相続財産と非課税制度|FP1級Wiki

FP試験では特に応用編の相続税の総額の計算で基礎的な知識として必要です。また、生前贈与財産のカウントは遺留分とは異なりますので注意して覚えましょう。債務控除に入る、入らないは基礎編でよく出てきます。確認しておきましょう。

       

そもそもの相続財産

金銭的な価値のあるプラスの財産もマイナスの財産も含めた相続人に引き継がれることになるすべての財産。

  • 被相続人が相続開始時に有していた事業用の売掛金や貸付金等の債権は、相続税の課税対象となる
  • 被相続人が自動車事故で死亡し、加害者が加入していた自動車保険で相続人が受け取った対人賠償保険金は、相続税の課税対象とならない

みなし相続財産

みなし相続財産とは、民法上(財産の分配上)は相続財産にカウントしないが、税法上(相続税の総額の計算上)は相続財産としてカウントする財産の事。有名なものとしては生命保険は受取人固有の財産として民法上カウントしないとよく言われます。

①死亡により支払われる生命保険金や損害保険金で被相続人が保険料を支払った部分の金額

保険料負担者被保険者死亡保険金受取人税種目
被相続人被相続人相続人相続税(500万×法定相続人の数が非課税になる)
被相続人被相続人相続人以外の人相続税(非課税は利用できない)
相続人被相続人相続人一時所得として所得税住民税
(自分で負担してる保険なので相続にはならない)
他の誰か※被相続人相続人贈与税
(あくまで掛けてた人の財産なのでただの贈与)
※会社が従業員に掛けていた保険の場合は従業員が負担した者として相続税の対象になる
       

生命保険金の非課税金額

相続人が受け取った保険金のうち500万円×法定相続人の数を限度に非課税となる。受取人が複数いる場合、

非課税限度額×(その相続人の受取保険金÷全相続人が受けた保険金の総合計)=各人の非課税金額

となる。相続放棄した者や相続人でない者は非課税を利用できない。しかし相続税法上、非課税金額の計算には含める(②の退職金等同様)。
剰余金などある場合、契約に基づき保険金とともに保険金受取人が取得するものを含んだ金額となる。
基礎控除額以下になるなら申告不要。

②死亡後3年以内に支給が確定した(支給時期は問わず)死亡退職金、功労金、弔慰金、退職給付金等の退職手当金等

退職手当金等には非課税が適用できる。基礎控除額以下になるなら申告不要。

500万円 × 法定相続人の数 = 退職手当金等の非課税限度額

※3年を超えて確定した死亡退職金は一時所得となる

弔慰金の控除の取り扱いについて

弔慰金については独自に以下の控除を行って、その残額を退職手当金等に含めての計算となる。給付時期3年以内のルールは特に定められていない。

  • 被相続人の死亡が業務上であるとき 賞与を除いた給料の3年分を控除
  • 被相続人の死亡が業務上でないとき 賞与を除いた給料の半年分を控除

③契約者が保険料負担者じゃない場合にその負担者が死亡した保険契約

④定期金に関する権利

定期金の権利とは、個人年金ような定期的に支給されるものの権利のことです。

       

生前贈与加算

相続開始前3年以内の贈与

推定相続人である者や、推定相続人以外でも遺言等による遺贈で財産を取得した者は、相続発生前3年以内に受けた贈与がある場合には贈与時の評価額で相続税の課税価格に算入する。

ただし全ての贈与が対象となる訳ではなく、以下の場合は対象外となります。

贈与税の配偶者控除を受けたもので、控除の範囲内の金額

直系尊属からの住宅取得資金の贈与で、限度額以下の金額

直系尊属からの教育資金の一括贈与で、相続発生までに使用した分の金額

直系尊属からの結婚・子育て資金の一括贈与で、相続発生までに使用した分の金額

法定相続人でも相続や遺贈によって財産を取得しなかった場合

※教育資金一括贈与は利用時期によっては残額が課税されない場合もあります。

注意:R6.1以降の贈与分から7年以内が対象になります。また、延長した4年部分は総額100万円まで相続財産に加算しない。

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度を受けた財産は3年以内とか関係なく相続財産に課税する。

結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置による贈与財産

贈与者が死亡した場合、その時点の残額は相続税の対象になる。

       

教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置による贈与財産

2019.4.1~2021.3.31に設定されたものは贈与後3年以内の死亡の場合に、2021.4以降は死亡時期問わず、相続開始時の残額を加算。
(受贈者が23歳未満、学校に在学中、教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講中の場合を除く)

主な非課税財産

  1. 墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝をしている物。ただし、投資対象や商品として所有しているものは除く。
  2. 宗教、慈善、学術、その他公益を目的とする事業を行う一定の個人などが相続や遺贈によって取得した財産で公益を目的とする事業に使われることが確実なもの
  3. 地方公共団体の条例によって、精神や身体に障害のある人又はその人を扶養する人が取得する心身障害者共済制度に基づいて支給される給付金を受ける権利
  4. 相続によって取得したとみなされる生命保険金のうち500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分
  5. 相続によって取得したとみなされる退職手当金等のうち500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分
  6. 個人経営している幼稚園の事業に使われていた財産で一定の要件を満たすもの。なお、相続人のいずれかが引き続きその幼稚園を経営することが条件。
  7. 相続や遺贈によって取得した財産で相続税の申告期限までに国又は地方公共団体や公益法人に寄附したもの、あるいは特定の公益信託の信託財産とするために支出したもの
       

債務控除

債務控除できる金額は、その債務が被相続人死亡時にすでにあって、それが確実と認められるものです。
それとは別に葬式費用の一部も控除することができる。
当然、債務を引き継いだ人が対象ですが、特定遺贈の人は対象外。相続放棄の人は負担した葬式費用のみ債務控除できます。

債務

控除できるもの控除できないもの
・銀行借入金
・不動産の未払金
・未払医療費
・未払税金(被相続人原因の延滞税も含む)
・未払いの生活費など
・墓碑や仏壇などの未払金
・保証債務(主たる債務者が弁済不能に限り控除可)
・相続財産の管理費用
・遺言執行費用、財産目録調製費用
・遺産分割交渉に係る弁護士費用や訴訟費用
・相続税申告のための税理士費用
・相続人を確定するための戸籍謄本代など
相続のために支払う費用は控除できないということです

葬式費用

控除できるもの控除できないもの
・葬式、埋葬、火葬、納骨の回送に要した費用
・葬式の前後に生じた費用で通常葬式にかかせない費用
・葬式に当たりお寺などへの戒名料や読経料などのお礼をした費用
・死体の捜索又は死体や遺骨の運搬にかかった費用
・香典返しのためにかかった費用
・墓石や墓地の買入れの費用や墓地を借りるための費用
・初七日や法事などのためにかかった費用
・死体の解剖に要した費用等

外部リンク:国税庁

       

それでは過去問を解いてみましょう。2020年9月試験 学科 問47

相続税法における死亡退職金の非課税金額の規定(以下、「本規定」という)に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、各選択肢における死亡退職金は、いずれも被相続人の死亡後3年以内に支給が確定して被相続人の雇用主から支払われたものとし、記載のない事項については考慮しないものとする。2020年9月試験 学科 問47

  1. 相続の放棄をした者が受け取った死亡退職金は、その者の一時所得として所得税の課税対象となり、本規定の対象とならない。
  2. 被相続人の死亡が業務上の死亡でない場合に、相続人が被相続人の雇用主から受け取った弔慰金が被相続人の死亡当時の普通給与の6カ月分に相当する額以下であるときは、その全額が本規定の対象となる。
  3. 被相続人の弟が相続の放棄をし、相続人が被相続人の配偶者と妹の合計2人である場合に、配偶者が3,000万円の死亡退職金を受け取ったときは、その死亡退職金のうち、本規定の適用後に相続税の課税価格に算入すべき金額は2,000万円となる。
  4. 相続人が受け取った死亡退職金について本規定の適用を受け、適用後の相続税の課税価格の合計額が遺産に係る基礎控除額以下である場合、相続税の申告書を提出する必要はない。

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解答

wiki技能士

1は、みなし相続財産になります。相続税です。
2は、これ、日本語がややこしいのですが、弔慰金控除が半年分ありますので、本規定の対象になる超過分は無いという事だと思います。意地悪です。
3は、相続放棄しても非課税枠が減らされることはないので1,500万円です。

相続財産と非課税制度