損益分岐点分析 | FP1級Wiki
損益分岐点とは、会社の収益がちょうどプラスマイナスゼロになる地点。分析することで会社の余裕度がわかります。FP試験では基礎編で、忘れたころに出題されますので押さえておく必要があります。ROE類の投資指標とは違い、頻出ではないためなかなか覚えにくいです。ROEがスタメンとすれば代打・代走ラインの選手と言えるこのあたりの項目(損益分岐点や配当割引モデル)をしっかり覚えておくと加点が狙えると思います。そこでこの2つは独立ページにしました。C分野の11と12はしっかり押さえておきましょう!
損益分岐点比率
損益がプラスマイナスゼロになる売上(損益分岐点)というのが全体の売上高の何%を占めているのか。
それを損益分岐点比率といいます。比率が低いほど会社の状態がいいということになります。
解くためにはまず最初に限界利益率が必要になるのですが、
限界利益率の導き方にはふたつの方法があります。
変動費÷売上高=変動費率
1-変動費率=限界利益率
もしくは、
売上高ー変動費=限界利益
限界利益÷売上高=限界利益率
になります。
限界利益率を次の式に当てはめて損益分岐点売上高を導き出します。
損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率
損益分岐点売上高がわかったところで分母である売上高で割れば比率がわかります。
損益分岐点比率(%)=損益分岐点売上高÷売上高×100
※固定費が、売上高の増減に関わらず一定した金額の損失を示すのに対して、
変動費は売上高に比例して増減する費用の事です。
イメージとしては、お店で言うと「固定費がお店の家賃」で、
変動費が「商品原価」といったところでしょうか。
経営安全率
損益分岐点分析関連問題の選択肢の中に登場しましたのでオマケとして載せておきます。
経営安全率=経常利益÷限界利益
経常利益=限界利益-固定費
限界利益=売上高ー変動費
難問解説(FP1級応用編2020.9月.問55)
2020年9月実施のFP1級応用編問55にて、
変動費や固定費の金額が与えられない状態での損益分岐点比率を求める問題が出題されました。
今後も出題される可能性がありますので、解説いたします。
問55 《設例》の〈X社とY社の財務データ等〉に基づいて、X社の損益分岐点比率を求めなさい。
〔計算過程〕を示すこと。なお、計算過程においては端数処理せず、〈答〉は表示単位の小数点以下第3位を四捨五入し、小数点以下第2位までを解答すること。
また、変動費は売上原価に等しく、固定費は販売費及び一般管理費に等しいものとする。
X社 | 金額(単位:百万円) |
---|---|
売上高 | 2,000,000 |
売上総利益 | 188,000 |
営業利益 | 80,000 |
※表は抜粋です
<解説>
それでは解説していきます。損益分岐点比率を求める式は上記の通りですから、式を使うために売上高、変動費、固定費を求めます。
売上高は表にありますのでそれを使います。変動費と固定費が表にないのでこれを計算で出すと良いです。
問題文を読むと、固定費は「販売費及び一般管理費」に等しいとなっています。
ちなみに販売費は商品や製品を販売するために直接かかる費用、
一般管理費は会社全般の業務の管理活動にかかる費用の事です。
これを求めるための式があり、売上総利益-営業利益=販売費・一般管理費(つまり固定費)が出せます。
188,000-80,000=108,000 固定費は108,000百万円ということが分かります。
次に変動費ですが、変動費は売上原価に等しいとなっています。
ちなみに売上原価とは売れた商品の仕入れ原価のこと。
これを求める式は、売上高-売上総利益=売上原価(つまり変動費)
2,000,000-188,000=1,812,000 変動費は1,812,000百万円ということが分かります。
売上高 2,000,000百万円
変動費 1,812,000百万円
固定費 108,000百万円
これで必要なものが揃いました。あとは上記いずれかの計算方法で解いていきます。
変動費÷売上高=変動費率 1,812,000÷2,000,000=0,906
1-変動費率=限界利益率 1-0.906=0,094
もしくは
売上高-変動費=限界利益 2,000,000-1,812,000=188,000
(今回のケースでは変動費と売上原価が同じとしているので、限界利益は売上総利益と同じです。)
限界利益÷売上高=限界利益率 188,000÷2,000,000=0.094
この問題では限界利益がすでに判明しているのでふたつめの解き方が簡単ですね。
損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率 108,000÷0.094=1,148,936.17
損益分岐点比率=損益分岐点売上高÷売上高×100 1,148,936.17÷2,000,000×100=57.446
よって、損益分岐点比率は57.45%となります。
ただ、固定費が販売費と同額、変動費が売上原価と同額というのは少し実務的ではない気がしますね。
ちなみに今回出てきた売上総利益とはつまり「粗利」のことです。
それでは過去問を解いてみましょう。2019年9月 学科試験 問33
損益分岐点分析に関する次の記述のうち、適切なものはいくつあるか。
(a) 売上高が2億円である場合の変動費が6,000万円、固定費が4,000万円である企業は、固定費を1,400万円削減すれば、損益分岐点が2,000万円低下することになる。
(b) 売上高が2億円である場合の変動費が8,000万円、固定費が3,000万円である企業は、変動費率が10ポイント上昇すると、損益分岐点が2,000万円上昇することになる。
(c) 売上高が2億円である場合の変動費が8,000万円、固定費が4,000万円である企業が2億円の利益をあげるために必要な売上高は、4億円である。
1) 1つ
2) 2つ
3) 3つ
4) 0(なし)
↓正解は↓
aとcが正解なので、2番です。
aの問題は固定費を1400万とした場合の損益分岐点売上高を出せばわかります。
限界利益率0.7なので、1400÷0.7で2000万になりますから、
固定費が1400万下がると分岐点は2000万下がるのがわかります。
cの問題ですが、前述の式で解く場合、売上高4億円の場合の変動費を先に求めてから解くことができます。
まず変動費率はそのままで8000万÷2億円で0.4で出します。
ということは4億円の変動費は4億円×0.4で1億6000万。
ここで限界利益を求めます。
4億円ー1億6000万=2億4000万
固定費は売り上げが上がっても上がらないですから、
2億4000万-4000万で2億円。
4億円を売上げれば2億円の利益になるのがわかります。
2021年04月11日
損益分岐点分析を学ぶには実戦形式が良いと思いましたので、
例題主体にして詳細解説をしてみました。
何度も挑戦して体に覚えさせてください。
外部リンク:金融庁
タグ:損益分岐点分析