損金|FP1級Wiki

応用編の略式別表四で益金・損金が出てきます。益金は不算入額の計算。損金は算入不算入をしっかり覚えましょう。とにかく最短で点数が出せれば良いという方は応用編対策の05.略式別表(四)(法人税の計算)をご覧ください。

       

減価償却

計算方法などは基本的には個人の所得税と同じ。次表の②~⑤の部分は損金経理が要件となっていて、申告調整は認められない。
損金経理とは、会計上の決算において損金経理することをいう。
申告調整とは、税務上の所得を算出するために減算をすること。

内容所得税法人税
①有形固定資産の法定償却方法※¹定額法定率法
②通常の減価償却費の取扱い計算した金額を必要経費
に算入する(強制償却)
・限度額以下であればよい(任意償却)
・償却不足額の翌期上乗せはできない
(特別償却を除く)
③少額の減価償却資産
(使用可能期間1年未満
または取得価額10万円未満)※³
全額必要経費に
算入する(強制償却)
全額損金or3年一括償却or通常の償却
のいずれかを選択(任意償却)
④青色申告者で資本金
1億円以下の中小企業者の③※² ³
全額損金(取得価額30万円未満
年間300万円限度)
通常の償却のいずれかを選択
左に同じ
⑤一括償却資産(取得価額20万円未満)※³3年一括償却・通常の償却
いずれかを選択
左に同じ
       

※¹ 1998年4月1日以後取得の建物および、2016年4月1日以後取得の建物付属設備と構築物定額法となる。
※² 従業員数が中小企業は500名、出資金1億超の組合等で300名を超える法人はのぞく
※³ 貸付(主要な事業として行われるもの以外)の用に供した資産は除外。

定率法は、耐用年数に応じた定額法の償却率を200%にすることができ、前半期間を大きく償却できる。200%定率法と呼ばれる。
減価償却の歴史:H18年度まで取得→旧定額法・旧定率法、H23年度まで取得→定額法・250%定率法、H24年度以降に取得→定額法・200%定率法

中古資産の減価償却

 中古資産は、資本的支出(改良・改造費)が新品価格の50%を超えなければ、事業に供した以後の使用可能期間として年数を見積もることができる(短期間で償却できる)。方法には見積法(原則)と簡便法がある。
 改造し過ぎたら中古とは認めませんってことですね。

       

交際費

1人当たり1万円以下の得意先等との一定の飲食費は、交際費から除かれる。

交際費等の損金算入限度額

期末資本金2027年3月31日までの間に開始する事業年度
1億円以下※下記①か②のいずれか多い金額
(支出交際費のほうが少ない場合には支出交際費の額)

①接待飲食費(社内接待費をのぞく)×50%
②年間800万円
1億円超
100億円以下
接待飲食費(社内接待費をのぞく)×50%
100億円超全額損金不算入

※ 資本金5億円以上の大法人の100%子会社等をのぞく

       

給与

役員の範囲

法人税法上の役員(原則)

法人の取締役・執行役・会計参与・監査役・理事・監事・清算人・その他使用人以外で経営に従事している者

同族会社の場合(みなし役員)形式上使用人でも法人税法上役員とされ、使用人兼務役員の取扱いも受けられない場合

会社経営に従事している者のうち、特定株主に該当している者

特定株主とは、

  1. 持株割合が50%に達するまでの上位3位以内の株主グループに属している
  2. その人が属する株主グループの持株割合が10%を超えていること
  3. 本人と配偶者および所有割合50%超の関係会社の持株を合算し、持株割合が5%を超えていること

※持株割合は、議決権等も判定の基準に含める

       

役員給与

損金算入と損金不算入

役員給与のうち業績連動給与に該当しない退職給与、使用人兼務役員給与のうち使用人としての職務に対するものは、原則として損金の額に算入される。また、これら以外の役員給与のうち、次の定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与のいずれかに該当する場合は、損金算入される。なお、これらの給与に該当した場合でも、法人が事実を隠蔽、または仮装して経理することにより役員に対して支給する給与や、不相当に高額な部分の金額は損金不算入となる。

定期同額給与

支給時期が1ヶ月以下の一定の期間ごとである定期給与のことで、その事業年度の各支給時期における支給額または支給額から源泉税額等の額のを控除した手取り額が同額であるものをいう。事前届出は必要なく損金算入が認められる。

事業年度の途中で定期給与の改定があった場合は、以下のいずれかに該当するものであれば定期同額給与として損金算入が認められる。

  • その事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3ヵ月以内に継続して毎年所定の時期に改定がされた場合
  • 臨時改定事由(役員の職制上の地位の変更、職務内容の重大な変更その他これに類するやむを得ない事情)により給与が改定された場合で、その改定前の支給時期における支給額が同額で、改定以後の各支給時期における支給額が同額の場合
  • 経営状態が著しく悪化したこと等の理由による改定で、減額した場合は、事業年度開始の日から3ヵ月以内でなくても、その改定前の各支給時期における支給額が同額で、改定以後の各支給時期における各支給時期における支給額が同額であること

上記に該当しない改定の場合、支給額すべてが損金不算入になるのではなく、以下の取り扱いになる。

増額改定改定後の増額部分のみ損金不算入となる
減額改定改定前の定期給与のうち改定後の金額を超える部分のみ損金不算入となる
       

事前確定届出給与

事前確定届出給与とは、その役員の職務につき、①所定の時期に確定した額の金銭、②確定した数の株式等、新株予約権、③確定した額の金銭債権に係る特定譲渡制限付株式等を交付する旨の定めに基づいて支給される一定要件を満たす給与で、定期同額給与および業績連動給与のいずれにも該当しないものをいう。

事前確定届出給与は、一定の場合等をのぞき、届出期限までに、所定の事項を記載した事前確定届出給与に関する届出書を提出しなければならない。
届け出た支給金額と実際の支給額が異なる場合、事前確定届出給与に該当せず、増額支給・減額支給ともに、実際に支給した全額が損金不算入となる。

業績連動給与

業績連動給与とは、利益の状況を示す指標、株式の市場価格の状況を示す指標またはその法人との間に支配関係がある法人の業績を示す指標等を基礎として算定される金銭または株式等による給与をいう。
業績連動給与は、法人(同族会社の場合は同族会社以外の法人との間にその法人による完全支配関係があるものに限る)が、業務執行役員に対して支給する業績連動給与で、損金経理をしているなど一定の要件を満たすものに限り損金の額に算入される。

       

使用人兼務役員賞与

役員のうち部長、課長その他その法人の使用人としての職制上の地位を持ち、かつ、常時従業員としての職務に従事している者で、一定の要件を満たす者を使用人兼務役員という。使用人兼務役員に支給した賞与のうち、使用人分については、次のすべての要件を満たす場合に限り、損金算入される。

  • 他の使用人と同じ支給時期に支給すること
  • 他の使用人と賞与の額に比較して適正であると認められる金額であること(適正金額を超えた分は損金不算入となる)

役員退職金

役員に対して支給する退職給与の額のうち、不相応に高額な部分の金額は損金算入されない

適正な役員退職金の目安=最終報酬月額×役員在任年数×功績倍率(+功労金)

なお、役員退職金のうち、利益その他の指標(勤務期間およびすでに支給した給与をのぞく)を基礎として算定される退職給与は、業績連動給与の要件を満たす場合に限り損金算入される。

       

租税公課

原則として、法人の所得に対して課されるもの(法人税、地方法人税、住民税)は損金不算入となるが、法人事業税および特別法人事業税については、納税申告書が提出された事業年度に損金算入される。

確定申告分の法人事業税および特別法人事業税は、原則として翌期開始から2ヵ月以内に納税申告書を提出するので、翌期に損金算入される。

ただし、延滞税や加算金、罰課金等のペナルティとしての意味合いがあるものは損金不算入となる。

貸倒損失

法律上の貸倒れ

法律的に債権が消滅するもの( 会社更生法の更生計画の認可決定特別清算の認可民事再生法の決定など )は損金算入が強制され、会社が損金経理をしなかったときは別表四で減算をする。

       

事実上の貸倒れ

法律的には債権は消滅していないが、債務者の資産状況、支払能力等からみて全額が回収できないことが明らかな場合において、貸倒損失として全額を損金経理することにより損金算入が認められる。

ただし、担保物がある場合は担保を処分してからでないと貸倒損失は損金不算入となる。

形式上の貸倒れ(売掛債権の特例)

債務者について次の事実が発生した場合は、その債務者に対する売掛債権(貸付金等の債券は含まない)は備忘価額(1円)を残して貸倒れとして損金経理することにより、損金算入が認められる。

  • 債務者との取引停止後1年以上経過した場合(担保物がある場合をのぞく)
  • 同一地域の債務者に対する売掛金の総額が少額で、取立てに要する旅費その他の費用にも満たない場合で、督促しても弁済が無い場合
       

貸倒引当金

売掛金、貸付金、その他これらに準ずる債権の貸倒れ損失の見込額として、損金経理により貸倒引当金勘定に繰り入れた金額については、その事業年度終了時の貸金の額に応じて限度額に達するまでの金額を損金算入することができる。

繰入限度額は、一定の算式により計算した個別評価金銭債権の繰入限度額と、それ以外の一括評価金銭債権の繰入限度額の合計額となる。なお、適用対象となる法人は中小法人等や、銀行法2条1項に規定する銀行等の一定の法人に限定されている。また、一括評価金銭債権の繰入限度額計算においては原則、過去3年間の貸倒損失額に基づき計算する実績繰入率を用いるが、中小法人(大会社等に支配されていない)については法定繰入率の選択適用が認められている。

繰入限度額の計算

(期末一括評価金銭債権の帳簿価額 ー 実質的に債権と認められない額)×法定繰入率

オープンイノベーション促進税制

青色申告法人で特定事業活動を行うもの(対象法人)が、2020年4月1日~2026年3月31日までの間に、一定のベンチャー企業(特別新事業開拓事業者)の株式(特定株式)を取得し、その取得事業年度末まで保有している場合において、その株式の取得価額25%以下の金額を特別勘定として経理したときは、その金額を損金算入できる。

特別新事業開拓事業者(一定のベンチャー企業)

特定事業活動に資する事業を行う設立後10年未満の法人等(新設法人のぞく)
R4年より売上高に占める研究費が10%以上の赤字会社は設立後15年までOKになった。

       

特定株式

特別新事業開拓事業者の資本金増加に伴う払込みで交付される株式で、払込みが以下の金額であること。上限は100億円。

  • 中小企業者以外:1億円以上
  • 中小企業者:1,000万円以上

※外国法人へは5億円以上が対象

損金算入額

特定株式の取得価額×一定割合(25%以下)

ただし、その事業年度の所得金額として一定の方法により計算した金額が上限となる。125億円を超える場合は125億円となる。

留意点

特定株式の取得から3年以内は、その株式を譲渡した場合や配当を受けた場合など、一定の事由が生じた場合には益金算入が必要となる。

外部リンク:国税庁

       

それでは過去問を解いてみましょう。2020年1月試験 学科 問30

内国法人に係る法人税における役員給与および役員退職金に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、各選択肢において、給与等は隠蔽または仮装経理により支給されたものではないものとする。

  1. 役員に対して支給する定期給与の各支給時期における支給額から源泉税等の額を控除した金額が同額である場合、その定期給与の各支給時期における支給額は、定期同額給与として損金の額に算入することができる。
  2. 役員に対して継続的に供与される経済的な利益のうち、その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるものは、定期同額給与として損金の額に算入することができる。
  3. 役員に対し、事前確定届出給与としてあらかじめ税務署長に届け出た金額よりも多い金額を役員賞与として支給した場合、原則として、当該役員賞与は事前確定届出給与に該当せず、その支給額の全額が損金不算入となる。
  4. 自己都合により役員を退任した者に支給する役員退職金を損金の額に算入するためには、その支給額が職務の対価として適正な金額であり、かつ、その支給額および支給時期についてあらかじめ税務署長に届け出る必要がある。

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解答

Wiki技能士

役員退職金は適正な額であれば算入できます。特にあらかじめ届け出ておく必要はありません。
3についてですが、増額改定・減額改定はその差額ですが、
事前確定届出給与の場合のオーバーは全額損金不算入になります。