海外投資|FP1級Wiki
外国に投資したり預金したりすると為替相場の変動によって受取金額が変わります。外貨で運用する外貨建て金融商品を紹介します。
外国為替市場
外国為替市場とは、円やドルなど異なる通貨を交換(売買)する場所を言います。
市場と言っても実際に卸売り市場に集まって現物をやりとりするわけではなく、
為替取引の多くはそれぞれの場所で電話や電子機器を通じて行われます。
方法は大きくふたつ。
- 対顧客取引:個人や企業が金融機関と行う取引
- インターバンク取引:金融機関同士で直接、または外為ブローカー(インターバンクの仲介業者)を通じて行う取引
※インターバンクとは銀行間取引市場のこと
為替相場(為替レート)は交換するタイミングで異なっている。
- 直物レート:取引日から翌々営業日(2営業日)以内に通貨の受渡しをするときのレート。世間でよく言われる為替レートはこっちのこと。スポットともいう。
- 先物レート:取引日の3営業日目以降の特定した日に払い渡すレート。将来の通貨の交換が等価で行われると仮定して、互いの通貨の直物レートと金利差(スワップレート)によって決定する。未来の取引を今の相場を基準にして決めてしまうということ。例えば輸出企業がある契約をして、取引終了する数カ月後に外貨を受け取っても、契約時と為替相場が違ってはまともに取引できませんよね?投機的な言葉として先物が良く出てきますが、そもそもは取引を安定させるために存在するレートなのです。
先物レートが直物レートより安くなる場合をディスカウント、逆の場合をプレミアムと言います。
購買力平価説
スウェーデンの経済学者カッセルの唱えた為替レートの決定理論。
絶対的購買力平価と相対的購買力平価の2パターンが存在する。
現在でも研究・利用されている理論。
絶対的購買力平価説
為替レートは2国間の通貨の購買力によって決定されるという説。一物一価の法則により、例えばアメリカで1ドルで購入できるジュースがあったとして、それが日本で100円で売られていた場合。1ドルと100円の購買力は等しくなることから1ドル=100円が妥当ではないかというのがこの説の考え方。しかしこれは互いの国同士のすべての財とサービスが自由に貿易できて初めて完全成立する考え方であり、厳密には成り立たない。
相対的購買力平価説
為替レートは2国間の物価水準の変化に連動して決定されるという説。正常な自由貿易が行われていた時期の為替相場を基準として、そこからの物価水準の変化を計算する。例えば片方の国の物価が上昇すればその国の通貨の価値は下がるため、その通貨の為替レートは下落するという考え方。これまた、完全成立するにはすべての財やサービスの物価が同じ水準で変化するべきであり、厳密には成り立たない。2つの説ではこちらを利用するのが周流となっている。
最近ではイギリスの経済誌が提唱するビッグマック指数やトールラテ指数なんていうのもある。
TTSとTTB
TTSとTTBはTTM(仲値)を基準にそれぞれ為替手数料を加えたもの。
預ける時も引き出す時も顧客が手数料を負担するので、
それ以上にその通貨の価値が上がっていないと損することになる。
例:円と米ドルの関係でいくと、為替手数料は1円なのでTTM(仲値)が100円の場合、TTSが101円、TTBが99円となる。
1ドルを101円で買うことになり、現状では円に戻すと99円になるので、2円損してしまう。
将来的に2円以上の円安が発生すればプラスに転ずるということになる。
為替手数料は通貨によっても異なり、
米ドルやユーロといったメジャーな通貨の場合は比較的安く、
マイナーな通貨ほど高いのが通常。
TTS(対顧客電信売相場)
顧客が円で外貨を買う(つまり円から外貨へ交換する)際の為替レート。外貨預金の預入に適用するレート。
この中には外貨の販売手数料が含まれている。
TTB(対顧客電信買相場)
銀行が顧客から外貨を買い取る(つまり外貨から円に交換する)際の為替レート。利息や満期金の受取時に適用するレート。
この中には外貨の買取手数料が含まれている。
外貨預金の特徴
預金の種類 | 普通預金・当座預金・通知預金・定期預金 |
預入金利 | 外貨定期預金の場合、1ヵ月・3ヵ月・6ヶ月・1年が一般的 |
金利 | 金融機関や通貨、預入金額によって異なる |
途中換金(中途解約) | 定期預金は原則として途中換金できないとするところが多い。 |
税金 | 利息は利子所得として20.315%の源泉分離課税(海外口座の預金利息は総合課税)。 元金部分の為替差益は雑所得として総合課税。 為替先物予約を付けた場合の為替差損益は、利息部分も含めて20.315%源泉分離課税 |
預金保険制度 | 対象外 |
外貨預金の円換算利回りの計算
外貨預金の利回り計算は、TTSとTTBが加わるので注意が必要。
過去問で解説します。2019年9月応用編
〈米ドル建定期預金の概要〉
- 預入期間 : 6カ月満期
- 利率(年率): 1.2%(満期時一括償還)
- 適用為替レート(円/米ドル)
TTS | TTM | TTB | |
---|---|---|---|
預入時 | 109.50円 | 108.50円 | 107.50円 |
満期時 | 112.20円 | 111.20円 | 110.20円 |
問題:為替予約を付けずに円貨を外貨に交換して当該外貨預金に預け入れ、満期時に円貨で受け取る場合における利回り(単利による年換算)を求めなさい。また、6カ月は0.5年として計算し、税金等は考慮しないものとする。
公式は上から三段式になってますよね。上から順に当てはめます。
まず1段目から。TTBのBはBack(バック)のB(ほんとは違いますが)。お金がバックする時。つまり満期時のTTBです。
110.20×(1+0.012×0.5)=110.8612
2段目のTTS。SはスタートのS!!(ほんとは違うけど)。預入時のTTS→109.50を当てはめます。その後マイナス1します。
(110.8612÷109.50)-1=0.01243105
最後の3段目は期間。設問は6ヶ月ですから0.5年。0.5年で割ります。その後、100を掛けます。
0.01243105÷0.5×100=2.48621
試験では小数点第3位を四捨五入しますので、
2.49%
となります。
応用編の計算問題で結構出ます。しっかり覚えましょう。
外国債券
外国債券とは、発行体、通貨、発行市場のうちのいずれか1つでも外国のものを言う。課税関係は、利子は源泉徴収、償還差益・売却益は申告分離課税です。
通貨による分類
購入 | 利払い | 償還 | 為替リスク | |
---|---|---|---|---|
円建外債(サムライ債・ユーロ円債) | 円貨 | 円貨 | 円貨 | なし |
外貨建外債(ショーグン債) | 外貨 | 外貨 | 外貨 | あり |
デュアルカレンシー債 | 円貨 | 円貨 | 外貨 | 償還時のみあり |
リバース・デュアル・カレンシー債 | 円貨 | 外貨 | 円貨 | 利払時のみあり |
デュアルカレンシー債は円円外、リバースデュアルカレンシー債は円外円で覚えましょう。
外国債券(米ドル建て債券)の円換算利回り
外国債券の場合は債券なので、債券価格の変動があります。為替金額と債券価格、そして額面金額。
頭が混乱してきますが、公式を覚えてしまえば遅るるに足りません。
外貨預金の式よりも複雑になっています。
これも過去問を使用して解説します。2020年9月応用編
〈米ドル建債券の概要〉
- 利率(年率):1.5%(米ドルベース、年2回利払)
- 残存期間 :5年
- 単価(額面100米ドル当たり)および適用為替レート(円/米ドル)
単価 | TTS | TTM | TTB | |
---|---|---|---|---|
購入時 | 102.50米ドル | 110.00円 | 109.00円 | 108.00円 |
売却時 | 101.75米ドル | 111.75円 | 110.75円 | 109.75円 |
問題:為替予約を付けずに円貨を外貨に交換して当該債券を購入し、1年6カ月後に売却して、売却金額と3回分の利子をまとめて円貨に交換した場合における所有期間利回り(単利による年換算)を求めなさい。1年6カ月は1.5年として計算し、税金等は考慮しないものとする。
公式さえ暗記できていれば先ほどの外貨預金と同様です。上の段から解いていきます。1段目はバックの段です。
109.75×(101.75+100×0.015×1.5)=11414
2段目です。2段目はスタートの段です。その後、1段目をそれで割ってから1を引きます。
110.00×102.50=11275 (11414÷11275)-1=0.012328159
3段目は期間の段。期間で割って最後に100を掛ければ完成です。
0.012328159÷1.5×100=0.8218772
0.82%
となります。
ストリップス債(米国債)
ストリップス債とは、利付債の元本部分とクーポン部分を分離してそれぞれゼロクーポンの割引債として販売されているものをいいます。
STRIPSは「Separate Trading of Registered Interest and Principal of Securities」の略。
元本部分は利付債の償還日を満期とする割引債、各クーポン部分は支払期日を満期とする割引債として販売される。
外国投資信託
外国投資信託の特徴
外国において外国の法令の基づいて設定・運用される投資信託。国内で販売される外国投資信託は国内の投資信託と同様の規制を受ける。
外貨建てMMFの特徴
外貨建てMMF(マネーマネージメントファンド)は、外国公社債投資信託の一種である。海外の短期国債やCD(譲渡性預金)、CP(コマーシャルペーパー)等を組み入れて運用し、株式は組み入れない。国内の証券会社に預託した外貨建MMFは、投資者保護基金の補償対象となる。
- CD(大口預金者向けの、自由に売買できる定期預金。都市銀行発行が多く、その場合は短期銀行債のような性格を持つ。)
- CP (企業が短期で資金調達するための、無担保の約束手形。短期金融商品とされる)
信託期間 | 無制限とするのが通常。購入、換金ともにいつでも自由に行うことができる。 なお、信託財産留保額が差し引かれることはない。 |
収益分配 | 実績分配。分配金は毎日計算され月末にまとめて再投資される。 |
為替手数料 | 米ドル建MMFの場合、片道50銭(往復1円)とするところが一般的 |
税金 | 収益分配金、売却益(為替差益)ともに20.315%の申告分離課税 |
その他 | 外国投資信託など外国証券取引を行う場合には「外国証券取引口座」を開設する必要があるが、 外貨建MMFだけを利用する場合には口座管理料は不要である。 |
外国為替証拠金取引(FX)
一定の証拠金を担保に外国為替の売買を行う取引。為替の信用取引のようなものです。
証拠金倍率は最大25倍に制限されている(取引額の4%以上の証拠金の預託が必要)。
外国株式の海外委託取引(外国取引)
国外の株式市場に上場している外国株式について、海外の市場に取り次ぐ委託方法です。指値および成行での注文が可能です。国内での手数料の他に現地手数料も発生します。
これに対して、国内市場に上場されている外国株式を取引する国内委託取引があります。こちらは円建てで取引ができ、銘柄によっては信用取引も行えます。
米国株式信用取引
2022年7月に解禁になった米国株式信用取引。制度上は外国株式信用取引となります。米国のルールで運用となるため、委託保証金率が50%であったり(日本は30%)、手数料の計算方法や諸費用の概念が全く違っていたり(品貸料、逆日歩などはない)、ストップ高やストップ安が無いなど、違いには充分注意する必要があります。
海外投資の過去問いっぱい出したので過去問チャレンジはありません。
外部リンク:金融庁
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