不動産登記|FP1級Wiki
不動産登記はFP1級試験で頻出です。どの権利が登記簿のどこに載るのか。
登記と仮登記の違いとはどういうものか。そのあたりを重点的に覚えましょう。
不動産登記記録
不動産に係る各権利
そもそも財産を支配する権利は大きく2種類なのです。財産の考え方というか概念的な部分で、不動産の基本となります。
物権 | 物を直接的・排他的(部外者を排斥する)に支配する権利。 すべての人に対して権利を主張できる絶対的な財産支配権である。 所有権、地上権、抵当権、地役権などが当てはまる。 |
債券 | 他人に対して何かを主張する権利で、 第三者には主張できない相対的な権利のこと。 賃借権等があげられる。 |
所有権 | 法令の制限内で自由にその所有物の使用、収益および処分をする権利 |
地上権 | 建物や工作物を所有する目的で他人の土地を使用する権利 |
抵当権 | 債権の保全のために、債務者がその所有する不動産に設定する担保権のこと。 債務が弁済されない場合には債権者が優先弁済を受ける |
根抵当権 | 継続的取引などによって生じる不特定の債券について、極度額を定めて担保する抵当権 |
賃借権 | 賃料を支払って他人の物を借りる借主の権利 |
登記記録の内容
不動産登記制度は不動産の物理的現況や権利変動を登記記録する制度で、土地は1筆ごと、建物は1個ごとに作成される。
これにより不動産の物的状況・権利関係が一般に公示され、不動産の取引を安全に行なうことが可能となっている。
登記記録のうち、表示に関する登記が記録される部分を表題部といい、権利に関する登記が記録される部分を権利部という。
表題部 (登記義務あり) | 一筆の土地または一個の建物ごとに作成される登記記録のうち、 土地・建物に関する物理的状況を表示した表示登記が記載されている部分のこと。 土地:登記原因と日付、所在、地番、地目、地積など 建物:登記原因と日付、所在、家屋番号、種類、構造、床面積など 表題登記は建物完成後1カ月以内にしないと過料が課せられる。 |
権利部 (登記義務なし) | 一筆の土地または一個の建物ごとに作成される登記記録のうち、 権利に関する状況を記載した部分のこと。甲区と乙区に分かれる。 甲区:所有権に関する事項(差し押さえ、買い戻し特約を含む) 「所有権保存登記」「所有権移転登記」「所有権移転仮登記」などがある。 乙区:所有権以外の権利に関する事項 「抵当権」「根抵当権」「賃借権」 「地上権」「地役権」「賃借権」「配偶者居住権」などがある。 |
建物の床面積の表示は以下のとおりになる。
区分所有建物以外の建物(一軒家など) | 壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積をいう(壁芯面積) |
区分所有建物(マンションなど) | 壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積をいう(内法面積) |
住宅ローンなどで行う抵当権設定は債権金額、事業融資などの根抵当権では極度額を設定する。
同一の債権のための担保に、設定不動産が複数ある場合を共同抵当権といい、共同担保目録で確認ができる。
登記の効力
不動産登記の主な効力は、対抗力(第三者対抗要件)は認められているが、公信力(公的な信用性)は認められていない。
対抗力 | あり | 登記をすれば権利を第三者に対抗できる。仮登記では対抗できない。 例外として以下の権利は登記せずとも対抗力を持つ。 ・借地権:借地上の建物を登記すれば、土地の登記記録に貸借権の登記が無くても借地権を第三者に対抗できる。 ・借家権:建物の引き渡しを受けていれば、建物の登記記録が無くても借家権を第三者に対抗できる。 |
推定力 | あり | 登記された事項は実体的権利関係において真実とされる。 |
確定力 | あり | 登記が存在する以上、これと矛盾した登記はできなくなる。 |
公信力 | なし | 登記に公信力(公的な信用性)はないため、登記を信用して詐欺のようなものにあっても保護されない。 これは、登記官が登記する際に現地調査などを行わず書面上の処理に留めているからだとされている。 そのため、固定資産税の納税履歴や近隣への聞き込み現地調査が重要となる。 |
仮登記について
仮登記は、なんらかの理由があり、本登記ができないときに、将来の本登記のために順位を保全しておくもの。
仮登記は順位保全の効力のみで対抗力は与えられていない。
1号仮登記 | 実体上の権利変動は生じているが、登記手続上の要件が揃わない場合 |
2号仮登記 | 実体上の権利変動は生じていないが、将来の権利変動の登記上の順位を保全しておく場合 |
- 仮登記を設定した後に土地所有者が第三者に対する所有権移転登記をすることはできる。
- 仮登記は共同申請が原則。しかし、仮登記義務者の承諾があるときと、裁判所の仮登記を命ずる処分があるときについては単独での仮登記申請が可能である。
- 仮登記の抹消は、仮登記名義人が単独で申請できる。さらに仮登記名義人の承諾があれば、登記上の利害関係人でも単独申請できる。
- 所有権に関する仮登記に基づく本登記の場合、登記上の利害関係を有する第三者の承諾があるときに限り申請をすることができる。
- 抵当権設定の仮登記を本登記にする場合については第三者の承諾不要。
登記の調査
登記事項証明書の交付請求
窓口請求、郵送請求、オンライン請求があり、だれでも交付を請求することができる。
登記記録のすべてを証明した「全部事項証明書」、権利部の相当区に記録されている事項のうち請求に係る部分を証明した「何区何番事項証明書」、記録事項のうち現に効力を有する部分を証明した「現在事項証明書」がある。これらは各証明書の最後に認証文、作成年月日、登記官の職氏名が記載され職印が押印される。
「登記事項要約書」には現在の所有者、登記記録の概要のみが記載され、認証文等の証明部分は一切ない。登記事項要約書の請求は窓口に限られる。
登記所の地図や公図
地図や公図についても、窓口、郵送、オンラインの請求が可能。
不動産登記法14条地図 | 精度が高く、1筆や2筆以上の土地ごとに作成され、各土地の区画を明確にし、地番を表示するもの。 土地の境界の復元能力を持つ精度が高い地図であるが、境界画定などに時間がかかり整備が遅れているため、 いまだ公図を利用するところも多い。 |
公図 | 14条地図が供えられるまでの間、準ずる地図として登記所にある。位置はほぼ正しいのだが実測図とは異なり精度が低い。 |
地積測量図と建物図面 | ・地積測量図は精度は高いがすべての土地に備えられてはいない。 土地の表示登記や、分筆登記申請時に提出されるもので、分筆したことのない土地にはほぼ地積測量図は存在しない。 ・建物図面は新築時の表示登記や建物の分割登記申請時に添付されるものですべての建物に備えれていない。 各界平面図とあわせて綴られており、建物の各階の形状や敷地のどの部分に建てられているかが示されている。 |
分筆と合筆
1筆の土地を2筆以上に法的に分割することを分筆といい、数筆の土地を法的に合併して1筆の土地にすることを合筆という。
合筆しようとしている土地のうちに抵当権の登記がある場合は合筆の登記はできない。
また、土地が分筆される場合は前出の地積測量図が作成される。土地の分筆に当たっては測量する必要があり、
公簿面積と実測面積の差が許容範囲を超えていた場合は地積更正登記も併せて必要になる。
登記手続
登記申請は、登記権利者と登記義務者が共同申請する原則となっている。
登記権利者 | 権利に関する登記をすることにより、登記上直接に利益を受ける者。 所有権移転登記においては買主が該当する。 |
登記義務者 | 権利に関する登記をすることにより、登記上直接に不利益を受ける者。 所有権移転登記においては売主が該当する。 |
地目や地積(面積)の変更があった時の登記申請
地目や地積について変更があった時は、表題部所有者または所有権の登記名義人はその変更があった日から1カ月以内に、
当該地目または地積に関する変更の登記を申請しなければならない。
売買契約に基づく登記手続きに必要となる主な書類
- 所有権移転登記申請書
- 登記原因証明情報(売買契約書や売渡証書):登記所に保管され、利害関係人に限り閲覧できる
- 登記義務者の登記識別情報(12桁のパスワード)または登記済証
- 登記義務者および登記権利者の印鑑証明書(発行3か月以内)
申請手続方法 | 申請手続き時の本人確認 | 申請手続後の本人確認 |
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書面(登記所に出頭、郵送) オンライン | 登記済証または登記識別情報 (ないときは事前通知または特例制度) | 登記済証は発行されない 登記識別情報が通知される |
事前通知制度
登記済証や登記識別情報を紛失、失念した時は再交付されない。
したがって、登記申請に際しては事前通知制度により、登記所から売主等登記事務者に対して本人限定受取郵便により通知される。
通知を受け取った登記義務者が、登記の申請が真実であることを登記所に申し出ることで登記が実行される。
事前通知制度の特例(事前通知不要)
登記申請の代理人(司法書士等)により申請され、登記官が内容を相当と認めるときは、登記をすることができる。
外部リンク:国土交通省
それでは過去問を解いてみましょう。2020年9月試験 学科 問35
不動産登記法に基づく地図等の一般的な特徴に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 不動産登記法第14条に基づく地図は、一筆または二筆以上の土地ごとに作成され、一定の現地復元能力を有した図面である。
- 登記所に備え付けられている公図(旧土地台帳附属地図)は、土地の位置関係を把握する資料として有用であるが、不動産登記法第14条に基づく地図に比べて、土地の面積や形状などの精度は低い。
- 分筆の登記を申請する場合において提供する分筆後の土地の地積測量図は、分筆前の土地ごとに作成され、分筆線を明らかにして分筆後の各土地が表示された図面である。
- 都市計画図(地域地区図)は、地方公共団体の都市計画に関する地図であり、土地が所在する地域に指定された用途地域の種別、防火規制の有無、指定建蔽率・指定容積率、土地に接する道路の幅員や路線価などを把握することができる。
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解答
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都市計画図は都市計画法の関連で都市計画を示すために地方公共団体が作成している地図です(07.都市計画法)。
通常、地形図に家建物を載せ、都市計画道路や用途地域を加えたものです。
路線価は載ってないですね。