遺族厚生年金|FP1級Wiki
このひとつ前のページでも書きましたが、FP試験の勉強をしていて、私はいつも国民年金(1階部分)と厚生年金(2階部分)とで混乱します。
ほとんどのテキストで、遺族基礎と遺族厚生をいっしょに紹介しているからです。
確かに、受給する側としては結局は合計額で支給されるのでそれでいいかもしれませんが、学習する側としては、どの部分がどっち側から支給されるのかが重要となってきます。私は、しっかり分けて覚えたほうが覚えやすいと判断したので、項目を分けさせていただきました。
特にFP1級の応用編では遺族年金の計算問題が出題されますので、子の加算だったり300月ルールだったり4分の3だったりというルールを、ちゃんと頭の中で国民年金と厚生年金とで分けて覚えてください。よって、このページでは遺族厚生年金(2階部分)についてのみ述べます。
遺族厚生年金
支給要件
遺族厚生年金には短期要件と長期要件があり、それにより計算が変わってきます。
簡単に言うと短期要件とは、加入中に死んじゃった人。長期要件とは脱退後に死んじゃった人で対象の人。
短期要件
- 被保険者の死亡
- 被保険者だった者が、被保険者期間中の傷病が原因で初診の日から5年以内に死んじゃったとき。(ただし、遺族基礎年金と同様、死亡者について、死亡前日において保険料納付済期間(保険料免除期間を含む。)が国民年金加入期間の3分の2以上あること※)
- 1級または2級の障害厚生年金の受給権者が死んじゃった時
※経過措置:令和8年4月1日前の場合は死亡日に65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までの1年間の保険料納付期間のうちに、保険料の滞納がなければ受けられる。
長期要件
- 老齢厚生年金の受給資格期間(老齢年金の)が25年以上の者の死亡
- 老齢厚生年金の受給権者(納付済み期間、合算対象・免除期間合計が25年以上の者のみ)の死亡
※受給資格期間とは、国民年金保険料&厚生年金保険料の合計期間を指す(厚生年金保険料だけではないので注意しましょう!)
厚生年金保険料の払込期間というのは、
老齢年金を払っていた期間でもあるよね?
つまり長期要件の受給資格期間25年
というのは国民年金の期間とも言えるの♪
支給対象者
対象者は、死亡者に生計を維持されていた以下の者で、順位が決められている。先順位の者が受給する場合はそっちが優先。
- 配偶者(夫は55歳以上が条件)
- 子(18歳到達年度の年度末を経過していない者(高校三年生)、または20歳未満で障害年金の障害等級1・2級の者※)
- 55歳以上の父母
- 孫(※上記に同じ高校三年生、または上記に同じ障害者)
- 55歳以上の祖父母
※子のない30歳未満の妻は、5年間の有期。
※子のある配偶者、子(※上記に同じ高校三年生、または上記に同じ障害者)は、遺族基礎年金も併せて受けられます。
※夫、父母、祖父母の支給開始は60歳から。ただし、夫は遺族基礎年金を受給中の場合に限り、遺族厚生年金も併給できる。
※子について、その時点で胎児であった場合は出生してからその権利が生じる。
支給額
短期要件の人と長期要件の人とで計算方法が変わります。短期要件の人の年金額が少なくなりすぎないような措置がされています。また、2003年に賞与からも年金保険料を徴収する改悪があったので、その時期の前後で計算式が①と②の2つに分かれています。
計算式
- 平均標準報酬月額×(7.125÷1000)×2003年3月までの被保険者月数
- 平均標準報酬額×(5.481÷1000)×2003年4月以降の被保険者月数
短期要件の人の年金額=(①+②)×(300月÷被保険者月数の合計)×4分の3
長期要件の人の年金額=(①+②)×4分の3
※遺族基礎年金と同じく、年金額の改定事由が発生した時には翌月から改定される。
権利消滅
「子のある妻」が再婚した場合は、妻の受給権は消滅するが、子に移行する。
妻&子の共通の要件
- 死亡したとき
- 婚姻したとき(内縁関係を含む)
- 直系血族または直系姻族以外の方の養子となったとき
妻のみの要件
- 夫が亡くなったときに30歳未満の「子のない妻」が、遺族厚生年金を受け取る権利を得てから5年を経過したとき
- 受給していた妻が、30歳に到達する前に遺族基礎年金を受け取る権利がなくなり、その権利がなくなってから5年を経過したとき
子のみの要件
- 亡くなった方と離縁したとき
孫や父母・祖父が受け取るケースの記載については、出題はないと思うので省きます!今後必要性があれば掲載します。
中高齢寡婦加算
中高齢寡婦加算は、遺族基礎年金が加算されない「子のない妻」の遺族厚生年金不足を補うもの。
妻が自身の年金を受け取ることになる65歳に達するまで加算が継続する。
支給要件
被保険者期間
- 長期要件の場合:死亡した夫の被保険者期間が20年以上(ここは厚生年金のみで20年必要!)
- 短期要件の場合:夫の被保険者期間は問わない
たとえ20年払っていても、そもそもの長期要件
(国民+厚生の合計25年)に該当してなければ無効です。
注意! ※中高齢寡婦加算だけをもらうことはできません。
「加算」ですからね。
年齢・その他要因
- 夫が亡くなったとき、40歳以上65歳未満で、生計を同じくしている子(※1)がいない妻
- 遺族厚生年金&遺族基礎年金を受けていた子のある妻(※2)が、子が18歳到達年度の末日に達した(障害の状態にある場合は20歳に達した)等のため、遺族基礎年金を受給権が消滅したとき
※1「子」とは以下の人を言います
- 18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子
- 20歳未満で障害等級1級または2級の障害の状態にある子
※2 40歳に到達した当時、子がいるため遺族基礎年金を受けている妻
支給額
中高齢寡婦加算額=遺族基礎年金の満額×4分の3
経過的寡婦加算(1956年4月1日以前生まれの妻のみ)
経過的寡婦加算は寡婦(未亡人)の救済制度ですが、経過的というだけあってこの制度はいずれ無くなる制度ですから、出題率は低いと思われます。参考まで。
次のどれかに該当すると加算されます。
- 1956年4月1日以前生で65歳以上で遺族厚生年金の受給権が発生した妻
- 中高齢の加算がされていた昭和31年4月1日以前生の遺族厚生年金の受給権者(妻)が65歳に達した
経過的寡婦加算の額は、昭和61年4月1日から60歳に達するまで国民年金に加入した場合の老齢基礎年金の額と合計し、中高齢寡婦加算と同額になる額。
外部リンク:日本年金機構
それでは過去問にチャレンジしてみましょう2019年9月実施 問5
公的年金制度の遺族給付に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、各選択肢において、ほかに必要とされる要件等はすべて満たしているものとする。
1) 厚生年金保険の被保険者が死亡し、その者に国民年金の第1号被保険者期間に係る保険料納付済期間が36月以上あった場合、所定の要件を満たす遺族は、遺族厚生年金および死亡一時金の支給を受けることができる。
2) 遺族厚生年金の支給を受けている者の収入が年額850万円以上または所得が年額655万5,000円以上となった場合、翌年の遺族厚生年金の支給が停止される。
3) 夫が厚生年金保険の被保険者期間中に死亡し、妻が遺族厚生年金の受給権のみを取得し、かつ、夫の死亡当時における妻の年齢が30歳未満である場合、当該妻に対する遺族厚生年金の支給期間は、当該受給権を取得した日から最長10年間となる。
4) 寡婦年金は、夫の死亡当時、夫によって生計を維持し、かつ、夫との婚姻関係が5年以上継続した65歳未満である妻に対して支給され、その支給期間は妻が60歳から65歳になるまでの間の最長5年間となる。
↓
↓
↓
↓
答えは
1番です。
この問題は少し引っかけというかわかりにくくさせている、FP1級に良くある迷彩問題です。ライフプラン分野の11項で、死亡一時金については36月以上の期間を第一号として納めていればもらえるというのは習っているハズです。それをわざわざ「厚生年金加入者」を死亡させ(失礼)、遺族厚生年金および死亡一時金を受け取ることができるかという表現で持ってきているワケです。「死亡保険金は併給できません」と暗記している解答者は、「アレ・・・?死亡一時金は、なんかの年金と併給はダメって覚えてたよな・・・?てことは1番はバツ・・・?」となり、本当は当てることができた問題を外してしまうのです。だからこそ、私は1階部分と2階部分を分けて考えるようになってほしいなと思うのです。そうすれば決して引っかかることのない問題なのです。
このように理解している問題を自信を持って答えられないようにカムフラージュで出してくる問題を、私は「FP1級の迷彩問題」と名付けています。FP1級の基礎編の問題は、ほとんどこの手法で攻めてきます。ひとつひとつをしっかり理解していって、打ち勝ちましょう!!