生命保険料控除|FP1級Wiki

FP試験において生命保険料控除はB分野で重要な部分です。

この制度は、年間の納付保険料の一部をその年の所得から引いてくれる(所得控除)のですが、
旧制度は生命保険(5万限度)と個人年金保険(5万限度)の2種構成だったものが、
2011年改正の新制度は一般生命保険(4万限度)、個人年金保険(4万限度)、介護医療保険(4万限度)の3種構成に変更されています。
そのため、旧制度(10万限度)と新制度(12万限度)、 両方に加入している場合の限度額の考え方などもいまだ出題の可能性があります。
その辺りもしっかり把握しておきましょう。

       

控除対象の保険契約

一般生命保険料控除の対象契約

  • 有期や終身の生命保険や定期保険(死亡や高度障害などの保障全般)、変額個人年金保険、外貨建て保険も控除対象です。
  • 保険金受取人が納税者本人、配偶者、その他の親族であること。
  • 一時払契約はその年だけの控除になります(もったいない)。

個人年金保険保険料控除の対象契約

老後に備える個人年金保険が対象となるが、なんでもってわけではなく細かい条件がある。
個人年金保険料税制適格特約※を付したうえで以下の要件をすべて満たすこと。

  • 年金受取人=被保険者で、契約者は被保険者本人かその配偶者であること。
  • 保険料の払込期間が10年以上の契約であること(一時払いは不可)。
  • 60歳以上受取開始で10年以上の受給期間がある契約であること。

※①契約者配当金は払込期間中に受け取れない。②控除となる保険料は実際の保険料(配当金は考慮しない)③受取人の変更が認められない④契約後10年間は払済年金保険に変更できない

介護医療保険料控除の対象契約

2012年1月1日以後に契約した、医療保険、がん保険、介護保険、所得補償保険(就業不能保障保険)など、主に医療に対する保険が対象。ちなみに2011年までの契約については旧制度の生命保険料控除の対象になっている。国の健康保険制度がひっ迫してきている中、自助努力を促すために改正された背景がある。

  • 給付受取人が納税者本人、配偶者、その他親族であること。
       

生命保険料控除の対象とならない保険契約

  • 2012年1月1日以後契約の身体の傷害のみの保障特約(災害割増特約や傷害特約)
  • 保険期間5年未満の貯蓄保険
  • 外国保険会社との国外契約
  • 信用保険契約
  • 傷害保険契約
  • 財形貯蓄契約、財形住宅貯蓄契約、財形年金貯蓄契約
  • 少額短期保険業者との契約

控除対象となる保険料

  • 年間正味払込保険料(表定保険料から配当金などを引いた額、個人年金は表定保険料)
  • 自動振替貸付による保険料充当も対象
  • 保険料前納の場合はその年どしに割り振られて対象
  • 法人が払った保険料で従業員のみなし給与とみなされた場合も対象
       

旧制度の保険料控除額(2011年12月31日以前契約分)

原則として「一般生命保険料控除(旧制度)」「個人年金保険料控除(旧制度)」の制度が適用される。

それぞれで下表のとおり計算する。合わせて10万円までが限度だった。

所得税

年間正味払込保険料控除される金額
25,000円以下年間正味払込保険料の全額
25,000円超、50,000円以下年間正味払込保険料×2分の1+12,500円
50,000円超、100,000円以下年間正味払込保険料×4分の1+25,000円
100,000円超一律5万円

住民税

年間正味払込保険料控除される金額
15,000円以下年間正味払込保険料の全額
15,000円超、40,000円以下年間正味払込保険料×2分の1+7,500円
40,000円超、70,000円以下年間正味払込保険料×4分の1+17,500円
70,000円超一律35,000円
       

新制度の保険料控除額(2012年1月1日以後契約分)

主契約や特約それぞれの保障内容に応じ、その保険契約等に係る支払保険料がそれぞれ各保険料控除の対象となる。例えば医療特約付き生命保険なら医療特約分と生命保険部分とで別枠になる。

一般生命保険料控除、個人年金保険料控除、介護医療保険料控除はそれぞれ以下の表のとおり計算する。

所得税

年間正味払込保険料控除される金額
20,000円以下年間正味払込保険料の全額
20,000円超、40,000円以下年間正味払込保険料×2分の1+1万円
40,000円超、80,000円以下年間正味払込保険料×4分の1+2万円
80,000円超一律4万円

住民税

年間正味払込保険料控除される金額
12,000円以下年間正味払込保険料の全額
12,000円超、32,000円以下年間正味払込保険料×2分の1+6,000円
32,000円超、56,000円以下年間正味払込保険料×4分の1+14,000円
56,000円超一律28,000円
       

新制度と旧制度の適用契約がある場合(重要)

旧制度のみ適用、新制度のみ適用、新旧両制度適用(個々の控除額を合算)のうちから任意で選ぶことができる。ただし、控除限度額は合算して所得税12万円、住民税7万円までとなる。

一般生命保険料控除、個人年金保険料控除、介護医療保険料控除、3つの控除ごとに、それぞれを新旧どちらを適用するか決めて計算を出し、それらを最後に合算して導き出します。

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例えば、旧制度の個人年金保険を所得税最大控除5万円まで持っていて、新たに新制度対象の医療特約を所得税最大控除4万円分加入した場合は、年金は旧制度を適用し、医療特約を新制度適用として、5万円+4万円で、9万円を適用できます。
旧制度のA生命保険に控除3万円分加入していて、新たに新制度でB生命保険を控除2万円分加入した場合は、同種になるので、一般生命保険料控除については新制度を利用しないとB生命保険は適用できませんので、新制度の最大である4万円が適用となります。
たとえばこれが、A保険に控除5万円分加入していたなら、選択適用ですからB保険を捨ててA保険を旧制度適用し、5万円分控除することができます。ややこしいですね。

       

旧制度適用の保険を見直しした場合

これは見直し方によって対応が変わります。

新制度になってしまう場合

主契約の更新、保障性特約の更新、保障性特約の中途付加、契約全体に係る契約転換が行われた場合、見直し後は主契約を含めた契約全体が新制度適用の保険となる(その年は月割で新旧混ぜこぜ)。
注)現実はすべてがこの通りではありません!しかし、FP試験上ではこの認識でいないと減点となります。きんざいの認識として理解しておきましょう

そのまま旧制度が適用

  • リビングニーズ特約、指定代理請求特約、保険料払込免除特約等の保障性のない中途付加や更新
  • 災害割増特約、傷害特約などの、保険料控除対象外特約の中途付加や更新
  • 失効契約の復活
  • 契約の名義変更
  • 保険の減額

参考:国税庁HP,No.1140生命保険料控除

       

それでは過去問を解いてみましょう。2019年1月試験 学科 問11

2021年分の所得税における生命保険料控除に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、2012年1月1日以後に締結した保険契約等に基づく生命保険料控除を構成する各控除を「新生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「新個人年金保険料控除」とし、2011年12月31日以前に締結した保険契約等に基づく生命保険料控除を構成する各控除を「旧生命保険料控除」「旧個人年金保険料控除」とする。

  1. 旧生命保険料控除の対象となる終身保険の保険料について、2021年中に当該契約の契約者を変更した場合、変更後の保険料は新生命保険料控除の対象となる。
  2. 旧生命保険料控除の対象となる終身保険の保険料について、2021年中に当該契約に指定代理請求特約を中途付加した場合、中途付加後の保険料は新生命保険料控除の対象となる。
  3. 新生命保険料控除額が2万円、旧生命保険料控除額が3万円である場合、生命保険料控除の最大控除額は5万円となる。
  4. 新生命保険料控除額が4万円、介護医療保険料控除額が2万円、新個人年金保険料控除額が4万円、旧個人年金保険料控除額が5万円である場合、生命保険料控除の最大控除額は11万円となる。

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解答

Wiki技能士

生命4+介医2+年金5=11万となります。
それぞれの単位で新か旧か選べて合計12万が限度となります。
3の選択肢の場合は新生命2と旧生命3なので、
足すことはできますが新が混ざるので生命枠だけでは4万が限度になります。