応用編対策特化:年金試算 | FP1級Wiki
将来もらえる年金がいくらかを試算する問題です。
出題パターンは、
老後にいくらもらえるかという「老後の年金相談」と、
死んだらいくらもらえるかという「遺族年金相談」。
ほぼこの2パターンですが、最近になって「障害年金相談」が出題されました。
ちなみに年金額ですが、翌年5月試験までは前年度の年金額で出題されます。ご注意を。
1.老後の年金相談編
基礎部分(国民年金部分)
老齢給付の令和5年度の新規裁定者の満額は816,000円です(新規裁定者)。既裁定者は813,700円です。
覚え方は「入ろう、ハイみんな!」です。
20~60歳までの掛け月で計算されますので、
式は、
816,000円×(掛月÷480)=年金額
になります。
付加年金
付加年金がある場合は、200円×付加年金掛月で計算して年金額に加算します。
年金繰上げ繰下げ請求
付加年金合計後、本来の受給開始年齢の誕生日前日がある月を基準月(0月)として前後1ヵ月単位で年金額が増減します(仮に12ヶ月前に請求するなら▲4.8%)。
繰上げ:1ヶ月あたり 0.4%減(最大60月)
繰下げ:1ヵ月あたり 0.7%増(最大120月)
免除期間
加入月数に免除期間がある場合は(07.公的年金制度)年金額の項目を参照してください。
(全額免除の場合、2009年3月以前は3分の1、同年4月以降は2分の1で計算)
2階部分(厚生年金部分)
計算式は、総報酬制導入前と導入後を足して求めます。標準報酬月額や乗率については出題者から与えられます。何度か過去問をやればすぐに身につく程度の計算式といえます。
繰上げ繰下げは基礎部分と同様の仕組みです。ただし、特別支給はその開始年齢が基準月となり基礎部分と率が変わります(65歳開始じゃないから)。そして特別支給は繰下げで増額しません。
① 総報酬制導入前の期間分
平均標準報酬月額×乗率×総報酬制導入前の被保険者期間の月数
② 総報酬制導入後の期間分
平均標準報酬額×乗率×総報酬制導入後の被保険者期間の月数
①+②=厚生年金
経過的加算
経過的加算を求める問題がたまに出ます。経過的加算もいっしょに繰上げ繰下げできます。
式は与えられるのですが、厚生年金の加入期間での計算ですので極端に少ない金額の答えになることもあります。不安になり、間違えて国民年金の加入期間で計算しなおさないように注意しましょう。
〇〇円×被保険者期間の月数(480上限)-□□□円×(20歳以上60歳未満の厚生年金保険の被保険者期間の月数÷(加入可能年数×12))
〇〇円の金額は与えられます。□□□円は伏せられますが基礎年金の満額の金額です。
加給年金
加給年金で悩んでハズす事が非常に多いです。
金額は問題に出ているので何も計算する必要はなく、要は「足すか足さないか」。
条件を覚える必要があります。ここは暗記でいきましょう。
また、加給年金は厚生年金を繰上げしても早くもらえないし繰下げするとその期間もらえなくて増えもしません。
- 厚生年金の被保険者期間が20年以上あること
- 定額部分の支給がある人(1961年4月1日生まで)はその年齢から加算。 他は65歳から加算。
配偶者 | ・65歳未満であること(65歳になると自分の年金が始まるから) ・配偶者自身が20年以上の厚生年金を受け取っていないこと。あるいは障害年金。 |
---|---|
子 | ・18歳の年度までの子 ・20歳未満の障害1~2級の子 |
生計維持 | 将来5年以上にわたって年収850万円以上にならないこと |
2.遺族年金相談編
遺族基礎年金
18歳未満の子(もしくは20歳未満の障害1~2級の子)がいる妻、または子に支給されます。
遺族年金の場合は生存の場合と違い全額支給です。816,000円。68歳以上の既裁定者(すでにもらってる人)だと813,700円になります。念のため抑えましょう。
こどもの人数に応じて子の加算があります(この額は新規も既裁定もいっしょです)。
(18歳の年度までの子もしくは20歳未満の障害1~2級の子)
令和6年度 | 年金額 |
---|---|
配偶者 | 816,000円(既裁定813,700円) |
子の加算1人目 | +234,800円 |
子の加算2人目 | +234,800円 |
子の加算3人目以降 | +78,300円 |
2階部分(遺族厚生年金)
遺族厚生年金のポイント
- 遺族厚生年金は通常の老齢厚生年金の3/4になります。
- 退職者は長期要件※に該当しないとそもそも出ません(細かい要件はここでは省きます)。
- 働いてすぐに亡くなった人のためにみなし300月があります(短期要件※の人のみ)。
※短期要件と長期要件
短期要件は厚生年金に加入中の人。長期要件は国民年金+厚生年金の合計が25年以上の人を指します。
計算式
老後の年金編同様、総報酬制導入前と導入後を足して求めます。標準報酬月額や乗率については出題者から与えられます。
- ① 総報酬制導入前の期間分平均標準報酬月額×乗率×総報酬制導入前の被保険者期間の月数
- ② 総報酬制導入後の期間分平均標準報酬額×乗率×総報酬制導入後の被保険者期間の月数
①+②×3/4=年金額
現在加入中の人で掛月300月以上にならないうちに死んでしまった人は「みなし300月」が与えられます。
①+②×3/4×300/掛月=年金額
中高齢寡婦加算
中高齢寡婦加算を足すかどうかがいつも悩むところです。条件をしっかり頭に入れておきましょう。
支給額は式に与えられるのでここでは紹介しません。
- 短期要件と長期要件(条件付き)が対象になる※
- 子のない妻に支給される。
- 発生当時の妻の年齢が40~65歳未満である。
※短期要件は厚生年金に加入中の人。長期要件に該当し、さらに20年以上厚生年金加入後に脱退した人を指します
(ここでの20年は厚生年金だけの期間で20年必要です!!)
要は、基礎年金がもらえない奥さんが自分自身の年金をもらうまでの救済的な加算ということです。
補足:妻も年金がある場合
妻も厚生年金受給者の場合、自身の厚生年金と
「遺族厚生年金の2/3+自身の老齢厚生年金の1/2」を比較してその差額を受給します。
応用編で出題される可能性は低いと思っていましたが2024年ついに出題されました!
3.障害年金相談編
相談者が障害を負ってしまったケース。家族がいる場合、配偶者は障害厚生年金に、子どもは障害基礎年金に加算される点に注意が必要です。
障害基礎年金
基礎年金の支給額は以下のとおり。障害等級2級までが対象です。
- 1級:老齢基礎年金の満額×1.25倍
- 2級:老齢基礎年金の満額
子の加算
生計維持されている子がいると加算。子とは18歳になった後の最初の3月31日までの子、または20歳未満で障害等級1級または2級の子です。
加算額
2人目まで | 1人につき234,800円 |
3人目以降 | 1人につき78,300円 |
障害厚生年金
厚生年金の支給額は以下のとおり。こちらは3級まで対象になるので注意です。
- 1級:2級の1.25倍
- 2級:老齢厚生年金の報酬比例部分の計算で算出した金額(300月未満の場合は300月で計算)
- 3級:2級と同条件
・配偶者加給年金
所得要件850万円未満かつ65歳未満の配偶者がいる場合、65歳に達するまで支給される。ただし、支給対象は1級と2級のみ。3級には支給されないので注意。
配偶者加給年金額
R6年度支給額 | 234,800円 |
障害補償年金(労災保険)
障害原因が業務中であるなら障害等級1~7級に該当すると支給されます。賃金を基に計算した給付基礎日額(試験では与えられます)×日数で支払われます。例として1~3級を掲載します。
1級 | 2級 | 3級 |
313日 | 277日 | 245日 |
・併給調整
障害補償年金は併給調整が入ります。前段で計算した給付基礎日額×日数に対して、調整率を掛けて減じます。調整率の数値は試験では与えられます。
例:給付基礎日額×支給日数×調整率=調整後給付額
年金生活者支援給付金
老齢年金、遺族年金、障害年金とがあり、障害1級のみ金額が高くなります。指示があったときのみ計算しましょう。
5,310円(R6月額)×12カ月(障害1級は6,638円×12ヶ月)となります。
まとめ
基本形式は何度も繰り返して学習していけば自然と覚えます。昨今、繰上げ支給の問題が出たり障害年金の問題がでたりと対応が難しくなりました。特に気をつけてもらいたい点は、老後の年金相談編の加給年金と年金繰上げ繰下げ、遺族年金相談編の中高齢寡婦加算です。この3点は条件を暗記して臨む必要があるでしょう。
2024年09月21日