不動産所得・事業所得|FP1級Wiki

青色申告者と白色申告者との違いが多く出題される傾向にあります。
応用編の計算問題では個人事業主の事業所得の計算が出ることがあります。

       

定義

不動産所得とは

不動産所得とは、土地や建物等の貸付、地上権・永小作権等の不動産の上に存する権利の貸付、船舶・航空機の貸付による所得をいう。
(詳しくは18.不動産賃貸と不動産収支も参考にしてください。)
不動産の貸付に係る所得の分類所得区分
食事の提供を伴う不動産の貸付(下宿など)事業的規模→事業所得
事業的規模に満たない→雑所得
土地の貸付の際に貸借人から受け取った権利金土地時価の1/2超→譲渡所得
土地時価の1/2以下→不動産所得
時間貸駐車場、自転車置き場で
自己の責任で他人のものを保管する場合
事業的規模→事業所得
事業的規模に満たない→雑所得
月極駐車場など、保管責任を負わない場合不動産所得
自社使用人に利用させる寮・社宅事業所得

事業的規模の判定

社会通念上、事業と称するに至る程度の規模で建物の貸付を行っているかどうかで判定する。
形式的には5棟10室基準と言われている。
貸付資産の内容形式基準
貸間、アパート等の場合貸与できる独立した室数がおおむね10室以上
独立家屋の場合おおむね5棟以上
土地の貸付1室の貸付に相当する土地の貸付件数を、おおむね5として判定
不動産の貸付が事業的規模と判定される場合であっても、所得区分は不動産所得で、事業所得ではない。
※不動産業者が販売の目的で取得した不動産を一時的に貸し付けた場合は事業所得になる(法第26条の7)
       

事業的規模か否かによる必要経費の扱いの相違

項目取り扱い
個別評価の貸倒引当金(将来発生する損失や費用)の設定・事業的規模に限る。
なお一括評価の貸倒引当金は不動産所得の場合は対象外
貸倒損失(回収できない売掛金)・事業的規模でない場合は、家賃の未収入金の貸倒れは
収入すべき年にさかのぼって収入がなかったものとされる。
事業的規模の場合は、貸倒れの生じた年の必要経費となる。
資産紛失(取壊し等)・事業的規模でない貸付不動産に生じた損失の金額は
不動産所得を限度として必要経費に算入される。
・事業的規模の場合は制限なしで必要経費に算入、
赤字になれば損益通算の対象となる。
専従者給与等事業的規模でなければ
白色申告者の事業専従者控除も
青色申告者の青色専従者給与も認められない
青色申告特別控除事業的規模でない場合は、
特別控除額が10万円に限定される。

事業所得とは

事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業などの事業から生ずる所得のほか、医師、弁護士、芸能人などの自由業による所得をいう。事業所得になる事業かどうかは、対価を得て継続的に行っているかにより判断する。
また、一般的には事業と考えられるものでも、不動産貸付業の所得は不動産所得となる。
       

通則

不動産所得金額・事業所得金額

所得金額=総収入金額-必要経費

収入金額

その年において収入することが確定した金額。

金銭だけでなく、物や権利その他の経済的利益により収入する場合は原則として、その時の時価によって収入金額を計上する。
商品等の受け渡しの事実が発生していたり、金額が確定している場合には確定があったものとされる。不動産所得の場合の収入計上時期は、地代や家賃が契約等により支払日が定められている場合はその日となり、定められていない場合は実際の支払日となる。権利金や礼金など返還を要しないものによる所得は、不動産の引渡日が収入の計上時期となる。

必要経費

収入を上げるために必要な売上原価、販売費、一般管理費、その他所得を生ずべき事業について生じた費用で、償却費等の特定の物をのぞきその年債務の確定したもの。

売上原価は、次の算式により計算する。

売上原価=年初棚卸資産の棚卸高+その年の仕入高(また製造原価)-年末棚卸資産の棚卸高

※製造原価は年初仕掛品の棚卸高+その年の総製造費用-年末仕掛品の棚卸高

売上原価に計上する棚卸資産の評価方法は6種類の原価法(個別法・先入先出法・総平均法・移動平均法・最終仕入原価法・売価還元法)と低価法のうちから選定し税務署長に届け出るが、届出をしない場合は、最終仕入原価法が評価方法とされる。

青色申告者低価法※を選択できる。

※低価法とは、現価と時価を比較し両者のいずれか低いほうを採用する棚卸資産の評価。時価が原価を下回るときは時価で評価し、逆に原価が時価を下回るときは原価のままとする。
       

租税公課

必要経費となるもの必要経費とならないもの
固定資産税、事業税、登録免許税、不動産取得税、消費税所得税、住民税、相続税、加算税、延滞税

減価償却

所得税では減価償却は強制償却であり、法人税と異なり償却をするかしないか選択できない。

減価償却の対象となる資産

有形固定資産建物、建物付属設備、構築物、車両運搬具、機械、備品など
無形固定資産鉱業権、工業所有権、営業権、ソフトウェアなど

減価償却の対象とならない資産

減価しないもの土地、借地権、電話加入権、書画、骨とう品
建築中建築中の建物など
棚卸資産販売用の建物、機械、車両運搬具など
少額資産使用可能期間1年未満または取得価額10万円未満で、支出時に必要経費に算入されたもの

減価償却の方法

建物や機械装置等の有形減価償却資産(鉱業用をのぞく)に対する方法には、定額法定率法がある。
定額法または定率法を選択できるものについては、いずれかを選定して税務署長に届け出ることとされている。
償却方法を選定して届け出なかった場合は、定額法により計算することになる(法定償却)。
       

償却方法の変遷

1998年4月1日以後取得の建物旧定額法または定額法
2007年3月31日以前に取得した減価償却資産(建物をのぞく)旧定額法や旧定率法など
2007年4月1日以後に取得した減価償却資産(建物をのぞく)定額法や定率法など
2016年4月1日以後に取得した建物付属設備および構築物定額法

旧定額法と旧定率法の償却費の計算方法

旧定額法取得価額×90%×旧定額法の償却率
旧定率法未償却残高※×旧定率法の償却率
※未償却残高=取得価額-前年までの償却費の合計額
取得価額の95%相当額まで償却した年分の翌年分以後は、期首帳簿価額から備忘価額として1円を控除した金額を5で割った金額が償却費の額となり、5年間で1円まで均等償却する。

定額法と定率法の償却費の計算方法

定額法取得価額×定額法の償却率
定率法未償却残高×定率法の償却率(以下、調整前償却額とする)
ただし、上記の金額が償却保証額を下回った年分以後は下記の式になる。
改定取得価額×改定償却率
償却保証額:資産の取得価額に当該資産の耐用年数に応じた保証率を乗じて計算した金額をいう。
改定取得価額:調整前償却額が初めて償却保証額に満たないこととなる年の期首未償却残高をいう。
改定償却率:改定取得価額に対しその償却費の額がその後同一となるように当該資産の耐用年数に応じた償却率をいう。
なお、いずれの償却方法であっても、資産を年の中途で取得・取壊しをした場合には、償却率を乗じた金額を12で割ってその年分において事業に使用していた月数分を乗じて計算した金額になる。
注)具体的な計算については試験には出ないと思います。参考にしたい方は国税庁ホームぺージをご覧ください。
取得価額が少額な減価償却資産について

タックスプランニング15.損金「減価償却」を参照

       

一定の親族に対して支払う家賃など

所得税では、原則として、事業主と生計を一にする親族に支払う給料、家賃、借入金の利子などは、その金額を必要経費に算入することができない
事業主側親族側
事業主と生計を
一にする場合
・親族に支払った利子、家賃などは、
必要経費にならない
・親族の支払った固定資産税などは、
事業主の必要経費になる
・受け取った利子、家賃などは、
所得にならない
(原則として課税されない)
事業主と生計を
一にしない場合
・親族に支払った利子、
家賃などは、必要経費になる
・受け取った利子、家賃などは、
所得になる(課税される)
貸倒引当金
必要経費に算入した貸倒引当金(一括評価、個別評価とも)は、翌年の所得金額の計算上、総収入金額に算入する。

個別評価する貸倒引当金

事業遂行上生じた売掛金等が、会社更生法や民事再生法等の規定により弁済が猶予された場合や回収の見込みがない場合は、一定の金額を必要経費にできる。青色申告者と白色申告者が繰入計上できる

一括評価する貸倒引当金

事業所得に係る売掛金等の一定割合を必要経費とすることができる
青色申告者が繰入計上できる
繰入限度額=年末日現在の売掛金等の帳簿価額の合計額×55/1,000(金融業の場合は33/1,000)
       

事業専従者控除・青色事業専従者給与

一定の要件のもと、生計を一にする親族に支払った給与に関しては次のような特例が認められている。
ただし、退職金は対象にならない

事業者が青色申告者の場合

青色申告者が、青色事業専従者に給与の支払いをした場合は、その親族に支払った青色事業専従者給与必要経費に算入できる。受け取った青色事業専従者は、給与収入として課税される。
青色事業専従者居住者と生計を一にする15歳以上の配偶者その他親族で、
もっぱら青色申告者の営む事業に従事する者
青色事業専従者給与青色事業専従者が労務に従事した期間、労務の性質等に照らし
労務の対価として相応しく、かつ、青色事業専従者給与に
関する届出書に記載した金額の範囲内である給与

事業者が白色申告者の場合

事業専従者控除は、事業主が白色申告者で、要件を満たした親族(事業専従者)がいる場合に認められる控除である。
控除額は、各事業専従者につき、次の金額のうちいずれか低い金額となる。
  • 年間86万円(その事業専従者が配偶者以外の場合は年間50万円)
  • その従事している事業に係る所得の金額(この規定の適用前)÷事業専従者の数+1
       

青色申告特別控除

青色申告者は、青色申告特別控除額を控除することができる。
控除額は、まず不動産所得の金額から控除し、
控除しきれない場合に事業所得、山林所得の順番で控除する。
控除額所得の種類その他の要件
原則10万円・不動産所得
・事業所得
・山林所得
問わない
特則55万円
(e-tax等は65万円)
・事業所得
・事業的規模の不動産所得
・確定申告書に所定の事項の記載をし、
提出期限までに提出していること
・正規の簿記の原則に従った帳簿書類に
基づいて作成された貸借対照表、
損益計算書、その他所得の金額の計算に
関する明細書の添付がある事

外部リンク:国税庁

       

それでは過去問を解いてみましょう。2020年1月試験 学科 問25

居住者に係る所得税の事業所得に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

  1. 個人事業主が、事業所得を生ずべき事業の遂行上、取引先に対して貸し付けた貸付金の利子は、事業所得の金額の計算上、総収入金額に算入する。
  2. 個人事業主が、事業所得を生ずべき事業の用に供している取得価額130万円の車両を売却した場合、事業所得の金額の計算上、当該車両の売却価額を総収入金額に算入し、当該車両の未償却残高を必要経費に算入することができる。
  3. 個人事業主が、生計を一にする親族が所有する土地を賃借して事業所得を生ずべき事業の用に供している場合、事業所得の金額の計算上、当該親族が納付した当該土地に係る固定資産税に相当する金額を必要経費に算入することができる。
  4. 個人事業主が、生計を一にする親族が発行済株式の全部を保有する会社が所有する建物を賃借して事業所得を生ずべき事業の用に供している場合において、当該会社に支払った賃借料は、事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することができる。

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解答

助手のウィキ子

個人事業主の車両売却は譲渡所得です。

タグ:不動産所得・事業所得