雇用保険 | FP1級受験攻略Wiki
失業者や育児休業者に対して、失業等給付や育児休業給付を支給します。
また、失業の予防や雇用状態の是正及び雇用機会の増大、労働者の能力の開発及び向上その他労働者の福祉の増進等をはかるための二事業もあります。
失業等給付や育児休業給付の保険料は被保険者と事業主が折半。
雇用安定事業と能力開発事業の二事業については全額事業主負担です。
令和2年3月31日に改正法が成立したため、
令和4年度は事業主のみ保険料が上がり、令和5年度は労働者および事業主の保険料が上がりました。
求職者給付(基本手当、受講手当、通所手当、寄宿手当、傷病手当、高年齢求職者給付、特例一時金、日雇労働求職者給付金)、就職促進給付(就業手当、再就職手当、就業促進定着手当、常用就職支度手当、移転費、求職活動支援費等)教育訓練給付(教育訓練給付金)、雇用継続給付(高年齢雇用継続基本給付金、介護休業給付金)、育児休業給付(育児休業給付金)等々と多種多様で覚えるのが非常に大変です。
FP試験にすべては出ないので、ここでは絞ってご案内していきます。
雇用保険の被保険者
1週間に20時間以上勤務、短期バイトなどではなく31日以上継続して雇用されること。
65歳以上の者は高年齢被保険者となります。個人事業主や代表取締役は被保険者になれません。
マルチジョブホルダー制度(マルチ高年齢被保険者)
複数の事業所で勤務する65歳以上の労働者が、そのうち2つの事業所での勤務を合計して以下の要件を満たす場合に、本人からハローワークに申出を行うことで、申出を行った日から特例的に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができる制度です。
- 複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者
- 2つの事業所の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上(ただし、1事業所の1週間の労働時間が5時間以上20時間未満)
- 2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上
ただし、任意脱退はできず、適用後に事業所が変わる場合でも加入事業所を任意に切り替えられない。適用要件を満たさなくなった場合は喪失となる。
求職者給付
働く意欲がありながら仕事を失った人に対しては基本手当があります。
65歳未満の人はいずれかの「基本手当」が対象の日数支払われ、65歳以上の場合は「高年齢求職者給付金」という一時金が出ます。
また、傷病が原因で対象となった場合は「傷病手当」と呼びます。傷病手当については健康保険や労災がある場合、そちらが優先されて支払われるということなので詳細は省きます。
基本手当
基本手当の受給条件
- 離職日以前の2年間で雇用保険に加入していた期間が12カ月以上あること。
- 働く意志や能力があり、再就職できるよう努力していること。
- 倒産、解雇による「特定受給資格者」や契約更新されず失業者となった「特定理由離職者」に該当する場合は、離職日以前の1年間で雇用保険の被保険者であった期間が、6カ月以上あることが受給の条件です。
※被保険者期間とは、離職日から1か月ごとに区切っていった期間に賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月を1か月と計算します。賃金支払基礎日数が11日以上の月が6か月ない場合は、賃金の支払の基礎となった時間数が80時間以上の月を1か月として計算します。
失業の認定は4週間に1回行われ、認定を受けた日数分(28日)の基本手当が支給されます。
基本手当 | 賃金日額×賃金日額ごとに設定された料率 日額:原則、賞与を除く6カ月分を180で割った数・上下限アリ 料率:60歳未満は50~80%、60~64歳は45~80% |
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受給期間 | 原則、離職した日の翌日から1年間。受給期間を経過すると、 たとえ給付日数が残っていても支給は打ち止めとなる。 例外として病気妊娠介護を理由に最大4年、 60歳以上の定年退職等は最大2年とすることができる。 |
待機期間 | 最初の受給決定日から7日間 |
給付制限期間 | 自己都合退職や、重大な責めによる解雇などの場合は、 待機期間(7日間)に加え、 さらに1カ月以上3カ月以内での給付制限がある。 定年退職は含まない。 |
自己都合や定年の場合の給付日数(全年齢)
算定基礎機関 | 10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
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給付日数 | 90日 | 120日 | 150日 |
特定受給資格者(会社都合)&特定理由離職者(親の介護等)の給付日数
算定基礎期間 | 1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10以上20年未満 | 20年以上 |
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30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | |
30~35歳未満 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
35~45歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
45~60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
60~65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
高年齢求職者給付金(一時金)
法改正により年齢による雇用保険の加入制限がなくなり、年齢問わず、働く人はほぼ被保険者となりました。
65歳以上の方は基本手当の代わりに高年齢求職者給付金の適用対象となります。
基本手当と違い一時金の形式ですが、条件を満たせば何度でも受け取れます。
基本手当と違い、年金との併給も可能です。
離職の日の翌日から起算して1年を経過する日までに求職の申し込みをし、離職の日以前1年間に6カ月以上の被保険者期間があることが条件です。
雇用保険の被保険者期間 | 基本手当日額に掛ける日数 |
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1年未満 | 30日分 |
1年以上 | 50日分 |
就職促進給付
就業手当
基本手当の受給資格がある方が再就職手当の支給対象とならない常用雇用等以外の形態で就業した場合で、基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上かつ45日以上あり一定の要件に該当する場合に支給されます。
支給額 | 基本手当日額×30%×就業日数 |
---|
1日当たりの支給額の上限は、1,918円(60歳以上65歳未満は1,551円)となります。(R6参考)
(毎年8月1日以降に変更されます。)
再就職手当
基本手当の受給資格がある方が安定した職業に就いた場合(1年を超えることが確実、かつ雇用保険の被保険者を雇用する事業主も含む)に基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あり、一定の要件に該当する場合に支給されます。申請期限は就職日の翌日から1ヶ月以内。
基本手当の支給残日数 | 給付額 |
---|---|
所定給付日数の3分の2以上 | 基本手当×70%×残日数 |
所定給付日数の3分の1以上3分の2未満 | 基本手当×60%×残日数 |
基本手当日額の上限は、6,395円(60歳以上65歳未満は5,170円)となります。(R6参考)
(毎年8月1日以降に変更されます。)
就業促進定着手当
再就職手当の支給を受けた人が、引き続きその再就職先に6か月以上雇用され、かつ再就職先で6か月の間に支払われた賃金の1日分の額が雇用保険の給付を受ける離職前の賃金の1日分の額(賃金日額)に比べて低下している場合、給付を受けることが出来ます。申請期限は就職日から起算して6か月目の翌日から2か月以内。
支給額は、低下した分×6か月間内における賃金の基礎となった日数(通常、月給制の場合は暦日数、日給月給制の場合はその基礎となる日数、日給制や時給制の場合は労働の日数)となります。 ただし、次のとおり上限額があります。
上限額:基本手当日額(注意2)×基本手当の支給残日数に相当する日数(注意3)× 40%(注意4)
- 注意2:基本手当日額の上限は、6,395円(60歳以上65歳未満は5,170円)となります。(毎年8月1日以降に変更されますR6参考)
- 注意3:再就職手当の給付を受ける前の支給残日数です。
- 注意4:再就職手当の給付率が70%の場合は、30%です。
常用就職支度手当
基本手当の受給資格がある方(基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1未満である方に限ります。)、高年齢受給資格者、特例受給資格者又は日雇受給資格者のうち、障害のある方など就職が困難な方が安定した職業に就いた場合に、一定の要件に該当すると支給されます。
支給額は、支給残日数(原則として90日以上は90、45日以下は45とされる)×40%×基本手当日額(一定の上限あり)となります。
基本手当日額の上限は、6,395円(60歳以上65歳未満は5,170円)となります。
(毎年8月1日以降に変更されます:R6参考)
雇用継続給付
高年齢雇用継続給付
高年齢雇用継続給付は、基本手当を受給せずに働く「①高年齢雇用継続基本給付金」と、基本手当を受給してから60歳以後再就職した場合に支払われる「②高年齢再就職給付金」とに分かれ、雇用保険の被保険者であった期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の一般被保険者が、原則として60歳以降の賃金が60歳時点に比べて、75%未満に低下した状態で働き続ける場合に支給されます。いずれも初回の申請期限日は、仕事を始めた月の初日から4ヶ月以内です。
支給額
高年齢雇用継続給付の支給額は、60歳以上65歳未満の各月の賃金が60歳時点の賃金の61%以下に低下した場合は、各月の賃金の15%相当額(2025.4.1より10%)となり、60歳時点の賃金の61%超75%未満に低下した場合は、その低下率に応じて、各月の賃金の15%相当額未満の額となります。 各月の賃金が376,750円を超える場合は支給されません。(この額は毎年8月1日に変更されます:R6)
支給期間
①高年齢雇用継続基本給付金の支給対象期間は、被保険者が60歳に達した月から65歳に達する月までです。
ただし、60歳時点において、雇用保険に加入していた期間が5年に満たない場合は、雇用保険に加入していた期間が5年となるに至った月から、この給付金の支給対象期間となります。
②高年齢再就職給付金については、支給残日数が100日以上必要で、60歳以後の就職した日の属する月(就職日が月の途中の場合、その翌月)から、1年(残100日以上200日未満)又は2年(残200日以上)を経過する日の属する月までです。(ただし65歳に達する月が限度)
※ 船員保険が雇用保険に統合されたことに伴う経過処置により、船員の方で55歳に達した日が平成22年4月1日以降の方のうち昭和34年4月1日までに生まれた方は上記概要中の「60歳」は「55歳」、「65歳」は「60歳」となります。
高年齢再就職給付金と再就職手当の併給はできません。
同じ再就職で両方の条件を満たす場合は、
どちらかの選択式になります。
もし相談されたら慎重に選びましょう(。-`ω-)
介護休業給付
家族を介護するために休業をした者が、介護休業開始日前2年間に、みなし被保険者期間が12カ月以上ある場合に支給の対象となります。
家族とは(配偶者、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫、配偶者の父母で同居や扶養の必要なし)を指します。
その上で、
- 介護休業期間中の各1か月毎に休業開始前の1か月当たりの賃金の8割以上の賃金が支払われていないこと
- 就業している日数が各支給単位期間(1か月ごとの期間)ごとに10日以下であること。(休業終了日が含まれる支給単位期間は、就業している日数が10日以下であるとともに、休業日が1日以上あること。)
の要件を満たす必要があります。
支給額は休業前賃金日額の67%相当額。3回までを限度に通算93日分です。
覚え方→「介護が休業で虚(67)しいクミ(93)ちゃんは、3回までが限度」です。すいません。ほんとすいません。
育児休業給付
被保険者が1歳(保育所の保育の実施が行われない場合は1歳半または2歳)未満の子のために
育児休業を取得すると育児休業給付金の支給を受けることができます。
休業開始前2年間にみなし被保険者期間が通算12カ月以上必要で、事前に事業主へ申し出ること。
給付額は休業前賃金日額67%、180日経過後からは50%です。
2022.10から一部改正となり、2回の分割取得が可能となりました。
産後パパ休暇(2022~10から)
パパ休暇に代わり、さらに柔軟になった「産後パパ休暇」が誕生しました。
これは「お父さんの産休」とも言われます。
子の出生後8週間以内に最大4週間まで育児休業が取得でき、
2回までの分割取得や通常の育児休業との併用も可能となります。
これにより育児休業と合わせて4回まで取得できるため、自由度が高まりました。
(支給日数は育児休業と通算)
パパママ育休プラス
母親だけでなく父親も育児休暇を取得して育児に参加する場合、 子が1歳になる前に取得すれば、
それまで1年間だった育児休業期間を2ヶ月延長し、
子どもが1歳2ヶ月になるまで取得できるというものです。
子どもが1歳2ヶ月になるまでの間、夫婦がそれぞれ1年間の育児休業(産休含む)を取得できます。
(1年2ヵ月分給付がもらえるわけではない)
※妻の場合、産後の8週間の期間は「産休」となります。妻はその後のタイミングに育児休業を取得するワケですが、
妻が育児休業を取る前に夫が育児休業を取得しなければ育休プラスの対象外となるので注意が必要です。
教育訓練給付
労働者の能力開発の取組み又はキャリア形成を支援し、雇用の安定と再就職の促進を図るため、教育訓練受講に支払った費用の一部が支給される。
支給対象者 | 条件 |
---|---|
雇用保険の被保険者 | 訓練受講を開始した日に3年以上(初回のみ一般教育1年、専門実践2年以上)の被保険者期間があること。 |
被保険者だった人 | 上記の条件+被保険者資格喪失から1年以内 (喪失以降1年間の妊娠、育児、疾病、負傷の理由でさらに30日以上受講開始できないときは最大20年)。 |
※被保険者期間は、過去に受講したことがある場合受講後から3年間必要です。
一般教育訓練給付金
能力開発を支援し、雇用の安定と再就職の促進を図る目的の制度です。
- 教育訓練終了後の翌日から1カ月以内に申請。
- 特定一般教育訓練はキャリアアップの意味合いが高いので支給額が上がります。
- いずれの場合も計算後の支給額が4,000円を超えない場合は支給されません。
支給額 | 上限額 | |
---|---|---|
一般教育訓練 | 教育訓練に払った費用の2割 | 10万円 |
特定一般教育訓練 | 教育訓練の払った費用の4割 | 20万円 |
費用について:補講や補助教材、パソコン器材は含みません。ですが開始1年以内に受けたキャリアコンサル料は2万円を上限に費用に含めることができます。
専門実践教育訓練給付金
中長期的なキャリア形成を支援し、雇用の安定と再就職の促進を図る目的の制度です。
- 受講開始日から6カ月ごとの期間の末日の翌日から起算して1カ月以内が申請期間です。
- 受講を終了したときは終了の翌日から1カ月以内です。
- いずれの場合も計算後の支給額が4,000円を超えない場合は支給されません。
教育訓練受講中の場合 | 教育訓練修了後 | |
---|---|---|
支給額(訓練経費×右表の割合) | 50% | 資格を取得し修了1年以内に就職できた場合は 20%上乗せで70%になる |
上限額 | 1年間の上限40万円。3年で120万円 | 1年間の上限56万円。3年で168万円。 |
法令上最短4年の専門実践教育訓練を受講した方は4年目受講分として、それぞれもう1年分(40万、56万)が上乗せされる。
参考:厚生労働省HP
雇用保険の過去問を解いてみましょう。2020年1月試験 学科 問3
雇用保険の基本手当に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 基本手当を受給するためには、特定理由離職者等に該当する場合を除き、離職の日以前2年間に被保険者期間が継続して12カ月以上なければならない。
- 基本手当は失業の認定を受けている日について支給され、その認定は、求職の申込みを受けた公共職業安定所において、原則として、受給資格者が離職後最初に出頭した日から2週間に1回ずつ行われる。
- 基本手当の受給期間は、原則として離職の日の翌日から1年間であるが、離職が60歳以上の定年退職によるものである場合、離職の日の翌日から2カ月以内に申し出ることにより、最長3年間まで延長される。
- 特定受給資格者・特定理由離職者以外の受給資格者(就職困難者を除く)の所定給付日数は、受給資格者の離職の日における年齢にかかわらず、算定基礎期間が10年未満の場合は90日、10年以上20年未満の場合は120日、20年以上の場合は150日である。
.
.
.
解答
4
1は、継続してなくていいですねー。
2は、そんな月に何回も行かなくていいですー。月イチくらいの感じですわ(4週に1回)。
3は、定年だからって急に3年なんて違和感ありすぎですわー。(でも病気や介護や妊娠が理由なら4年)
4だけ急に難しいこと言ってるので正解、あ、これじゃ解説にならないか。
特定受給資格者とか特定理由離職者とかなんか長い漢字を先に持ってきて混乱を引き出そうとしているのね。この問題はね。
自己都合とか事情が無い人は解りやすく算定期間10年刻みだけなんですよね。解っていることを混乱させてくる迷彩問題ね。要注意です。
例えばですが、
4.基本手当の所定給付日数は、受給資格者の離職の日における年齢にかかわらず、算定基礎期間が10年未満の場合は90日、10年以上20年未満の場合は120日、20年以上の場合は150日である。(特定受給資格者・特定理由離職者以外の受給資格者(就職困難者を除く))
って書いてあったらどう思います?2級を越えてきた皆さんならすぐに正解!ってなるんじゃないですかね?
これがFP1級の出題の仕方なのです。これは精選問題集や過去問道場さんをやり込んで慣れるしかありません!
FPWikiでしっかり学び、過去問にも慣れる!両輪でよろしくお願いします!
2021年08月05日