遺言書|FP1級Wiki

遺言書には普通方式遺言と特別方式遺言がある。普通方式遺言は自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類あり、FP試験では普通方式遺言が出題される。現実的に多用されるのは自筆証書遺言と公正証書遺言なのですが、自筆証書遺言については、財産目録については自筆でなくても良くなったり、「法務局における遺言書の保管制度」を利用すると検認が不要になったりと、自筆証書遺言の利便性が向上している。試験でも旬な項目として基礎編、応用編、実技試験とすべての科目で出題されやすいので注意。

ちなみに特別方式遺言ですが、緊急に死期が迫っているときや日常から隔離されている状況(船内や刑務所内など)の特別な状況で作る遺言書で、かなり特別な状況での遺言書となります。出題されたことはいままでないと思います。

遺言で財産を残すことを遺贈と言います。

       

遺言書の種類

自筆証書遺言公正証書遺言秘密証書遺言
全文の記入者本人公証人制限なし
署名・押印本人本人・証人・公証人本人(封筒には本人、公証人、証人)
証人・立会人の要否不要証人2人以上公証人1人&証人2人以上
検認(保管制度を使えば不要)不要
長所秘密保持
手続きが簡便
内容が明確で確実性が高い
紛失や偽造、変造などの危険がない
秘密にしたまま公証人に
遺言を証明してもらえる
短所基本自筆なので書けないと困る
偽造とか変造される危険もある(保管制度を使えば安心)
内容に不備があると困る
秘密が漏れる危険
手続きが煩雑で費用もかかる
公証人は書面に不備がないかは
見てくれないので無効となる場合がある

遺言のポイント

  • 満15歳以上の意思能力を有する者であれば、だれでも遺言を作成できる
  • 遺言が複数ある場合、日付の新しいほうが有効となる
  • 遺留分を侵害する遺言も有効(有効だけど遺留分侵害請求できる)
  • 遺産すべてでなく一部の遺産だけの遺言も可能
  • 遺言の撤回は自由だが、原則遺言の方式による。ただし、先の遺言と同じ方式でなくてもよい
  • 遺言者が故意に遺言書(公正証書遺言以外)を破棄したときは破棄した部分は撤回したものとみなす
  • 未成年者、推定相続人、受遺者、配偶者、直系血族などは遺言の証人にはなれない
  • 遺言執行者は未成年者、破産者以外誰でもなれる(複数可)
  • 遺言書の財産目録パソコン作成や通帳コピーでも認めるようになった(目録への署名押印必要)
  • 訂正する場合はその個所に署名押印しないと認められない
  • 遺言の受遺者には代襲のルールはありません
  • 遺言によって相続開始の時から5年を超えない期間を定めて遺産の分割を禁じることができる。
       

法務局における遺言書保管制度

2020年7月10日より施行された制度。
遺言者自身が法務局に赴き、自筆証書遺言の保管申請をする。
手数料は3900円で、収入印紙で納付します。申請場所は以下のとおりです。

  • 遺言者の住所地を管轄する遺言書保管所
  • 遺言者の本籍地を管轄する遺言書保管所
  • 遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所

利用するメリット

  • 保管申請時に自筆証書遺言の形式について遺言書保管官の外形的なチェックが受けられる。(内容を保証するものではないので注意)
  • 遺言書は原本に加え画像データとしても長期間適正に管理される。(原本:遺言者死亡後50年間,画像データ:同150年間)
  • いざ相続が発生したときに検認が不要になる!!
  • データでも管理しているから相続人は全国どこの法務局でも閲覧したり遺言書情報証明書の発行ができます!!(有料)
  • 遺言者の生前に遺言書の閲覧の請求ができるのは、その遺言書を作成した遺言者本人のみです。※遺言者本人以外の方は閲覧することができません。

証人の条件

  • 未成年、成年被後見人、被保佐人ではないこと
  • 遺言者の推定相続人だったり、受遺者およびその配偶者、直系血族でないこと。
  • 公証人の配偶者、4親等以内の親族、書記および雇人でないこと。
       

検認

遺言者が亡くなり相続が発生した際、検認が必要な遺言書については保管者または相続人が家庭裁判所に提出し検認を受ける。検認は、法定の条件を満たしているかどうかを形式的に確認するものなので、その内容までは判断しない。
検認をせずに遺言書の開封をした場合には、5万円以下の過料に処せられる(民法1005条)が、遺言書が効力を失うことはない。

遺言の撤回や変更、取り消し

遺言はいつでも全部や一部の撤回や変更ができる。新たに遺言書を書き直せば過去の遺言書は撤回したことになります。自筆証書遺言なら破棄しても撤回とみなされます。公正証書遺言の場合は原本を破棄してもらえないので、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言でもいいので新たな遺言書で撤回する。3種の遺言書に優劣はありません。遺言は1番新しいものが優先される。ただし、新たな遺言書に不備があると撤回自体が無効になるので、慎重に取り扱う必要があります。遺言書に書かれた財産を先に処分しても一部撤回したことになります。

一部変更については自筆証書遺言の場合、軽微な変更であればその遺言の変更したい部分を示し、変更した旨、変更内容を書いて署名し、かつその変更の場所に印を押します。訂正方法を誤った場合は訂正が無かったこととなり、判別できなくなった場合はその部分の記載が無かったこととなります。

取り消しについては、その遺言書が相続人や受遺者の詐欺、強迫によって作らされていたことが分かった場合、他の相続人はその遺言を取り消すことが出来ます。しかし子の認知などの身分関係の事項は取り消しできません。

遺言の効力

受遺者に当たる人は遺言者が死亡した時に生存している必要があります。死んでいた場合は遺贈は無効になります。
代襲はありません。受遺者は胎児や法人も含まれます。
遺言によって相続開始の時から5年を超えない期間を定めて遺産の分割を禁じることができる。

外部リンク:国税庁

       

遺言書に関する過去問を解いてみましょう。2021年9月試験 学科 問44

法務局における遺言書の保管等に関する法律に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

  1. 遺言書の保管の申請は、遺言者の住所地、本籍地または遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所に遺言者本人が出頭して行わなければならない。
  2. 遺言者は、いつでも保管の申請の撤回をすることにより、遺言書の返還を受けることができるが、この撤回は遺言書が保管されている遺言書保管所に遺言者本人が出頭して行わなければならない。
  3. 推定相続人の1人が遺言者の生前に遺言書の閲覧を請求し、当該遺言書の内容を確認した場合、原則として、遺言者本人および他の推定相続人にその旨が通知される。
  4. 遺言者の相続開始後、相続人の1人が遺言書情報証明書の交付の請求をし、当該相続人に遺言書情報証明書が交付された場合、原則として、他の相続人、受遺者、遺言執行者に遺言書を保管している旨が通知される。

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解答

Wiki技能士

遺言者が生きてるうちは遺言者本人しか閲覧できません。3が不適切です。
1と2は、出頭っていうのがわざと人聞き悪そうな表現ですが内容は合ってます。
4はこれは相続開始後なので合ってますね。
ひとりでこっそりムフフは許さん!ってことですね。

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