費の合計を総事業費として、建物の一部と敷地の共有持ち分を取得する一種の共同作業となる。土地所有者は土地の一部や全部を処分して、建物の一部(例えばマンションならいくつかの部屋)を手に入れ、デベロッパーは建物の残りと土地の共同持ち分を手に入れます。それにより土地所有者は事業資金を必要とせず、リスクが少ないので採算性は極めて良い。共同事業により土地の有効活用についてのノウハウが無くても効率的にさまざまな建設が可能になるのもメリット。

等価交換方式には部分譲渡方式全部譲渡方式がある。
部分譲渡は土地の一部を譲渡し、建物のみ新規取得、土地の取得時期はそのまま。
全部譲渡方式は一度土地の全部を譲渡し、土地建物ともに新規取得する。
税務上の優位性や手続きの簡便さなどから一般には部分譲渡方式が主流であるが、
複数の地権者が参加する等価交換では全部譲渡方式が用いられることが多い。

       

土地所有者の取得する建物の床面積

等価交換で、土地所有者側が取得する建物の床面積を求める方法は、これまた2種類ある。

原価積上方式

土地評価額と建設費を合計した総事業費のうち、土地評価額の割合に応じた床面積を土地所有者等に還元する方法。

<例>土地評価額3億円 建設費3億円 床面積 3,000㎡

還元床面積=3,000㎡×(3億円÷(3億円+3億円))=1,500㎡

市場性比較方式

デベロッパーが事業計画上、最低限確保したい粗利益率や販売可能単価をもとに、デベロッパーが必要とする床面積を計算し、その残りを土地所有者等に還元する方法。

<例>・専有部分の床面積 2,000㎡ ・デベロッパーの建設費用 6億円
・必要販売額 建設費÷(1-粗利益20%)
・必要専有面積  必要販売額÷販売可能単価625,000円/㎡

必要販売額=6億円÷(1-20%)=7億5,000万円

必要専有面積=7億5,000万円÷62万5,000円/㎡=1,200㎡

土地所有者の取得する専有部分の面積=2,000㎡-1,200㎡=800㎡

       

等価交換方式のメリット

  • 自己資金・借入資金が不要で、効率的に高収益な建物を取得できる。
  • 土地の一部持分譲渡に伴う譲渡所得税については、等価交換にかかる買換えの特例を適用することで課税繰り延べができる。
  • デベロッパーに管理運営を委託できる。
  • 相続発生時には土地を貸家建付地として自用地価額から20%前後引下げできる。
  • 小規模宅地の評価減の特例(貸付事業用宅地用)を利用して200㎡までの部分を50%引き下げできる。
  • 賃貸してる建物は相続税評価を貸家にできるので工程資産税評価額から借家権割合分(30%)相当額を控除できる。
  • 一部を現金での等価交換も可能なので現金をもらって、抵当権抹消のための借入金の一括返済、借家人の立退料等も支払うことができる。

等価交換方式で利用される課税の特例

それぞれ適用要件は異なるが、事業の条件によって「特定事業用資産の買換えの特例」や「既成市街地等内における中高層耐火建築物建設の特例」を利用することができる。それにより譲渡益を、特定事業用資産の買換えの特例ならおおむね80%、既成市街地等内における中高層耐火建築物建設の特例なら100%繰延が可能になる。

       

定期借地権方式

定期借地権は3種類あり、詳しくは05.借地借家法を参照願いたい。ここでは有効活用法について解説する。

定期借地権方式のニーズ

定期借地権方式は、土地を一定期間貸し付けて収益を上げる方法である。主として以下のニーズが想定される。

  • 当面利用する予定のない土地がある。
  • 土地を手放す気はない
  • 有効活用に借金や事業リスクを求めない
  • 土地活用のノウハウがない
  • 事業に興味はない
  • 固定資産税など土地保有によるコスト負担に悩んでいる
  • 初年度から安定収益を得たい

普通借地権方式と定期借地権方式の違い

普通借地権方式定期借地権方式
収益権利金、地代
権利金は返還不要
補償金等の運用収入、地代
補償金は通常返還が必要
地代高い安い
相続税評価の引下げ効果大きい(貸宅地の評価額は低い)小さい(貸宅地の評価額は高い)
借地契約の残存期間と
相続税評価額の関係
期間の経過による貸宅地(底地)の評価額の変化はない
地価相場変動により評価額は変動する
貸宅地(底地)の評価額は期間の経過に伴い高くなる。
地価相場変動により評価額は変動する
更新ありなし
       

定期借地権の一時金の税務

定期借地権の設定時の方法で3つあります。

借地人(支払者)地主(受取者)
一括前払(前受)地代前払費用として資産計上し、
期間経過に応じて損金または必要経費
(個人借地人の居住用等は家事費)
前受収益として負債計上し、
期間経過に応じて益金または
収入金額になる。
権利金
(権利金は返還不要)
権利金として資産計上し、
契約終了時に全額特別損失扱い
(期間経過に応じて損金または必要
経費にはできず、減価償却もできない)
一時に課税
(法人地主は益金。個人地主は、
地価の2分の1超の権利金は譲渡所得、
2分の1以下の権利金は
不動産所得の総収入金額)
保証金
(契約終了時に返還要)
保証金として資産計上し、
契約終了時に返還される
(長期間資金を寝かせることになり、
長期にわたり貸し倒れリスクを負う)
保証金として負債計上し、
契約終了時に返還する
(運用状況により経済的利益に課税され、
長期間にわたり補償金の返還債務を負う)

共同開発

土地の有効活用は、土地が小さすぎると利用効率が悪いし、土地の形状についても重要で、
それらの土地を有効利用するためには周辺の隣接地と併合してひとつの大きな整形地とし、
一体的に利用する共同開発が合理的となってくる。

複数の複数の地権者が土地を共有にして、その土地に共有建物を所有する共有型や、
土地は各所有のままにして、共有で建物を所有する分有型がなどがある。

       

建設協力金方式

建設金協力方式は、建物に入居するテナントから建築費相当額の一部または全部(過半は超えたほうがメリットがある)を借り受けてそのテナントが望む 建物を建設し賃貸する方式である。実際には郊外レストランや量販店をキーテナントにしている施設に多い。

建設金協力方式であれば、テナント側が望んで地権者に接触してくることも多く、銀行融資に比べ有利な条件で融資を受けられるため金利コスト面でメリットがある。テナント側は希望どおりの店舗建物や立地を手に入れることができる。

テナントが撤退した場合に借入金の返済義務を免除する特約をつけるのが一般的です。

建設協力金方式のメリット

  • 建設前からテナントが確定しているので安全性が高い
  • 資金調達で銀行と折衝する必要が無く、実現性が高い
  • 事業化に伴う作業をテナント側が取り仕切ってくれるため、手間がない
  • テナント側が望むケースが多いため、好条件になりやすい
  • 自身の相続発生時には貸家&貸家建付地の評価が受けられる
  • 建設協力金残債務は債務控除の対象になる

各手法の特性

自己建設方式事業受託方式等価交換方式土地信託方式定期借地権方式
事業推進者土地所有者デベロッパーデベロッパー信託銀行デベロッパー
土地権利そのまま
所有者
そのまま
所有者
土地所有者と
デベロッパー
信託中は
形式的に銀行
信託終了後は
土地所有者
そのまま
所有者
建物権利土地所有者土地所有者土地所有者と
デベロッパー
信託中は
形式的に銀行
信託終了後は
土地所有者
借地中は
借地権者
事業資金の調達土地所有者土地所有者不要信託銀行
(責任は所有者)
不要
建物の管理・運営土地所有者デベロッパー区分所有者
共有部分は
デベロッパー
信託銀行借地権者
事業の安定性借入金が
ある場合は
稼働率が
悪いと苦しい
賃料保証が
つくと安定
借入金が
ないので
安定する
信託配当が
実績比なので
稼働率で
変動する
借入金が
ないので
安定する

外部リンク:国土交通省

       

この項目では過去問チャレンジはありません。

Wiki技能士

等価交換を問われる事が多いです。
それぞれ手法に特徴がありますので、
メリットデメリットを確認しておきましょう。

土地の有効活用手法