投資信託の管理と運用|FP1級Wiki

投資信託の分野も出題が多いです。多い問題が、運用スタイルについての問題です。テキストや問題にはいろいろな用語が出てきますが、仕組みをしっかり理解して間違えないようにしましょう。このページは主に、お金を管理運用する側になる証券会社や投資会社、信託銀行等の説明です。

       

投資信託とは

投資信託とは「信じて託す」の名のとおり、複数の顧客から資金を集めて大きな資産とし、それを専門家が管理・運用して増やし、その成果を分配金等で顧客に還元するものです。これにより、顧客は少ない資産でも始めることができ、世の中にある様々な運用商品(国債、株式、リートなど)に幅広く投資をすることができるメリットがある。反面、投資についてはファンド等の商品を選択したあとは専門家にまかせることになるため、運用手数料などのコストがかかる。簡単に言うとそんな感じです。

※ファンド:投資信託やETF、REITなどを公簿ファンドといいます。例えば日経225とかNYダウとか市場に連動するインデックスファンドはいろんな会社の銘柄を含めてひとつのファンドとして商品化しています。少額で複数銘柄の株が買えるのが投信のメリットです(安定する)。

投資信託の仕組み

投資信託の購入先には設立形態の違いにより「契約型」と「会社型」の2種類があります。現在の多くの投資信託は契約型となります。会社型というのは投資法人を設立するケースです。

       

契約型投資信託

契約型は、顧客(受益者)が購入する投資信託の販売・運用・管理を、それぞれ証券会社(販売会社)・投資信託委託会社(委託者)・信託銀行(受託者)の3者が分担して行っています。
委託者指図型の場合は委託者である投資信託委託会社が運用の指図をします。有価証券※への投資を主とする証券投資信託が多く、現在の主流はこの形です。
レアなものとして委託者非指図型というのもあり、この場合は顧客(受益者)が委託者も兼ねる形で運用も指図しますので2者で成立します。この場合の主な投資先は有価証券以外の金融資産や不動産などになります。

※ちなみに有価証券とは株式・債券・手形・小切手などのこと。要は金銭的な価値のある「紙」

委託者指図型投資信託

信託財産を委託者の指図に基づいて主に有価証券等に対する投資として運用する。受益権を分割して複数の者に取得させることを目的とする。

委託者非指図型投資信託

委託者の指図に基づかずに受託者が運用する。主に有価証券以外(証券投資信託以外)に投資する投資信託。2者で成立する。

会社型投資信託

こちらは会社型といい、顧客は投資会社である投資法人に投資します。そして投資法人の運用益を受け取るタイプの投資信託になります。気に入った会社の株を買うような感覚に近いです。ですから顧客は投資主総会に参加する権利も持ちます(株主総会的な)。

投資法人は、投資信託委託会社や信託銀行などの外部機関に管理運用を委託することが義務付けられています。 また、配当可能利益の90%超を顧客に分配する事など、一定の要件を満たすと法人税が免除されます。

国内の証券取引所に上場されている投資法人は、不動産投資法人(JーREIT)やベンチャー企業を投資対象とするベンチャーファンド、太陽光発電等をインフラファンドなどがある。

       

運用会社の運用手法による分類

運用スタイル

パッシブ運用

ベンチマーク(日経平均株価やTOPIXなどの指標)に連動する投資成果を目指す運用手法。インデックス型ファンドやETFの運用手法。

アクティブ運用

ベンチマーク上回る投資成果を目指す手法。株式市場全体が上下しても、常に将来株価が上昇する銘柄を探し続ける。

マーケットニュートラル運用

割安銘柄の買建てと割高銘柄の売建てを同時に行いながら、市場変動の影響を受けないように運用していく手法。ヘッジファンドに使われる。ただし、見通しが外れると売りと買いの両方から損失が出る恐れもある。

       

ロングショート運用

マーケットニュートラル運用の金額比を変え、先行きが強気のときは買い(ロングと言う)の割合を強め、弱気のときは売り(ショートと言う)を強めます。それにより株価の値上がり局面でも値下がり局面でも利益を獲得できるような運用を目指します。

スマートベータ運用

その銘柄の財務指標(売上高、キャッシュフロー、配当金など)や株価の変動率、成長性の現在価値といったその銘柄特定の要素に基づいて運用する。市場平均を上回るリターンを目指す。スマート(賢い)ベータ(市場平均連動性)運用。 FP試験的には「なんかこだわったかっこいい運用法」ぐらいで覚えておけば間違わないと思います。

       

運用会社の銘柄選択手法

トップダウンアプローチ

マクロ的な視点で経済環境を分析し資産配分を決定。そこから組み入れ銘柄を決めていく手法。たとえば海外ファンドならどの国に何割ずつ割り振るかを決めてからそれぞれの国の個別銘柄を決めていくような感じ。

ボトムアップアプローチ

個別銘柄選択を重視。個別企業の調査分析を密にし、企業訪問などを重ねて銘柄を決定。その積み上げによりファンドを設計する手法。マクロ経済による経済の状況などには注目せず。個別企業の業績を重視。

       

銘柄選択の際の着眼点

グロース投資

個別銘柄の成長性を重視し銘柄選択をする手法。PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)が多少高くても今後の成長を期待して投資する。低配当になりやすい。このような手法で作られたファンドでグロースファンドというものがある。

バリュー投資

個別銘柄の割安性に注目して銘柄選択をする手法。PERやPBRが市場平均より低い銘柄を狙う。

       

最近の投資手法

ESG投資

環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視・選別して行なう投資のことです。
近年欧米を中心に投資額が拡大してきており、収益性だけで判断しないので、投資本来の「企業を応援する」という価値観に戻りつつあるとも言える。
こういった企業は結果的に成長の持続性が高くなり、投資先としても安定性が高いと言われている。

外部リンク:金融庁

       

それでは過去問を解いてみましょう。2021年9月試験 学科 問17

株式投資信託の運用スタイルに関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

  1. マーケット・ニュートラル運用は、割安銘柄の売建てと割高銘柄の買建てを同程度行い、市場の価格変動による影響を排除して、安定的な収益機会の獲得を目指すものである。
  2. ESG投資は、定量的な財務情報などに基づく投資判断だけではなく、環境・社会・企業統治の観点から、経営の持続性・収益性などを評価したうえで、投資先を選定する手法である。
  3. バリュー投資は、PER・PBR等が低い銘柄、配当利回りが高い銘柄など、企業の業績や財務内容等から株価が割安と判断される銘柄を選定して買い付ける手法である。
  4. スマートベータ運用は、東証株価指数(TOPIX)などの時価総額加重方式とは異なる方法で、構成銘柄やウェイトを決定したインデックスに連動する投資成果を目指すものである。

.

.

.

解答

Wiki技能士

割安の買いと割高の売りを繰り返していくのがマーケットニュートラル運用なので、設例は真逆になっています。損しちゃいそう。
2は最近流行のやつです。SDGsからの流れで、環境に配慮している会社が人気になるからそこに投資しようって動きです。雑に言うと。
3はバリューなので安いヤツ狙ってるわけです。あ、でも基準価額が低いヤツって意味ではなく「割安」です。注意。
4はスマートベータ。スマートってかっこいいって意味ですよね。なんか1個1個こだわって市場平均に連動(β)させるやつです。キザな奴です。