金融関連法規|FP1級Wiki
金融商品取引法や個人情報保護法が中心となります。どのような時に適用されるか、法律の効果はどのようなものか。学習していきましょう。
また、2021年より金融商品販売法は金融サービス提供法へと改正されました。ホットな話題として出題される可能性があります。
金融サービス提供法(旧金融商品販売法)
適用範囲
金融商品販売に係る契約。預貯金、信託、保険、有価証券、デリバティブ取引、外国為替証拠金取引(FX)など幅広く対象。(国内商品先物取引は対象外)
保護対象
個人および事業者(重要事項の説明義務については特定投資家(プロの個人・法人投資家)除く)
法律の効果
金融商品販売業者等が下記の違反をし、顧客に損害が生じた場合、損害賠償責任を負う。損害とは元本欠損額とする。 民法の原則により原告には立証責任がある。
- 重要事項の説明義務
- 断定的判断の提供等の禁止
法律が適用される場合
1.金融商品販売業者等(仲介業者、代理店を含む)が下記の重要事項の説明義務に違反した場合
- 金融商品販売業者等の信用リスク
- 金融商品の価格変動リスク(市場変動によって元本割れが生じる場合はその旨とその直接の原因となる指標。当初の元本を上回る損失が生ずるおそれがある場合はその旨)
- 取引の仕組みの重要な部分
- 権利行使期間の制限または解約期間の制限
※顧客が特定投資家である場合や、一般顧客が説明を要しない旨の意思を表明した場合は説明不要
2.断定的判断の提供等の禁止に違反した場合
その他
1.適合性の原則
重要事項の説明は、顧客の知識・経験・財産の状況・契約締結の目的に照らして、顧客に理解されるために必要な方法・程度で行う。
2.勧誘方針の策定・公表
金融商品販売業者等は、あらかじめ次の事項について勧誘方針を策定・公表しなければならない。
- 顧客の知識・経験・財産の状況に照らして配慮すべき事項
- 勧誘方法・時間帯について配慮すべき事項
- 勧誘の適正化の確保に関する事項
金融サービス仲介業者の登録制度
2021.11の改正で金融サービス仲介業者が創設されました。仲介業者は1つの登録でデジタル機器などを介して銀行、ローン、証券、保険サービスを一括提供できるようになり、従来のように金融機関に所属して指導を受ける必要も無くなった。
ただし、その自由度の高さから顧客保護が維持できない可能性があるため、仲介業が扱う金融サービスは複雑な説明のいらないものだけとし、仕組預金、非上場株、外貨建保険、デリバティブ取引などは対象外とする。
手数料は細かく開示すること。また、登録するにあたり賠償資力確保のために保証金を供託すること等が必要となる。
消費者契約法
適用範囲
消費者と事業者との契約で、労働契約を除くすべての契約が対象となる。
保護対象
個人(事業のためにする契約の場合をのぞく)
法律の効果
事業者の下記1~6のような行為により、消費者が誤認・困惑して契約した場合には取り消しができる。
また、事業者の損害賠償を免責とする条項や、その他の消費者の利益を不当に害する条項の全部または一部を無効とする。
民法の原則により原告には立証責任がある。
法律が適用される場合
1.不実告知
取引の重要事項について、事実と異なることを告げること
2.断定的判断の提供
将来における価額、将来の受取金額、その他の将来の変動が不確実な事項について断定的な判断を提供すること
3.不利益事実の故意または重大な過失の不告知
取引の重要事項またはそれに関連する事項について消費者の不利益となる事実を故意に告げないこと
4.不退去
消費者の住居または業務を行っている場所から退去しないこと
5.監禁、退去妨害
勧誘場所から消費者を退去させないこと
6.過量な内容の契約
高齢者の判断能力の低下等につけ込んで大量に商品を購入させること
その他
契約の取消権は、追認をすることができるときから1年、または契約締結のときから5年を経過したときに消滅する。
事業者の債務不履行により生じた消費者の解除権を放棄させる条項は無効となる。
また、金融商品の取引において金融商品販売法と消費者契約法の両方の規定に抵触する場合は、消費者保護のため両方の法律が併せて適用されます。
金融商品取引法
金融商品取引法の規制
金融商品取引法は幅広い金融商品を対象として、販売・勧誘規制や開示規制を横断的に定める法律で、違反すると行政処分や刑罰の対象となることがある。
①株式や投資信託等の有価証券関連商品(一般的な預金、保険は対象外)、デリバティブを活用した預金関連商品、外貨建保険や変額年金保険等の保険関連商品などの元本割れのリスクを伴う金融商品全般を対象に次の事項が定められている。
- 広告規制、事前の説明や文書交付を義務化、クーリングオフを導入
- 適合性の原則や断定的判断の提供等の禁止、不招請勧誘(招かれざるセールス、訪問販売やキャッチのこと)の禁止等の横断的な消費者保護のルールを制定
- 一般の投資家に不測の損害をもたらすような行為や取引は不公正取引として禁止
②投資家をプロ(特定投資家)とアマチュア(一般投資家)に区分し、特定投資家に対する規制を一部緩和
③契約締結前の書面交付義務および契約締結時の書面交付義務を厳格化。一般投資家にはあらかじめ契約締結前交付書面を交付しなければならず、交付を要しない旨の意思表示があっても、この交付義務は免除されない。
インサイダー取引規制
インサイダー取引とは会社関係者がその職務や地位により知り得た、投資者の投資判断に重大な影響を与える重要事実を利用して、その公表前に自社の株式等を売買する行為である(贈与・相続による取得は対象外)。本来知り得ないネタをズルして仕入れて儲けようってハナシですね。
ストックオプションとして付与された新株予約権を行使して、その会社の株式を取得することは、インサイダー取引の規制除外とされているが、取得後にその株式を売却することは規制の対象となる。なお、損失の場合でもインサイダー取引規制違反となる。
インサイダー取引の対象
会社関係者※とは | ・上場会社等の役員等、帳簿閲覧権を有する株主 ・上場会社等に対し、法令に基づく権限を有する者 ・上場会社等の契約締結者または締結交渉中の者 ・会社関係者でなくなってから1年以内の者 |
重大な影響を与える 重要事実とは | ・決定事実:新株発行・自社株買い・合併等 ・発生事実:株主異動・債務不履行・災害に起因する損害等 ・決算情報:売上高・経常利益・純利益の変動に係る情報 ・その他の重要事実:上記以外の事実および情報で投資判断に影響を与えるもの ・子会社の決定事実・発生事実・決算情報・その他の重要事実 |
公表とみなす状況とは | ・金融商品取引所のホームページに掲載されること ・重要事実が2つ以上の報道機関に公開され12時間経過すること ・重要事実の記載された有価証券報告書等が公衆縦覧に供されること |
金融ADR制度(金融分野における裁判外紛争解決制度)
金融ADR制度は金融商品、サービスに関する顧客と金融機関の間のトラブルについて、指定紛争機関が中立・公正な立場で間に入り、裁判によらない話し合いでの紛争解決を目指す制度。指定紛争機関は業態ごとに設立されている。
利用者が指定紛争機関に紛争解決の申し立てをした場合、金融機関は申し立てに応じなければならない。指定紛争機関は申し立てを受けて和解案を提示するが、金融機関はこの和解案を原則受け入れなければならない。 これら紛争解決手続きの内容は非公開とされている。
指定紛争解決機関は、金融商品・サービスに関する紛争解決手続きの業務だけでなく、紛争に至らない苦情処理手続きの業務も担うこととされている。
犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯収法)
テロ組織への資金供与やマネーロンダリング防止のための法律。取引時確認(取引目的、職業などの確認)を行う。
対象金融機関
銀行や保険会社、金融商品取引法上の金融商品取引業者などの金融機関であり、幅広く取引時確認の義務が課されている。
取引時確認が必要な時
- 取引を新たに開始する時(口座開設、保険加入など)
- 現金200万円を超える財産の移転を伴う取引(現金預入、保険料一括払いなど)
- 10万円を超える現金送金(公共料金支払いや学校入学金等をのぞく)
- ハイリスク取引(なりすましの疑い、過去に確認事項を偽っていた疑いのある顧客との取引、北朝鮮などに関わる者など)
2018年11月30日よりオンラインで完結する方法が新設された。
取引記録の作成と保存
金融機関は顧客との間で金融業務に係る取引を行った場合、口座番号などの取引時確認記録を検索するための事項や取引した日付・種類・金額などが記載された取引記録を作成し、その取引が行われた日から7年間保存しなければならない。ただし、少額取引(1万円以下の取引など)の場合には取引記録を作成する必要はない。
個人情報保護法
個人情報保護法では、個人情報を取り扱うすべての事業者が「個人情報取扱事業者」として適用されることになっている。
個人情報とは
個人情報とは、生存する個人に関する情報であって、次のいずれかに該当するものをいう。
- 当該情報に含まれる氏名生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの
- 個人識別番号が含まれるもの(身体の一部の特徴をデータに変換した符号、マイナンバーなどの公的な番号等)
要配慮個人情報(人種、信条、病歴など本人に対する不当な差別・偏見が生じる可能性のある個人情報)の取得については、原則としてあらかじめ本人の同意を得ることが義務化された(オプトアウト規定※の対象外)
※オプトアウト規定とは、ある条件の中では本人の同意を得ずとも個人データを第三者に提供できる規定のこと。オプトアウト規定を利用する個人情報取扱事業者は、所要事項を個人情報保護委員会へ届け出るのが義務となっている。
個人情報取扱事業者の義務
- 個人情報を取得した場合は、その利用目的を本人に通知または公表すること(あらかじめ公表している場合をのぞく)
- 個人情報を保管する場合は、情報の漏えい等が生じないよう安全に管理すること
- 個人情報を第三者に渡す場合は、原則として、あらかじめ本人の同意を得ること
- 本人から個人情報の開示を求められた場合は、その請求に応じて、個人情報を開示、訂正、利用停止等すること
個人データの第三者提供に係る確認・記録・保存の義務化
第三者から個人データの提供を受ける際、提供者の氏名、個人データの取得経緯を確認し、その内容の記録を作成、保存する義務がある。
預金者保護法
預金者保護法では、預金者の過失に応じて下表のとおり補償割合が定められている。なお、預金者の過失の有無についての立証責任は金融機関にある。
盗聴通帳やインターネットバンキングによる預金等の不正払戻しについては、預金者保護法の対象外であるが、全国銀行協会や全国信用金庫協会などの業界団体において、預金者保護法に準じた補償を行う旨のルールが策定されている。
過失なし | 軽過失あり※¹ | 故意または重大な過失※²があった場合 | |
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偽造カード被害 | 全額補償 | 全額補償 | 補償対象外 |
盗難カード被害 | 全額補償※³ | 被害金額の75%まで補償※³ | 補償対象外 |
※¹ 軽過失は暗証番号が生年月日で、それがわかる資料と一緒に保管していた場合等が該当 ※² 重大な過失とは、キャッシュカードに暗証番号を書き記していた場合等が該当 ※³ 被害にあった日から30日以内に金融機関に届け出た場合に対象
外部リンク:金融庁
それでは過去問を解いてみましょう。2019年1月試験 学科 問23
消費者契約法に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 事業者が消費者契約の勧誘に際し、当該消費者契約の目的となるものが当該消費者の重要な利益についての損害または危険を回避するために通常必要であると判断される事情について、事実と異なることを告げ、消費者がその内容が事実であると誤認をし、それによって当該消費者契約の申込みをしたときは、消費者はこれを取り消すことができる。
- 事業者が消費者契約の勧誘に際し、当該消費者契約の目的となるものの分量が当該消費者にとっての通常の分量を著しく超えるものであることを知っていた場合において、消費者がその勧誘により当該消費者契約の申込みをしたときは、消費者はこれを取り消すことができる。
- 事業者の債務不履行により生じた消費者の解除権を放棄させる消費者契約の条項や、消費者契約が有償契約である場合において、当該消費者契約の目的物に契約不適合があることにより生じた消費者の解除権を放棄させる消費者契約の条項は、いずれも無効である。
- 消費者が消費者契約法に基づく消費者契約の取消権を行使する場合、行使することができる期間は、消費者が追認をすることができる時から6カ月間または当該消費者契約の締結の時から5年間とされている。
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解答
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正しくは1年と5年です。
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