税額控除・特別償却|FP1級Wiki

法人に対する税額控除や特別償却などの優遇税制はたくさんあり、随時改正されています。覚えるのが大変ですが、出題率も高いです。すべて覚えるにはかなりのボリュームになってしまうので、中小企業者を中心に過去の傾向から見て載せています。今後も新しい制度が発表されれば更新していきます。頑張っていきましょう。

       

法人税法上の税額控除

預金の利子や株式の配当などに対する源泉所得税(復興特別所得税を含む)は、その事業年度の所得に対する法人税の額から控除することができる。

租税特別措置法上の税額控除・特別償却

中小企業投資促進税制

青色申告書を提出する中小企業者等(資本金1億円以下)が一定の機械装置、ソフトウェア等を取得し、指定事業の用に供した場合は、次のいずれかの適用(税額控除は資本金3,000万円以下の法人のみ適用可)が認められる。

  • 取得価額の7%特別税額控除(事業年度の法人税20%が上限)
  • 取得価額の30%特別償却限度額の加算

税額控除の控除しきれない分は1年間繰越することが出来る。

(07.03.31)

中小企業経営強化税制

青色申告法人である中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けた中小企業者等が、
特定経営力向上設備等を取得等して事業の用に供した場合は、即時償却または税額控除(事業年度の法人税20%が上限)を選択適用できる。
税額控除の控除しきれない分は1年間繰越することができる。

資本金3,000万円以下:即時償却または10%税額控除
資本金3,000万円超1億円以下:即時償却または7%税額控除

対象となる経営力向上設備等は、生産等設備を構成する機械装置、工具、器具備品、建物付属設備および一定のソフトウェアで、 経営力の向上に著しく資するもののうち一定規模のものである。

生産性向上設備(A類型)

要件:生産性が旧モデル比、年平均1%以上改善する設備

設備(金額と販売時期)

  • 機械・装置160万円以上10年以内
  • 測定工具および検査工具30万円以上5年以内
  • 器具備品30万以上6年以内
  • 建物付属設備60万円以上14年以内
  • ソフトウェア70万円以上5年以内

確認者:工業会等

       

収益力強化設備(B類型)

要件:投資収益率が年平均5%以上の投資計画に係る設備

設備(販売時期は問いません)

  • 機械・装置160万円以上
  • 工具30万円以上
  • 器具備品30万円以上
  • 建物付属設備60万円以上
  • ソフトウェア70万円以上

確認者:経済産業局

デジタル化設備(C類型)

要件:遠隔操作、可視化、自動制御化のいずれかに該当する設備

設備(販売時期は問いません)

  • 機械装置160万円以上
  • 工具30万円以上
  • 器具備品30万円以上
  • 建物付属設備60万円以上
  • ソフトウェア70万円以上

確認者:経済産業局

経営資源集約化に資する設備(D類型)

要件:有形固定資産回転率または修正ROAが向上する設備

設備(販売時期は問いません)

  • 機械・装置160万円以上
  • 工具30万円以上
  • 器具備品30万円以上
  • 建物付属設備60万円以上
  • ソフトウェア70万円以上

確認者:経済産業局

(07.03.31)

       

賃上げ促進税制(旧所得拡大促進税制)

賃上げに取り組む企業・個人事業主を応援するための制度です(令和6年4月1日から改正されます。そちらは9月試験以降関係してくるためカッコ書きで併記します)。
適用期間:令和4年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始する各事業年度
(改正後:令和6年4月1日から令和9年3月31日まで適用)

大企業向け

雇用者全体の給与等支給額の増加額最大30%を税額控除。
(改正後は雇用者全体の給与等支給額の増加額の最大35%を税額控除。中堅企業も対象に。)

必須要件

継続雇用者の給与等支給額が前年度比で4%以上増加で25%税額控除。
もしくは
継続雇用者の給与等支給額が前年度比で3%以上増加で15%税額控除。
(改正後:3%は10%、4%は15%になり、5%で20%と7%以上で25%が新設)
(改正後:中堅企業は3%で10%、4%で25%の2コースとなる)

追加要件

教育訓練費が前年度比で20%以上増加でさらに5%税額控除。
(改正後:前年度比10%以上増加で5%税額控除。これは中堅向けもいっしょ)
(改正後:追加要件②が新設。大企業はプラチナくるみん(子育て推進企業認定)かプラチナえるぼし(女性活躍推進企業認定)で5%上乗せ控除。中堅企業はプラチナくるみんかえるぼし3段階目以上であれば良い)

税額控除額(法人税の20%までが上限)

(当期の給与支給額-前期の給与支給額)×25%もしくは15%(上乗せなら最大30%)

改正後(当期の給与支給額-前期の給与支給額)×25%もしくは10%(上乗せなら最大35%)

(06.03.31)

       

中小企業向け

雇用者全体の給与等支給額の増加額最大40%を税額控除。
(改正後は雇用者全体の給与等支給額の増加額の最大45%を税額控除。中小企業は5年繰越が可能に。)

必須要件

雇用者全体の給与等支給額が前年度比で2.5%以上増加で30%税額控除。
もしくは
雇用者全体の給与等支給額が前年度比で1.5%以上増加で15%税額控除。

追加要件

教育訓練費が前年度比で10%以上増加でさらに10%税額控除
(改正後は教育訓練費が前年度比で5%以上増加で10%税額控除)
(改正後は追加要件②が新設。くるみん(子育て推進企業認定)かえるぼし(女性活躍推進企業認定)2段階以上で5%上乗せ控除)

税額控除額(法人税の20%までが上限)

(当期の給与支給額-前期の給与支給額)×30%もしくは15%(上乗せなら最大40%)

改正後(当期の給与支給額-前期の給与支給額)×30%もしくは15%(上乗せなら最大45%)

(06.03.31)(09.03.31)

       

中小企業事業再編投資損失準備金(準備金の積立)

M&Aの買収企業として譲渡企業の株式を取得した際に、取得価額の最大7割までを同事業年度に損金算入することができる制度。
中小企業者のうち、事業承継等事前調査(実施する予定のDD※の内容)に関する事項が記載された経営力向上計画の認定を受け、株式取得によってM&Aを実施する場合に(取得価額10億円以下に限る)株式取得価額として計上する金額(取得価額、手数料等)の一定割合を準備金として積み立てた時は、その事業年度において損金算入できる制度です。
※DD(デュー・デリジェンス):M&Aを実施するにあたって、買手企業が売手企業に対して、財務や法務の状況 について詳細に調査すること。

  • M&A実施時 : 買手企業は、株式取得価額の70%までを準備金として積み立て⇒ 積立額を損金算入
  • 取崩要件該当時: 減損や株式売却等を行った場合は、準備金を取り崩す ⇒ 取崩額を益金算入
  • 5年経過後 : 措置期間後の5年間にかけて均等額で準備金を取り崩す ⇒ 取崩額を益金算入

(R6.4.1に改正し、拡充した上でR8.3.31まで延長します。認定からM&A実施までの手続きが見直されスピーディに。複数回のM&Aに対応。1回目70%、2回目90%。3回目以降100%になる。中堅企業も利用できるようになり、2回目のM&Aから活用できる。据置期間が10年に伸び、その後の5年間で取り崩すようになります。)

(06.03.31)(08.03.31)

中小企業防災・減災投資促進税制(特別償却のみ)

中小企業者(青色申告者)が行った防災・減災設備への投資を対象にその取得価額の18%相当額(令和7年4月1日以後に取得等をする対象設備は16%)の特別償却ができる制度。

適用要件

  • 青色申告書を提出する中小企業者であること(一定の法人を除く(大規模法人等))
  • 事業継続力強化計画または連携事業継続力強化計画の認定を受け、1年以内に設備投資を実施

特定事業継続力強化設備等(防災・減災設備)

対象設備具体例最低投資額
機械装置自家発電機、排水ポンプ等1台100万以上
器具備品制震・免震ラック、衛星電話等1台30万以上
建物付属設備止水版、防火シャッター、排煙設備等1基60万以上

(07.03.31)

       

研究開発税制

イノベーションを促進し国際競争力を確保する観点から、法人税が軽減される研究開発税制が設置されている。

研究開発税制の概要

研究開発税制は、法人税額から試験研究費の一定割合(1~14%)を控除できる制度
控除できる金額は原則、法人税の25%(設立10年以内等の要件を満たすベンチャー企業の控除上限については40%)が上限とされている。
企業形態により一般型中小企業技術基盤強化税制のいずれかを適用し、それぞれに上乗せ条件がある。
さらに該当する企業はオープンイノベーション型も併用できる

(08.03.31)

一般型

中小企業以外の企業はこちらになる。

税額控除額

試験研究費の額×控除率(1~14%)

※控除率は研究費から一定の割合で算出する。

控除上限は法人税額の25%相当額(恒久措置)
(設立10年以内等の要件を満たすベンチャー企業の控除上限
については、法人税額の40%)

控除上限額の上乗せ

試験研究費の額が平均売上金額の10%超の場合は控除上限をさらに最大10%まで上乗せ

       

中小企業技術基盤強化税制

資本金または出資額1億円以下の中小企業者が対象。

税額控除額

試験研究費の額×控除率(12~17%)

※控除率は研究費から一定の割合で算出する。

控除上限は法人税額の25%相当額(恒久措置)

控除上限額の上乗せ

試験研究費の額が平均売上金額の10%超の場合、もしくは増減試験研究費割合が12%超の場合に控除上限を最大17%上乗せ(時限措置)

       

オープンイノベーション型

特別研究機関や大学、その他の者と共同で行う試験研究費用、または委託して行う費用、中小企業に支払う知的財産権の使用料がある場合適用される。

税額控除額

特別試験研究費の額×控除率(20~30%)

※控除率は大学・研究機関が30%、ベンチャー等が25%、中小企業等が20%となっている。

控除上限は法人税額の10%相当額(恒久措置)

5G投資促進税制

青色申告法人が一定の導入計画に基づき、認定特定高度情報通信技術活用設備の取得等をして、国内にある事業の用に供した場合は、
特別償却または税額控除ができる制度。

  • 特別償却:取得価額×30%
  • 税額控除:取得価額×2023年度9%、2024年度3%(いずれも法人税額の20%上限)
       

デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制

デジタル技術を活用した企業変革を進める観点から、「つながる」デジタル環境の構築(クラウド化等)による企業変革に向けた投資について、

税額控除5%・3%)または特別償却30%)ができる。
※税額控除の控除上限は、カーボンニュートラルに向けた投資促進税制と合わせて当期の法人税額の20%を上限

カーボンニュートラルに向けた投資促進税制

2050年カーボンニュートラルに向け、
脱炭素化効果の高い先進的な投資(化合物パワー半導体等の生産設備への投資、生産プロセスの脱炭素化を進める投資)について、

税額控除(14%・10%・5%)または特別償却(50%)ができる。

※税額控除の控除上限は、デジタルトランスフォーメーション投資促進税制と合わせて当期の法人税額の20%を上限

外部リンク:国税庁,中小企業庁

       

それでは過去問を解いてみましょう。2020年1月試験 学科 問29

「中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除」(中小企業投資促進税制。以下、「本制度」という)に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

  1. 資本金の額が1億円である青色申告法人が、一定の機械装置を取得し、本制度の適用を受ける場合、特別償却と税額控除のいずれかを選択して適用を受けることができる。
  2. 一定の機械装置を取得し、本制度による特別償却の適用を受ける場合、償却限度額は、取得価額の20%相当額の特別償却限度額を普通償却限度額に加えた金額となる。
  3. 一定の機械装置を取得し、本制度による税額控除の適用を受ける場合、税額控除限度額は、当該事業年度の法人税額の20%相当額を限度として、取得価額の10%相当額となる。
  4. 本制度による税額控除限度額が当該事業年度の法人税額の20%相当額を超えるために、当該事業年度において税額控除限度額の全部を控除しきれなかった場合、その控除しきれなかった金額について1年間の繰越しが認められる。

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解答

助手のウィキ子

1は資本金3,000万以下じゃないと選択適用ができません。
2は特別償却は30%です。
3は取得価額の7%ですね。