譲渡損失の損益通算と繰越控除|FP1級Wiki
ここでは、「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除」と「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」のふたつを学習します。
本来、土地建物等の資産を譲渡して生じた損失については、その土地建物等の譲渡所得以外の所得との通算ができないのが原則としてある。
ただし、後述する特例の対象となる居住用財産の譲渡損失についてはそれが認められる。
居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除
内容
内容が細かいのであえて箇条書きにしてみました。
- 1月1日現在での所有期間(取り壊すなら取り壊した日の属する年の1月1日)が5年超の居住用財産を譲渡し、
- かつ新たに居住用財産を取得して一定期間に居住する場合、
- 居住用財産の譲渡により損失があったときには、
- 一定の要件を満たすことにより、譲渡損失をほかの所得と損益通算できる。
- 控除しきれない部分が残った場合は、
- その年の翌年以後3年間(合計所得が3,000万以下の年に限る)、
- 各年分の総所得金額から繰越控除できる(損益通算と繰越控除で計4年間ということ)。
適用要件
- 譲渡資産は、1月1日(取り壊したならその年の1月1日)で所有期間5年超、個人の居住用で、住まなくなって3年経過する日の属する年の年末までに売る事。
- 買換資産は、床面積50㎡以上で、譲渡年の前年1月1日~翌年12月31日までに取得する。
- 買換資産への居住は、譲渡年の翌年末(譲渡年の翌年に取得したなら翌々年末)までに行う(または居住見込み)。
- 買換資産に対して返済期間10年以上の借入金があること(譲渡資産には不要)。
- 毎年確定申告が必要
- 親族への譲渡には適用不可
- 前年、前々年にすでに居住用各種特例を使用していない事(3年ルール)。
対象となる譲渡損失
繰越控除の対象となる譲渡損失は、内部通算や損益通算で控除しきれない部分をいう。
譲渡した居住用財産のうち500㎡を超える敷地部分相当額の損失は繰越控除対象外となる。
住宅借入金等特別控除との関係
居住用財産の譲渡損失の繰越控除と、取得した住宅の住宅借入金特別控除(住宅ローン控除)または認定住宅新築等特別税額控除とは併用することができる。
特定居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除
- 買換え資産の取得は要件ではなく、譲渡のみで発生。
- 譲渡資産には売買契約前日において返済期間10年以上の借入金残高が必要。
- 控除できる金額は、借入金残高-譲渡価額=限度額となる。
そのほかの部分は「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除」と同じになる。
それでは過去問を解いてみましょう。2021年5月試験 学科 問40
Aさんは、2020年10月に自己の居住用財産を2,000万円で譲渡し、同月中に住宅借入金を利用して新たな居住用財産を3,000万円で取得した。下記の〈条件〉に基づき、「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」(以下、「本特例」という)に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、記載のない事項については考慮しないものとする。
〈条件〉
- 譲渡資産の内容等
- 譲渡価額:2,000万円
- 取得費と譲渡費用の合計額:5,000万円
- 譲渡契約日の前日の譲渡資産に係る住宅借入金の残高:3,000万円
- 譲渡資産の土地等の面積:300㎡
- Aさんの2020年分の給与所得の金額:780万円(その他の所得はない)
- 買換資産の内容等
- 取得価額:3,000万円
- 2020年12月31日時点の買換資産に係る住宅借入金の残高:2,000万円
- 本特例の適用を受けるためには、譲渡した居住用財産の所有期間が2020年1月1日において10年を超えていなければならない。
- 本特例の適用を受けた場合、2021年以降に繰り越すことができる譲渡損失の金額は、220万円である。
- 本特例の適用を受けて繰り越した譲渡損失の金額を、2021年分の総所得金額等から控除するためには、2021年12月31日において譲渡資産に係る住宅借入金の残高がなければならない。
- 本特例の適用を受ける場合であっても、買換資産に係る住宅借入金について、所定の要件を満たせば、住宅借入金等特別控除の適用を受けることができる。
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解答
4
1は、5年超です。全項目で出た「居住用財産の買換えの特例(繰延べのやつ)」と混同しがちです。注意。
2は、5,000万掛かったものを2,000万で売ってるんで3,000万控除できるのですが、給与所得に充てても780万-3,000万で▲2.220万が翌年に残ります。
3は、譲渡資産ではなく買換資産に住宅ローン組まないとダメですね。
4は、特別控除可能となっています。