所得控除|FP1級Wiki
所得控除は15種類もあります。基礎編の出題では毎回出てくるのでしっかりおぼえましょう。
所得控除のしくみ
所得控除とは
所得税法では、所得税額を計算する時に各納税者の個人的事情を加味するため、所得控除の制度を設けている。
所得控除の順序
各種所得控除相互間では、まず雑損控除から控除を行う。雑損控除の金額は原則として、総所得金額がある場合には総所得金額から控除し、控除しきれない場合には他の分離課税の所得金額から一定の順序で控除する。雑損控除の金額がこれら所得の金額から控除しきれない場合は、その残額は翌年以降3年間にわたって繰越控除することができる。
雑損控除をした後に、なお所得の金額が残った場合は、その金額から雑損控除以外の所得控除の額を総所得金額等から上記と同様に一定の順序で差し引いていく。この場合、雑損控除以外の所得控除に控除の順序は定められていないが、控除しきれない場合は切捨てとなる。
総所得金額等の合計額と合計所得金額
雑損控除、医療費控除、寄付金控除の各控除額の計算上は総所得金額等の合計額という概念が用いられる。一方、所得の金額により適用の有無が分かれる各種所得控除では、合計所得金額という概念が用いられる。
両方とも基本的に各種所得の金額の合計額であるが、合計所得金額は、純損失や雑損失等の繰越控除を適用しないで計算した金額となる。 つまり繰越控除がない場合は、どちらも同額となる。
雑損控除
適用対象者
本人、生計を一にしている配偶者、その他の親族(総所得48万以下)
適用対象物
適用対象者の有する住宅・家財・現金などの生活に通常必要な資産の災害、盗難、横領(詐欺は×)による被害
計算方法
①と②のいずれか多いほうの金額を雑損控除にできます。
①雑損失の額※-(総所得金額等の合計額×10%)
②災害関連支出-5万円
※時価で計算し、保険金・損害賠償金等で補てんされる金額を差し引いた金額が控除対象になる。
雑損失の繰越控除
なお、雑損控除の額がその年分の所得金額から控除しきれない場合には、青色申告者、白色申告者ともに、控除しきれない雑損失の額を翌年以後3年間に繰り越すことができる。
また、雑損控除に代えて、その年の所得金額の合計額が1,000万円以下の者が災害にあった場合は、災害減免法による所得税額の減免措置の適用を受けることができる(10.税額控除)。
医療費控除
通常の医療費控除かセルフメディケーション税制の選択式となっている。
通常の医療費控除
本人や生計を一にしているその配偶者、その他の親族(所得制限なし)の医療費を支払った場合には確定申告をすることで控除される。生計同一の判定は、医療費を支出すべき事由が生じた時または現実に医療費を支払った時のいずれかの時の現況による。
対象となるもの
- 医師または歯科医師による診療・治療の対価
- 治療・療養のために必要な医薬品の購入費(医師の処方や指示がなくても医療費控除の対象)
- 交通費(電車代、バス代、緊急時のタクシー代)
- 食事代
- 松葉杖、義歯の購入費
- 人間ドック(検診で疾病が発見され治療した場合)
- 看護師等による療養上の世話
- 出産費用
対象とならないもの
- 医師または看護師に対する謝礼金
- 未払医療費
- 自家用車のガソリン代や駐車料金
- 差額ベッドの料金
- 美容整形費
- 人間ドック(異常なしの場合)
- 疾病予防費用、健康増進費用
計算方法
医療費控除額(最高200万円)=支払った医療費の額-保険金等で補填される金額※-(総所得金額等の合計額×5%または10万円の低いほう)
※公的医療保険から支給される高額療養費、出産育児一時金(出産手当金、傷病手当金はのぞく)、生命保険等から支給される(支給予定も含む)入院給付金(所得補償保険の保険金はのぞく)などがある。
なお、補填される保険金が、対象医療費を上回っているばあいでも、他の医療費から差し引く必要はない。 青色事業専従者として給与の支払いを受けている妻に係る医療費で、一定のものを事業主である夫が支払った場合は、夫の医療費控除の対象となる。
セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)
2026年12月31日までの間(5年延長措置中)に、本人または本人と生計を一にする配偶者、その他の親族に係る特定一般用医薬品等購入費を支払った場合において、本人が健康の保持増進および疾病の予防への一定の取り組み※を行っているときには、医療費控除について、選択により、以下の金額を控除することができる。
具体的には、予防接種とかがん検診とかしてて普段から健康に気を使ってる人が、対象の市販薬(頭痛薬(イヴ〇錠)や栄養剤(アリ〇ミンEXゴールド)など)で対処してなんとかしましたー!っていう場合の特定一般用医薬品等購入費用。
※一定の取り組みには、予防接種、定期健康診断、がん検診等がある。生計を一にする配偶者や親族が取り組む必要はない。
※特定一般用医薬品等(スイッチOTC医薬品など)とは主に、過去に処方箋薬だったもので現在市販薬として購入できるものです。
R4.1.1より非スイッチOTC医薬品でも対象の物が出てきました(パブ〇ンゴールドAなど)!
なお、通常の医療費控除の適用を受けることを選択した場合において、支払った特定一般用医薬品等購入費が治療や療養に必要な医薬品の購入対価に当たるときは、これを通常の医療費控除の対象となる医療費に含めて控除額の計算をします。
計算方法
医療費控除額(最高8万8,000円)=特定一般用医薬品等購入費-保険金等で補填される金額-12,000円
医療費控除の提出書類の簡略化
医療費控除またはセルフメディケーション税制の適用を受ける場合には、領収書に代えて、確定申告書に「医療費控除の明細書」を添付しなくてはならない。この場合、税務署は申告期限から5年間、医療費の領収書の提示または提出を求めることができる。
社会保険料控除
本人や生計を一にしている配偶者、その他親族が負担することになっている健康保険・厚生年金保険・雇用保険・国民健康保険・国民年金等の保険料を支払った場合には、その全額が控除される。介護保険料等で保険料が特別徴収されている場合は、その受給者本人の社会保険料控除の対象となる。
前納・追納
国民年金保険料について2年分前納した場合は、支払った年に全額控除するか、各年分に割り振って控除するかを選択できる。追納については支払った年に全額控除となる。
小規模企業共済等掛金控除
本人が小規模企業共済の掛金や確定拠出年金の掛金などを支払った場合にはその全額が控除できる。家族の分はできない。 企業型の確定拠出年金でも、個人拠出分(マッチング拠出部分)を掛金控除の対象にできる。
生命保険料控除
地震保険料控除
B分野「10.(個人)損害保険契約の税金関係」で学習してください。
寄付金控除
寄付金控除は、特定寄付金を支出した場合に確定申告することで認められる控除。
主な対象
- 国または地方公共団体に対する寄付金
- 指定寄付金(公益法人等に対する寄付金で財務大臣が指定したもの)
- 特定公益増進法人(日本赤十字社、学校法人で学校の設置を主たる目的とするものなど※¹)に対する寄付金
- 一定の特定公益信託の信託財産とするための金銭の支出
- 政党などへの寄付金のうち政治資金規正法等の規定に該当するもの
- 特定非営利活動法人(NPO)のうち一定の要件を満たすものとして国税庁長官の認定を受けたもの(認定NPO)に対する寄付金
- 一定要件を満たす特定中小会社(株式会社)に出資した金額について。800万円を限度(R3.1.1より)
※¹ 入学に関して行った寄付金は対象外
計算方法
寄付金控除額=(特定寄付金の額または総所得金額合計×40%の低いほう)-2,000円
障害者控除
本人や同一生計配偶者、扶養親族が障害者である場合には、次の金額が控除される。
- 障害者1人につき27万円
- 特別障害者である場合は特別障害者1人につき40万円
- 同居特別障害者がいる場合は、1人につき75万円
なお、納税者の控除対象扶養親族が一定の障害者に該当する場合、納税者は、当該控除対象扶養親族に係る扶養控除と障害者控除の併用適用を受けることができる。
寡婦控除
本人が下記に掲げる寡婦(ひとり親控除の適用対象者をのぞく)に該当する場合、27万円の所得控除の適用を受けられる。
離婚のケース
夫と離婚した後、婚姻をしていない者で以下のすべてを満たす者が対象。
- 子以外の扶養親族を有している
- 合計所得金額500万円以下
- 事実上の婚姻関係と同様の事情と認められる者がいない者
死別のケース
夫と死別(もしくは生死不明)した後、婚姻をしていないもの、で以下のすべてを満たす者が対象。
- 納税者本人の合計所得金額が500万円以下
- 事実上の婚姻関係と同様の事情と認められる者がいない者
ひとり親控除
本人がひとり親の場合、35万円の所得控除が受けられる。
ひとり親とは、婚姻をしていない者または配偶者の生死が明らかでない者のうち、以下のすべてを満たす者が対象。死別の場合で亡夫の配偶者控除対象でも適用を受けられる。
- 生計を一にする子(総所得金額等の合計額が48万円以下で、他の者の生計に入っていない者)を有している
- 合計所得金額が500万円以下
- 事実上の婚姻関係と同様の事情と認められる者がいない者
勤労学生控除
本人が勤労学生の場合、27万円が控除される。なお、勤労学生とは、大学・高等専門学校・高等学校、専修学校等の学生・生徒などで、以下のすべてを満たす者が対象。
- 合計所得金額が75万円以下
- 自己の勤労によらない所得(配当とか不動産所得)が10万円以下の者
配偶者控除
本人の合計所得金額が1,000万円以下で、生計を一にする配偶者(合計所得金額が48万円以下の者、給与収入のみの場合は給与収入が103万円以下の者、青色事業専従者・事業専従者は対象外)がいる場合に、次の金額が控除される。
配偶者控除額
納税者の合計所得金額 | 控除対象配偶者 | 老人控除対象配偶者 |
---|---|---|
900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
900万円超~950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
950万円超~1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
配偶者特別控除
本人の合計所得金額が1,000万円以下で、配偶者の合計所得金額が48万円超133万円以下の場合には、本人や配偶者の所得に応じて1万円~38万円までの金額が控除される。共働き用控除。詳しい金額の表は国税庁HPへリンク
でもやっぱり青色事業専従者・事業専従者は対象外。
また、配偶者が給与収入のみで150万円以下の場合も満額の38万円を控除できる。これにより共働き家庭が今まで103万円の壁となっていたが、配偶者特別控除として申告することで150万円まで同額の控除が可能になった。
扶養控除
本人と生計を一にする16歳以上の扶養親族(合計所得金額が48万円以下の者。給与のみなら収入が103万円以下、年金のみなら108万円以下(65歳未満)、158万円以下(65歳以上)。青色事業者専従者・事業専従者は対象外)がいる場合は、控除対象扶養親族1人当たり次の金額が控除される。
扶養親族 | 控除額 |
---|---|
16歳未満 | 0円 |
16歳以上19歳未満 | 38万円 |
19歳以上23歳未満(特定扶養親族) | 63万円 |
23歳以上70歳未満 | 38万円 |
70歳以上(老人扶養親族) | 48万円 |
老人扶養親族のうち、 納税者またはその配偶者の直系尊属でかつ、 納税者または配偶者のいずれかと同居を常況とする者 (同居老親等) | 58万円 |
「同居の実親は10万円お得」と覚えましょう。
基礎控除
基礎控除は2020年から金額が変更されており、最大38万円だったものが48万円に上がっています。
その分、給与所得控除や公的年金控除、青色申告特別控除(e-tax申告者をのぞく)が一律10万円引き下げられている。
合計所得金額 | 控除額 |
---|---|
2,400万円以下 | 48万円 |
2,400万円超~2,450万円以下 | 32万円 |
2,450万円超~2,500万円以下 | 16万円 |
2,500万円超 | 0円 |
判定時期
年齢であったり控除対象配偶者や扶養親族の有無などは、原則として12月31日の現況において判定する。
年の途中で死亡した場合は死亡時の現況で判定する。
それでは過去問を解いてみましょう。2021年5月試験 学科 問28
居住者に係る所得税の所得控除に関する次の記述のうち、適切なものはいくつあるか。
- 合計所得金額が1,000万円を超える納税者は、配偶者の合計所得金額の多寡にかかわらず、配偶者控除および配偶者特別控除のいずれの適用も受けることができない。
- 扶養控除の対象となる扶養親族は、納税者と生計を一にする親族(納税者の配偶者を除く)のうち、合計所得金額が38万円以下で、16歳以上の者である。
- ひとり親控除は、現に婚姻をしていない納税者で、生計を一にする子を有し、合計所得金額が500万円以下である者が適用を受けることができ、その控除額は38万円である。
- 基礎控除は、すべての納税者が適用を受けることができ、その控除額は、納税者の合計所得金額の多寡にかかわらず、一律48万円である。
- 1つ
- 2つ
- 3つ
- 4つ
.
.
.
解答
1
1は適切です。そもそも1,000万円ルールがあります。
2は最近変わったところで48万円以下が対象になります。不適切。
3はひとり親控除で35万円ですね。不適切。
4の基礎控除は自分自身の分ですが、これは2,400万超からは段階的に減額されます。不適切。