損害保険の経理処理(法人)|FP1級Wiki

法人として契約する傷害保険、火災保険、自動車保険の経理処理についての解説です。
圧縮記帳については出題頻度が高いので、しっかり学習しましょう。

法人等が契約者の傷害保険

契約形態が「被保険者:役員、従業員 受取人:役員、従業員、その遺族」の場合

法人等の経理個人事業主法人
保険料支払時積立保険料:資産計上(積立保険料)
掛捨保険料:必要経費(福利厚生費)
掛捨保険料の未経過分は前払保険料として資産計上
積立保険料:資産計上(積立保険料)
掛捨保険料:損金算入(福利厚生費)
掛捨保険料の未経過分は前払保険料として資産計上
保険金受取時死亡保険金・傷害保険金
特に経理処理なし
契約終了時に資産計上分は取り崩して必要経費に算入
死亡保険金・傷害保険金
特に経理処理なし
契約終了時に資産計上分は取り崩して損金算入
  • 特定の役員や従業員のみを対象とする場合は、給与として必要経費(損金)に計上する(給与の一部なので役員たちは所得税の対象になる)
  • 遺族が受け取る死亡保険金は、役員や従業員が保険料を負担していたとしてみなし相続財産となる。
  • 遺族が受け取る傷害保険金は、金額にかかわらず非課税になる。

契約形態が「被保険者:役員、従業員 受取人:個人事業主や法人」の場合

保険料支払い時は上記パターンと同じだが、保険金受取時が変わってくる。
法人等の経理個人事業主法人
保険料支払時積立保険料:資産計上(積立保険料)
掛捨保険料必要経費(支払保険料)
掛捨保険料の未経過分は前払保険料として資産計上
積立保険料:資産計上(積立保険料)
掛捨保険料損金算入(支払保険料)
掛捨保険料の未経過分は前払保険料として資産計上
保険金受取時死亡保険金・傷害保険金
事業収入に算入
契約終了時に資産計上分は取り崩して必要経費に算入
死亡保険金・傷害保険金
益金算入
契約終了時に資産計上分は取り崩して損金算入
  • 受け取った保険金を遺族へ死亡退職金・弔慰金として支払えば原則、必要経費(損金)になる
  • 法人等が傷害保険金を役員・従業員へ見舞金として支払えば原則、必要経費(損金)に計上する。過大な部分は賞与になる。

事業用建物の火災保険

法人等の経理個人事業主法人
保険料支払時積立保険料:資産計上(積立保険料)
掛捨保険料必要経費(支払保険料)
掛捨保険料の未経過分は前払保険料として資産計上
積立保険料:資産計上(積立保険料)
掛捨保険料損金算入(支払保険料)
掛捨保険料の未経過分は前払保険料として資産計上
保険金受取時建物の損害保険金原則非課税
棚卸資産の損害保険金事業収入に算入(損失は必要経費)
休業損失の損害保険金事業収入に算入
※契約終了時に資産計上分を取崩し、必要経費
建物の損害保険金益金算入
※損失額や関連費用は損金算入
保険差益は課税対象となるが圧縮記帳が可能
棚卸資産の損害保険金益金算入(損失は必要経費)
休業損失の損害保険金益金算入
※ 契約終了時に資産計上分を取崩し、必要経費

事業用自動車の自動車保険

法人等の経理個人事業主法人
保険料支払時積立保険料:資産計上(積立保険料)
掛捨保険料必要経費(支払保険料)
※掛捨保険料の未経過分は前払保険料として資産計上
積立保険料:資産計上(積立保険料)
掛捨保険料損金算入(支払保険料)
※掛捨保険料の未経過分は前払保険料として資産計上
保険金受取時車両保険
事業収入に算入(修繕は経費、廃車は非課税)
賠償保険課税なし
搭乗者傷害・自損事故・人身傷害補償保険
傷害保険と同様
車両保険
益金算入(修繕費は損金。保険差益は圧縮記帳可)
賠償保険課税なし
搭乗者傷害・自損事故・人身傷害補償保険
傷害保険と同様

満期返戻金・解約返戻金を受け取った場合

  • 個人事業主一時所得(一時所得算出の際に差し引けるのは資産計上している積立保険料分のみ)
  • 法人益金算入(配当金なども含め全額)資産計上している積立保険料を取り崩して損金算入

圧縮記帳について

法人が保険金により代替資産を取得するか当該資産の改良をした場合、代替資産等の取得価額を減少させる(帳簿価額の圧縮)ことで、減少させた分を損金算入し保険差益の課税価格を縮小させる経理処理のこと。

取得価額の減少は、次期以降の代替資産の減価償却費の減少を伴うため、課税所得の上昇要因となる。
つまり結果的に圧縮記帳はあくまでも課税を翌年以降に繰り延べているだけで、免除される訳ではない。

適用要件など

  • 代替資産に充当する保険金は、滅失資産の滅失や損壊のあった日から3年以内に確定した保険金であること。
  • 保険金の支払年度に代替資産を取得できない場合、原則2年以内に取得見込みであること。
  • 逆に代替資産を先行取得した場合(保険金より先に買っちゃった)も適用対象になる(保険金額が確定した日の属する事業年度に適用できる)。
  • 圧縮記帳の対象資産は建物や機械等の固定資産に係る保険金を受け取り、所定期間内に代替固定資産を取得等する場合である。滅失資産と代替資産の用途が異なっていても、同一種類に区分される固定資産(工場→倉庫とか)であれば圧縮記帳の対象になる。
  • 棚卸資産(商品在庫など)、その他の保険金は対象にならない。
  • 事故発生前にすでに建設中の固定資産は対象にならない。
  • 個人事業主が受け取る「固定資産に関する保険金」は非課税のため、圧縮記帳は認められない

圧縮限度額

保険差益=保険金-損失資産の帳簿価額-支出費用※

圧縮限度額=保険差益×[代替資産の取得に充てた金額(分母の金額が限度)÷(保険金-支出費用※)]

※支出費用は損失に直接かかわる費用(整理費、片付け費用)のみで、見舞金などは含まれない

参考:国税庁No.5608 保険金等で取得した固定資産等の圧縮記帳

それでは過去問を解いてみましょう。2019年1月試験 学科 問15

X株式会社(以下、「X社」という)の工場建物が火災により全焼し、後日、X社は、契約している損害保険会社から保険金を受け取り、当該保険金を受け取った事業年度中に工場建物を新築した。下記の〈資料〉を基に、保険金で取得した固定資産の圧縮記帳をする場合の圧縮限度額として、次のうち最も適切なものはどれか。
なお、各損害保険の契約者(=保険料負担者)・被保険者・保険金受取人は、いずれもX社とする。また、記載のない事項については考慮しないものとする。

〈資料〉

  • 滅失した工場建物の帳簿価額:2,500万円
  • 工場建物の滅失によりX社が支出した経費
     焼跡の整理費(片づけ費用):500万円
     けが人への見舞金:300万円
  • 損害保険会社からの受取保険金
     火災保険(保険の対象:工場建物)の保険金:5,000万円
     企業費用・利益総合保険の保険金:2,000万円
  • 新築した代替建物(工場建物)の取得価額:5,400万円
  1. 1,700万円
  2. 2,000万円
  3. 2,400万円
  4. 4,000万円

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解答

これは圧縮限度額の問題です。
当テキストの圧縮限度額の項目にある式に当てはめます。

保険差益を求めます。費用にできるのは今回片付け費の500万円です。
5,000万円-2,500万円-500万円=2,000万円

保険差益が出ました。
次は保険金の5,000万ですが、代替資産が5,400万円したので全額充てています。
このまま5,000万円で式に算入します。

2,000万円×(5,000万円(分母の金額が限度)÷(5,000万円-500万円))
=2,000万円×(4,500万円÷4,500万円)
=2,000万円×1=2,000万円

となります。
Wiki技能士

圧縮記帳の計算は保険金を代替資産に当てるという部分がポイントです。
どこまでを費用に含めるかですね。しっかり覚えましょう。

タグ:損害保険の経理処理