不動産の評価(相続税評価額)|FP1級Wiki
宅地、貸宅地など建物の状況での権利関係を確認すること。また、配偶者居住権が新しい制度のため頻出です。
しっかり内容を理解しておきましょう。
宅地
宅地の評価は複数の筆であっても、逆に1筆を複数が利用している場合でも利用単位1画地(区画)ごとで評価する。
評価方法には路線価方式と倍率方式があり、国税局長が指定している。主に都市部は路線価方式、郊外は倍率方式。
路線価方式
自用地価額=路線価×奥行価格補正率×地積(土地の面積のこと)
必要に応じて側方路線影響加算(角地:T字路以上、準角地:一本道)、二方路線影響加算、間口狭小補正、奥行長大補正、がけ地補正、不整形地補正、無道路地などで調整する。
接する路線が複数ある場合は最も高い路線が正面路線価になる。
例:(正面路線価×奥行価格補正率+側方路線価×奥行価格補正率×側方路線影響加算率)×地積
倍率方式
自用地価額=固定資産税評価額×倍率
倍率はその土地ごとに指定されている。
私道
私道として使っている宅地は割り引いて評価する。
私道=自用地価額×0.3
ただし、不特定多数の者の通行に使われている私道は評価をしない。
逆に自分の通行のみに使っている土地は私道にはならず、宅地として評価する。
貸宅地等および宅地の上に存する権利
貸宅地(底地)と借地権
貸宅地の価額=自用地価額×(1-借地権割合)
借地権の価額=自用地価額×借地権割合
貸宅地は借地人に貸している土地のこと。底地とも言います。借地権は借地人が土地を借りている価値ともいうべきものです。同じ土地で権利を分け合っているのでお互いの価額を足すと必ず100%(元々の自用地価額)になります。他の形態の土地についてもそうですが、一つの土地の価値が変わるわけではないので、どんな土地でもかならず権利者同士の金額を合計すれば自用地価額と同じになります。そこを混乱しないようにしましょう。
ちなみに借地権割合は地域ごとに国税局長が定めています。
貸家建付地(賃貸アパートなどの敷地)
貸家建付地の価額=自用地価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
借家権割合は国税局長が定めていて30%。賃貸割合は満室なら100%。一時的な空室であれば空室とみなさない。ちなみにFP試験では賃貸割合は100%で出題される。
本来の土地の価格から「借家権割合を除いた借地権」を引いた金額。借地してる人が部屋を貸してるのでその分借地権が弱まると解釈してます。そして土地の合計は100%になる仕組みですから、借地権が弱まった分、貸家建付地の割合が増えるというわけです。
貸家建付借地権
賃貸アパートなどに使っている借地権の評価。
貸家建付借地権の価額=自用地価額×借地権割合×(1ー借家権割合×賃貸割合)
通常の借地権の評価から借家権割合を引いた金額。貸家建付地を同じく、部屋を貸している分借地権が弱まるのかなと。
使用貸借に係る宅地
無償で貸し付けていたり、固定資産税程度の地代しか授受していない場合は、使用貸借となり借地権が生じない。土地の利用者の権利は0となるので、この場合の宅地の評価は自用地価額そのままとなる。
たとえ貸家の敷地で貸家建付地の状況であっても使用貸借は自用地として評価する。
ただし、貸家建付地として扱う例外があります。
建物・土地所有者ともに父で、貸家にしている場合。この貸家の建物のみを子に贈与して、子が父に地代を特に払わない場合。地代を払わなければ通常は使用貸借となるべきなのだが、住人が父と交わした賃借契約は第三者に侵害されない物であるため、この場合の敷地の価額は引き続き貸家建付地として評価することになります。その後、契約しなおした場合は父が所有する土地は自用地に変わります。
無償返還の届出がある場合の宅地等(貸宅地)
借地人が将来その宅地を無償で返還するという「無償返還に関する届出書」を所轄税務署に出していれば、借地権は0になり、次の式で計算する。
貸宅地の価額=自用地価額×80%
ただし、条件としてどちらかが(もしくは両方が)法人でなければ適用できない。
地積規模の大きな宅地の評価
適用には地積と所在地区の要件があります。地積とは土地の面積のこと。地積規模の大きな宅地とは、三大都市圏では500㎡以上の地積の宅地。それ以外の地域では1000㎡以上の地積の宅地。所在地区要件は路線価地域なら普通商業・併用住宅地区・普通住宅地区に所在する宅地であること。倍率地域なら特に制限はありません。ただし、いずれも次のものは除外。
- 市街化調整区域(宅地分譲の開発ができる区域のぞく)の宅地
- 工業専用地域の宅地
- 容積率が400%(東京23区は300%)以上の地域にある宅地
- 評価通達22-2に定める大規模工場用地(一般に5万㎡以上の地積を言う)
以上の条件で地積規模の大きな宅地となる場合は、「奥行価格補正」「側方路線影響加算」「二方路線影響加算」「三方または四方路線影響加算」「不整形地の評価」の定めにより計算した価額に、以下の算式により求めた「規模格差補正率」を乗じる。
規模格差補正率={(A×B+C)÷地積規模の大きな宅地の地積A}×0.8
上記の式のBとCは、地積規模の大きな宅地が所在する地域に合わせて以下のとおりとなる。
三大都市圏に所在する宅地
地積 | B | C |
500~1,000㎡未満 | 0.95 | 25 |
1,000~3,000㎡未満 | 0.90 | 75 |
3,000~5,000㎡未満 | 0.85 | 225 |
5,000㎡以上 | 0.80 | 475 |
三大都市圏以外の地域に所在する宅地
地積 | B | C |
1,000~3,000㎡ | 0.90 | 100 |
3,000~5,000㎡ | 0.85 | 250 |
5,000㎡ | 0.80 | 500 |
「三大都市圏」とは次の3つの地域
- 首都圏整備法に規定する既成市街地または近郊整備地帯
- 近畿圏整備法に規定する既成都市区域または近郊整備区域
- 中部圏開発整備法に規定する都市整備区域
配偶者居住権
被相続人の配偶者が相続発生時に居住していた建物を配偶者自身が亡くなるまで無償で使用できる権利。希望があれば存続期間を設定することもできます。財産分与で揉めた場合には配偶者は住まいを奪われずに済みますし、遺産が不動産などが多くを占め金融資産が少ない場合などで家を配偶者が相続すると配偶者の金銭が少なくなってしまい、その先の生活費が苦しくなります。こどもに自宅を相続させ配偶者は金銭を相続し、配偶者居住権を設定して住むといった形で使うことができます。
副産物的なメリットとして、配偶者居住権は配偶者の死後に消滅するため、二次相続時(配偶者の死亡時)に相続税が掛かりません。つまり、節税として利用するという考えもできます。しかしこれは本来の目的ではないので個人的にはいずれ改正されるのでは・・・と思っています。
デメリットとして、配偶者居住権はその効力を失うまで解除することができないので、たとえば配偶者が老人ホームに移るから息子が家を売却したいと思っても、配偶者居住権付きの住宅となるので非常に売りにくくなってしまいます。
成立要件
以下の1~3をすべて満たすこと。
- 残された配偶者が亡くなった人の法律上の配偶者であること
- 配偶者が亡くなった人の所有建物※に亡くなった時点で居住していたこと
- ①遺産分割②遺贈③死因贈与④家裁の審判のいずれかで配偶者居住権を取得した事
(①は相続人間の話合いで、②③は遺言や死因贈与契約書で、④は遺産分割が整わない場合です)
※被相続人の100%所有もしくは配偶者との共有持分であること(一部賃貸などはOK)
その他の事項
配偶者居住権を第三者に対抗するために登記が必要。
配偶者居住権には価値があり一次相続時には相続税の対象です(といっても配偶者なので大体は控除内に収まりますが)。次の算式で評価する。
居住建物の時価-居住建物の時価×{(耐用年数-経過年数-存続年数)÷(耐用年数-経過年数)}×存続年数に応じた法定利率による複利原価率
- 耐用年数=所得税法上の耐用年数×1.5-建築後経過年数
- 経過年数=新築(増築などは関係なし)から現在までの年数
- 存続年数=居住権を終身で設定した場合、配偶者の平均余命。
価値はありますがこの権利を他人に売却や譲渡をすることはできません。
配偶者短期居住権
被相続人の配偶者が相続発生時に居住していた建物を一定期間無償で使用することを配偶者に認める権利。
居住建物の遺産分割終了か相続開始から6カ月後のいずれか遅い日までか、それ以外の場合は、建物を取得した者からの配偶者短期居住権の消滅の申し入れから6カ月までの間が適用期間となる。
財産評価額はゼロ扱いで、登記することはできない。
家屋
自用家屋
自用家屋の価額=固定資産税評価額
貸家
貸家の価額=固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)
借家権
借家権については基本、相続税や贈与税の課税価格には算入しないこととされている。
(※借家権が権利金等の名称で取引されている慣習がある地域だけは別)
建築中の家屋
建築中の家屋の価額=費用現価の額×70%
費用現価の額とは、課税時期(被相続人の死亡日、贈与財産の取得日)までに建物に投下された建築費用の額を、課税時期現在の価額に修正した合計額のこと
参考:国税庁HP,財産評価
不動産の評価に関する過去問を解いてみましょう。2021年1月試験 学科 問49
財産評価基本通達上の宅地の評価における「地積規模の大きな宅地の評価」の規定(以下、「本規定」という)に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 本規定における地積規模の大きな宅地とは、市街化調整区域に所在する宅地等を除き、三大都市圏では500㎡以上、それ以外の地域では1,000㎡以上の地積の宅地をいう。
- 本規定は、路線価方式により評価する地域に所在する宅地が対象となり、倍率方式により評価する地域に所在する宅地は対象とならない。
- 都市計画において定められた容積率が300%(東京都の特別区においては200%)以上の地域に所在する宅地は、本規定の対象とならない。
- 本規定の適用を受ける場合の宅地の価額は、当該宅地の所在する地域、地積や地区区分に応じた規模格差補正率を用いて算出され、本規定の適用を受けない場合の価額よりも高くなる。
.
.
.
解答
1
1は、設例の通りです。
2は、路線価か倍率かは問いません。
3は、400%(300%)です。マニアックすぎます。
4は、本規定は有利にするための規定なので、受けると価額は低くなります。
不動産の評価(相続税評価額)