居住用財産の譲渡の特例|FP1級Wiki

譲渡には各種特例があり、応用編でも頻出です。
応用編では居住用財産、事業用財産と出題されますが、ここでは居住用財産の譲渡の特例について学習していきましょう。
応用編対策をしたい方は専用ページをご覧ください。

この項目で学習するのは以下の特例です。

  • 居住用財産の譲渡所得の特別控除(3,000万特別控除)
  • 居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の特例(軽減税率)
  • 特定の居住用財産の買換えの特例
  • 被相続人の居住用財産(空家)の特別控除(空き家3,000万特別控除)
       

各特例共通の適用要件

  • 居住用財産の各種特例は3年に1回適用できる
  • 配偶者、直系血族、生計を1にする親族に譲渡する場合は適用できない
  • 住まなくなってから3年後の12月31日までに譲渡すれば適用できる(その間[空家3,000]以外は賃貸していても良い)

住宅ローン控除等と他の特例との重複適用の禁止

個人が、新規居住開始した年から3年目に該当する年中に従前住宅を譲渡した場合で、

  • 居住用財産の譲渡所得の特別控除(3,000万特別控除)
  • 居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の特例(軽減税率)
  • 特定の居住用財産の買換えの特例
  • 既成市街地内の中高層耐火建築物等の建設のための買換え特例(立体買換えの特例)

上記の特例を受ける場合、新規住宅については以下の特例は適用されない。

  • 住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除(住宅ローン控除)
  • 認定住宅の新築等をした場合の所得税額の特別控除(修正申告が必要となる)
       

居住用財産の譲渡所得の特別控除(3,000万円特別控除)

特例の効果

主たる居住用財産(土地建物)の譲渡益から3,000万円まで控除することができる。
店舗兼住宅の場合は面積の割合で按分適用できる。居住用面積が90%を占める場合は全体を居住用と同様に扱える。

適用要件

  • 所有期間不問
  • 家屋を取壊し、土地のみの場合は、1年以内に譲渡契約を結び、居住しなくなってから3年後の12月31日までに譲渡する
  • 「主たる居住用財産」でなくてはならないので、家屋のみは適用できても、原則、土地のみというのはできないのだが、家屋の所有者と土地の所有者が同時に譲渡して、さらに親族関係で生計を1にしており、共に居住していれば、家屋の所有者の譲渡益から引ききれない分を土地の所有者の譲渡益から控除することができる(合計で3,000万円)
       

居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の特例(軽減税率)

特例の効果

3,000万円特別控除後の所得金額に対する税率が以下の通りに軽減される。

所得税住民税
譲渡所得6,000万円以下の部分(軽減税率)10%4%
譲渡所得6,000万円超の部分15%5%
復興特別所得税計算後の所得税に2.1%かかります

適用要件

  • 譲渡した年の1月1日で所有期間が土地家屋ともに10年超であること
  • 所有期間以外は3,000万円特別控除と同じ
       

特定の居住用財産の買換えの特例

特例の効果(100%課税繰延)

個人が居住用財産を買い換えた場合、譲渡した資産はその譲渡が無かったものとして課税が繰り延べられる。

  • 譲渡資産の価額≦買換資産の価額・・・譲渡がなかったものとされる
  • 譲渡資産の価額>買換資産の価額・・・差額部分についてのみ譲渡があったものとする

適用要件

譲渡資産の要件

  • 譲渡した年の1月1日で所有期間が土地家屋ともに10年超であること
  • 譲渡者の居住期間が通算10年以上であること
  • 譲渡対価の額が1億円以下であること

取得資産の要件

  • 前年、譲渡年、翌年に取得する事
  • 譲渡年の翌年末までに居住する事
  • 面積が建物50㎡以上、土地500㎡以下
  • 中古の場合、築25年以内か、新耐震基準を満たすこと。満たさない場合は期限までに改修が必要。
       

被相続人の居住用財産(空家)の譲渡所得の特別控除

これは相続人の居住用財産を被相続人が譲渡する場合です。
なので自分の居住用財産ではありませんが、FP試験対策的にはここでいっしょに覚えてもらいたい項目です。

特例の効果

相続開始直前までに被相続人のみが居住(ホーム等に移っていた場合も可)していた土地家屋を、相続や遺贈で取得し、それを譲渡した場合、
譲渡益から3,000万円まで控除することができる(R6.1.1以後の譲渡は、取得する相続人が3人以上の場合に、控除額が1人あたり上限2,000万円になる)。
確定申告書に譲渡資産の所在地を管轄する長から交付を受けた被相続人居住用家屋等確認書を添付する。
この特例は相続税の取得費加算の特例併用できない

適用要件

  • 1981.5.31以前に建築された家屋であること
  • 相続発生日から3年後の12月31日までに譲渡すること
  • 譲渡対価が1億円以下であること(すべての相続人の譲渡対価合計)
  • 相続時から譲渡時までに事業用・貸付用・居住用に供されていないこと
  • 建物を壊さずに譲渡する場合は、新耐震基準に適合すること(リフォームしても可)※

※R6.1.1譲渡分より、譲渡日の翌年2月15日までに耐震基準適合するか家屋を取り壊しても可

他の特別控除との併用

居住用財産の譲渡所得の3,000万円特別控除の対象事案が同一年に発生した場合、併用ができる。ただし合わせて3,000万円が限度となる。 また、住宅ローン控除や居住用財産の買換え特例も適用できる。

外部リンク:国土交通省

       

それでは過去問を解いてみましょう。2020年1月試験 学科 問40

「被相続人の居住用財産(空家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」(以下、「本特例」という)に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、各選択肢において、ほかに必要とされる要件等はすべて満たしているものとする。

  1. 介護保険法に基づく要介護認定を受けて相続が開始する1年前から特別養護老人ホームに入所していた被相続人Aさんがその入所直前まで居住していた家屋およびその敷地を相続したAさんの長男が、当該家屋およびその敷地を譲渡した場合、長男は本特例の適用を受けることができない。
  2. 被相続人Bさんが居住していた家屋およびその敷地を相続したBさんの長男が、当該家屋およびその敷地を譲渡した年中に自己が居住の用に供している財産を譲渡した場合、長男の譲渡所得の金額の計算上、最大6,000万円を控除することができる。
  3. 被相続人Cさんが居住していた家屋およびその敷地を相続したCさんの長男が、当該家屋およびその敷地を譲渡した前年に「特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例」の適用を受けていた場合、長男は本特例の適用を受けることができない。
  4. 被相続人Dさんが居住し、かつ、DさんとDさんの長男がそれぞれ2分の1の持分で共有していた家屋およびその敷地について、長男がDさんの持分を相続し、当該家屋およびその敷地の全体を1億2,000万円で譲渡した場合、長男は本特例の適用を受けることができない。

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解答

助手のウィキ子

はい、ウィキ子です♪
1は、OKです。更地にとかなってなくて使われていた形であれば。
2は、両方使って構わないんですが、合計で3,000万円となります。
3は、これも併用可能です。ただし、相続税の取得費加算は併用しちゃダメです。
4は、1億円以下じゃないといけないんで適切な説明です。

居住用財産の譲渡の特例