遺産分割|FP1級Wiki

遺産分割とは、一度相続人全員で受け取ることになる相続財産を各相続人に具体的に配分していくこと。FP試験では基礎編の後半に出題されることがあります。分け方にはいくつかの種類やルールがあります。

       

遺産分割の種類

FP1級ではここはさらりです。2級のおさらい程度で。相続人同士での話がまとまらない度合で、指定→協議→調停→審判と下がっていく感じですね。

指定分割 遺言の指定により分割する方法。
遺産の一部だけに行うことも可能
原則、協議分割、審判分割よりも優先される。
協議分割相続人全員で話し合い、全員の同意により分割する方法。
遺言で禁じられた場合を除き遺言に従わないこともできる。
調停分割協議分割で話がまとまらない場合、
家庭裁判所において調停委員に間に入ってもらい
解決を目指す手続です。第二段階的な。
審判分割調停分割でも話がまとまらない場合、審判分割に自動的に移行されます。
あらためて審判申し立てをする必要はない。第三段階的な。
ただ、必ずこの段階を踏む必要はないので、
いきなり審判分割を申し出ることもできる。

遺産分割の基準

現物分割遺産そのものを現物で分ける方法。
きっちり分けることは難しいので一部を
売却するなどしてその代金で調整したり、
自己資金で調整(代償分割)する必要もある。
換価分割相続財産の全部または一部を売却し、金銭に換えて分割する方法。
現物分割では難しい各相続人の法定相続分を、きっちり分割できる。
処分費用や譲渡取得税などを考慮する必要がある。
代償分割自分の相続分を越えて遺産を取得した者が、
その代償として自己の固有財産を他の相続人に支払う方法。
土地や会社など分割が難しい財産の時に有効な方法。
共有分割ひとつの遺産を相続人の間で各相続分で共有する方法。
相続では最終手段と言われていて、その後の財産の管理に支障が出ることが多い。
実際は問題を先送りにしているともいえるのであまりお勧めの方法ではない。
       

代償分割と税金

代償分割により取得した資産は相続税の対象となる。渡すものが現金ではなく土地や家屋のような譲渡所得の対象となる資産であるときには時価で譲渡したとして交付した者に譲渡所得税が課される。そのため実務では代償分割は金銭が多いようです。

遺産分割協議書

協議分割時に遺産分割協議書を作成する。特に形式はないが、相続人全員の署名捺印が必要である。
不動産の相続登記を行う場合は協議書に各相続人は実印を捺印して印鑑証明書を添付する必要がある。
協議書の内容は遺産全てに限らず、遺産の一部についてのみ作成することもできる。
協議書が完成すると、協議は完全に終了するため内容に不服があっても個人の意思のみでは覆すことはできない。
ただし、錯誤や強迫、詐欺などで合意してしまったような事情がある場合は協議を無効、取り消しすることができる。
また、相続人全員が合意により解除して改めて遺産分割協議を行うことはできる。

遺産分割前の預貯金の払い戻し制度(仮払い制度)

相続法改正で、葬儀代等の考慮のために遺産分割前に預貯金債券の一部を仮払いできるようになった。
相続人が金融機関から仮払いできる金額は、「各(預貯金残高×法定相続分×3分の1)ずつ」で、ひとつの金融機関から引き出せるのは150万円まで

外部リンク:国税庁

       

それでは過去問を解いてみましょう。2020年1月試験 学科 問44

代償分割に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

  1. 遺産分割にあたって、代償分割により代償財産を交付する場合、代償財産の支払期日や支払方法などを記載した遺産分割協議書を公正証書により作成しなければならない。
  2. 代償分割により交付した代償財産が相続開始前から所有していた不動産であった場合、代償債務を履行したときの時価で譲渡したものとして、当該不動産を交付した者の所得税の課税対象となる。
  3. 代償分割により取得した代償財産が不動産であった場合、当該不動産の所得税法上の取得費は、代償債務の履行として当該不動産を交付した者の取得費を引き継ぐことになる。
  4. 代償分割により取得した代償財産が不動産であった場合、当該不動産の所得税法上の取得時期は、代償債務の履行として当該不動産を交付した者の取得時期を引き継ぐことになる。

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解答

Wiki技能士

当テキストに記載の通りです。譲渡所得として代償債務で渡したのに所得税がかかります。2が適切。
1は、遺産分割協議書はそもそも公正証書にする必要はありません(してもいいけど)。そして代償分割だけ特別ってこともありません。
3は、相続で取得したわけじゃないんで取得費は引き継ぎません。
4は、上記と同じ理由で取得時期も引き継ぎません。