相続時精算課税制度|FP1級Wiki

とにかくFP試験によく出てきます。基礎編、応用編、実技、いかなる時も登場しますので深く理解しておく必要があります。

相続時精算課税制度は、 贈与を受ける際に特別控除をして据置き(控除を超えた分の贈与税は20%の税率で支払う)し、 その後の相続時に、選択後のすべての贈与財産と相続財産の合計価額から計算した相続税に対し、 先に支払った贈与税があればそれを控除することで相続時に一本化して納税する制度である。

つまり、控除額分は据え置いておき(逆に控除額を越えた分は仮の納税を済ませておいて)、相続時にすべて清算するといった感じです。
また、2024年1月以後は基礎控除の年110万と併用できるようになりました。

       

適用対象

原則、贈与した年の1月1日において、
60歳以上の父母または祖父母(特定贈与者という)から成人している推定相続人(代襲含む)の子か孫への贈与に限る。
養子縁組の場合は、養子縁組をした日以後の贈与が対象になる。
一度本制度を選択したものは養子縁組を解消しても引き続き本制度の適用を受ける。
適用財産、適用回数、ともに特に制限はない。

一度選択すると、その後の特定贈与者からの贈与で取得するすべての財産に本制度が適用され、
相続時まで取りやめることができない

適用手続

受贈者が贈与を受けた翌年の2月15日から3月15日までの間に所轄税務署長に対して届出書を贈与税の申告書に添付する。

       

贈与時の税額計算

本制度を選択した特定贈与者ごとに、贈与財産から特別控除2,500万円(開始後の累計)を控除し、控除後の金額に一律20%の税率を掛けて算出。
2024.1以後の贈与は基礎控除の年110万も使えます!!お得!!

相続税額の計算

特定贈与者の相続発生時に本制度の贈与分と相続財産を合計して計算した相続税額から、
すでに本制度で支払った分の贈与税があればそれを控除した税額を納付する。
もしも控除しきれない場合は、税額の還付を受けることができる。
加算する贈与財産の価額は贈与時の価額に固定される。
(※贈与財産が土地建物で2024.1以後に起きた災害で被害を受けた場合は再計算)

相続や遺贈時には財産を取得しなかった相続時精算課税適用者も、
本制度の適用を受けた贈与財産については特定納税義務者として相続税の課税対象となる。

また、加算後の相続税の課税価額が遺産に係る基礎控除額以下であれば相続税の申告は不要となります。
(ちなみに、他に生命保険の非課税枠の場合もゼロなら不要。配偶者の相続税控除とか小規模宅地の場合はゼロでも申告必要です)

       

納税義務の承継

特定贈与者より先に死亡してしまった場合には、受贈者の相続人が相続時精算課税制度の権利を承継する。
相続人が複数の場合は法定相続分で按分する。
また、相続人が特定贈与者である場合(逆転しちゃった場合)、相続時の清算は必要ない。

外部リンク:国税庁

       

それでは過去問を解いてみましょう。2020年9月試験 学科 問43(改定)

相続時精算課税制度に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、記載のない事項については考慮しないものとする。

  1. 養親から相続時精算課税を適用して贈与を受けた養子が、養子縁組の解消により、その特定贈与者の養子でなくなった場合、養子縁組解消後にその特定贈与者であった者からの贈与により取得した財産については、相続時精算課税は適用されない。
  2. 2022年中に2,000万円の贈与を受けて相続時精算課税の適用を受けた受贈者が、2023年中に同一の贈与者から100万円の贈与を受けた場合、受贈者は、2023年中に他の贈与を受けてなくても、2023年分の贈与税の申告書を提出しなければならないが、それが2024年1月以後の贈与ならば申告書の提出は不要となる。
  3. 相続時精算課税の特定贈与者が死亡した場合、相続時精算課税適用者は、相続時精算課税を適用して贈与を受けた財産を相続財産に加算した金額が遺産に係る基礎控除額以下であっても、相続税の申告書を提出しなければならない。
  4. 相続時精算課税の特定贈与者の死亡以前に相続時精算課税適用者が死亡し、特定贈与者がその相続時精算課税適用者の相続人である場合、相続時精算課税適用者が有していた相続時精算課税の適用を受けていたことに伴う納税に係る権利または義務は当該特定贈与者が承継する。

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解答

Wiki技能士

1は、相続人の範囲外になっても相続時精算課税制度は続きます(放棄とかも)。不適切。
3は、死亡した時点で基礎控除額以下であったなら申告書を提出する必要はありません。不適切。
4は、当テキストの記載の通りです。自分で自分の相続税清算するのはおかしな話ですからね。不適切。
2は、2023年中までの贈与にはたとえ少額贈与であっても相続時精算課税制度を利用している場合、申告は必須でした。しかし、2024年1月の贈与から基礎控除110万円が使用できるようになった関係で、贈与額が基礎控除以下であれば相続時精算課税制度の申告額に影響がないため申告書の提出が不要になったわけです。便利になりました。正解は2番です。