株式投資|FP1級Wiki
社債も株式投資も会社にお金を渡す点では似ています。
債券の項目で登場した事業債(社債)は純粋な会社の借金ですから会社は返済の義務があります。元本と利息を会社が保証するもの(倒産や払い渋りはあるかもですが)なので、それなりに手堅い商品なのです。それに対し、株式投資は投資。資本協力してあげますよーということですので返済の義務がありません。償還期限も無く、投資資金を回収するには非上場株式ならその会社に買い取ってもらう(金庫株)か個人売買、証券取引所に上場している上場株式の場合は株式市場で売却することになります。市場取引なので価格は当然変動します。ここでは金融商品としての株式の解説ですので上場株式を軸に解説していきます。
株式とは
株式会社に出資した人の持分を表した有価証券のこと。出資者の利益は利息ではなく、出資した資本を元に会社が利益を上げ、その利益を還元すること(株主配当金)で出資者は利益を得られます。これはインカムゲインと言います。
また、会社が利益を事業に再投資し、企業価値を高めて株価を上昇させることで出資者に利益をもたらすことをキャピタルゲインと言う。
その他にも株主優待を受けられるものもある。
株主の3つの権利
- 経営参加権:その会社の株主総会に参加して持株数に応じた議決権の行使ができる。
- 剰余金分配請求権:会社から配当を受ける権利。株主総会で決める。
- 残余財産分配請求権:会社が解散したときに持株数割合に合わせて残った財産の分配を受ける権利
全国の証券取引所
売買を行う証券取引所は全国に現在4カ所あります(先物などのデリバティブ市場のぞく)。取引所ごとで取り扱う市場(マーケット)と株式が違うのですが、重複上場するケースが多く、さらに電子取引により重複上場すら必要性がなくなってきたため、東京集中になりそうな流れです。
東京証券取引所
日本最大の取引所。
2022年4月4日から新たにプライム・スタンダード・グロースの3市場編成になりました。
名古屋証券取引所
名証1部・名証2部・セントレックスの3市場。
東証に重複上場している企業が多く、企業数も減少中。
札幌証券取引所
本則市場とアンビシャスの2市場。
名古屋同様取引量は少ないが、新宿本社のRIZAPグループがアンビシャスに上場してるおかげで、東京に次いで2番目の規模。
福岡証券取引所
本則市場とQ-Boardの2市場。
こちらも上場廃止申請が多くなっており、企業数は減少中。
売買の仕組み
全国の証券取引所において上場株式の売買単位は100株単位となっている。
取引所取引
- 立会内取引:証券取引所の立会時間内に行われる取引。集まった注文は、価格優先の原則を第一に、次に時間優先の原則で実行される。
- 立会外取引:立会内取引以外の取引。主なものとして、単一銘柄取引・バスケット取引・終値取引・自己株式立会外買付取引。東証の場合、これらはすべて電子取引市場(ToSTNeT)で売買される。
※ToSTNeTとは東証の立会外取引専用の売買システム。上記4種の売買ができます。
売買の原則
市場ではこのふたつの原則に従い売買が行われています。
- 価格優先の原則:取引所に集まる注文の中で、同じ売り注文では呼び値の低いほうを優先、同じ買い注文では呼び値の高いほうを優先するというもの。
- 時間優先の原則:取引所に集まる注文の中で、同じ注文が重なった場合、先に注文したほうを優先するというもの。
※呼び値とは株式売買特有の呼び名で、購入金額の事。種類や金額の大きさによって刻み幅が変わる。
注文の種類
売買の原則に沿って以下の注文方法がある。
- 指値注文:売買価格を指定する注文。買値の上限、売値の下限を決めて売買する。その金額を越えては売買しない。
- 成行注文:売買価格を決めない注文。いくらでもいいから買う。売る。ということなので最も優先されて売買されるが、相場の急激な変動で損することもある。
売買の種類
取引所の売買には板寄せ方式とザラバ方式という2つの売買方法がある。
板寄せ方式
売方と買方の指値(気配値という)の売買注文状況を並べた控えを「板」と呼びます。この板の記載上で売呼値と買呼値を優先順位の高いものから順次対当させながら、数量的に合致する値段を求め、その値段を単一の約定として始値を決定し、売買契約を締結させる方法。
始値が決定するまでの呼値については、すべて同時に行われたものとみなすため時間優先の原則は適用されない。
ザラバ方式
ザラバ方式は、始値が決定された後に、売買立会時間中継続して個別に行われる売買契約の締結方法(ザラバ=寄り付けと引けの間を言う)。
ザラバ方式は、価格優先の原則と時間優先の原則に基づき、連続的に売買が成立する。
受け渡し時期
代金受け渡しは、約定日(売買成立日)から起算して3営業日目。
配当の受取方法
配当の受け取り方法は以下の4種類。
- 株式数比例配分方式:すべての銘柄について、各証券会社に預けている株式数保有残高に応じて、各証券口座で受け取る方法。電子的。
- 配当金領収証方式:送られてくる配当金領収証を持って金融機関等で現金を受け取る方法。従来からあるアナログ的。
- 登録配当金受領口座方式:各証券会社に預けるすべての銘柄について、あらかじめ指定した1つの金融機関口座で受け取る方法。簡便。
- 単純取次方式(個別銘柄指定方式):銘柄ごとに金融機関口座で受け取る方法。指定にはいろいろ条件がある。
配当を受け取るためには配当権利確定日の2営業日前にあたる権利付き最終日までに株式を購入しておく必要がある。
株式の購入方法
株式累積投資(るいとう)
投資家が決めた同一銘柄の株を、毎月一定金額(1万円以上100万円未満で1,000円単位)で買い付けていく積立方式の投資方法。投資銘柄は証券会社が選定した中から自由に選ぶことができる。株式の名義人は証券会社となり、持分に応じて配当金が配分される。単元株(100株)に達すると自己名義に変わり、議決権も持てるようになる。
株式ミニ投資(ミニ株)
通常100株単位でしか買えない株式ですが、10分の1の10株単位で買えるようにするのがミニ株です。銘柄はこれも選定された中から自由に選べて、名義人は証券会社。売買注文の翌営業日が約定日となる。指値注文はできない。配当金も持分に応じてとなる。複数回購入し、単元株に達すると自己名義に変わり議決権も持てる。
信用取引
証券会社に取引の3割程度の委託保証金を差し入れ、買付に必要な資金を証券会社から借りて買付したり、売付に必要な株式を借りて売付(俗にいう空売り)したり、元々の資金よりも大きな売買を行う取引。借りている分、金利コストが発生する。
担保として差し入れる委託保証金は国債や上場株式などの有価証券でも代用できる。
(代用有価証券の場合、国債のは額面金額95%、上場株式は時価の80%が評価額となります(非上場株式は不可))
金額は約定価額(取引金額)の30%以上で最低30万円と定めているのが一般的。
少ない手元資金で大きな取引ができるため、レバレッジ(てこ)効果が期待できるが、当然、損失にもレバレッジが掛かるため多額の損失を被ることもある。
必要委託保証金=約定代金×委託保証金率
新規建可能額=信用担保余力÷委託保証金率
- 新規建可能額:新たに買建注文または売建注文可能な上限金額
- 信用担保余力:受入委託保証金のうち次の新規建てに必要な保証金として充当することができる額
建株を反対売買※して確定利益が生じた場合、その日のうちに新たな信用取引の委託保証金として利用することができる。
※ 反対売買:信用取引において、買った銘柄を売る、売った銘柄を買う、それをその差額で行うこと
- 信用取引なら仮に委託保証金率30%の場合、30万円差し入れれば100万円約定できます。
- 信用取引には制度信用取引と一般信用取引の2種類が存在します。
制度信用取引
金融商品取引所(証券取引所や金融先物取引所のこと)が定めた制度に従って行う信用取引。
返済期限が最長6ヶ月と決まっている。
取引できる銘柄が制度によって決められているが、買方・売方金利は各証券会社が定めている。
証券会社と証券金融会社(貸借取引のために貸し付ける会社)との間で、
制度信用取引のための金銭や株式の貸借を行う取引を貸借取引という。
貸借取引において、証券金融会社が取引する銘柄(貸借銘柄)を外部の株主(機関投資家など)から調達する場合がある(売りが殺到して手持ちがなくなった場合など)。
その場合は外部調達費用として逆日歩(品貸料)が発生することがある。
発生した場合は信用取引の売り方側が費用を負担する。
逆日歩は一般信用取引には発生しない。外部から調達することをしないためである。
一般信用取引
売買の規則を証券会社が自由に決めることができる信用取引。
取引銘柄は上場全銘柄から証券会社が自由に選べる。
貸借取引はできないので逆日歩は発生しない。
そのため人気銘柄は在庫切れで買えないなんてこともある。
デメリットとして制度信用取引より金利コストが高いということがある。
一般信用取引は返済期限が無いが、合併や株式分割などが起きたときや、
調達困難の事態になった時は返済期限が設定されることがある。
制度信用取引と一般信用取引の共通事項
- 信用取引の決済法には、反対売買による方法と受渡決済による方法とがある。
- 信用取引において建玉(たてぎょく)となっている株式が株式分割を実施した結果、単元未満株(100株未満)が発生した場合は、建値調整(価格調整)が行われる。
- 相場の変動で建玉の評価損が拡大し、保証金維持率が基準を下回ると追加保証金(追証)を差し入れなければならない。期日まで追証ができないと証券会社は反対売買などによって強制的に決済してしまう。
建玉と反対売買について
建玉(たてぎょく)とは取引を行っている状態を表すもので、まだ決済されていない状態をいう。
先物や信用取引は要はお金を借りて株を売ったり買ったりしているわけなので、当然借りたものは返さなければいけませんから、株を売った場合、それを返すために期限(6ヶ月が主流)までにはその株を市場から買戻さなければならないし、株を買った場合はその逆をして、清算しなければなりません。
これを反対売買(最初と反対の事をするから)と言います。
その反対売買がまだされずに残ってしまっている状態を建玉というのです。
買い建てた株の残りは「買い建玉」、売り建てた株の残りは「売り建玉」となります。
反対売買は同時期の買いと売りの差額で行います。
外部リンク:金融庁
株式投資に関する過去問を解いてみましょう。2019年5月試験 学科 問21
株式の信用取引に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 制度信用取引については、制度信用取引を行うことができる銘柄、品貸料、弁済の繰延期限が証券取引所の規則等により定められている。
- 委託保証金率が30%である場合に、30万円の委託保証金を金銭で差し入れているときは、約定金額100万円まで新規建てすることができる。
- 委託保証金代用有価証券として国債を差し入れた場合、当該国債の額面金額の金銭を差し入れたものと同等に取り扱われる。
- 証券会社において、株式の信用取引に係る委託保証金および委託保証金代用有価証券は分別管理の対象とされ、投資者保護基金の補償対象にも含まれる。
.
.
.
解答
3
なんとなくでも当てれそうな問題ですが、国債は元本堅いとはいえ、額面通りとはいきませんね。
1は設例の通り。
2は3割程度ですから30万なら100万ですね。
4は25.セーフティネットにあります。
タブ:株式投資